クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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交友関係

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 騎馬戦も終わり、午前の競技がすべて終了すると、体育祭の熱気が少し和らぎ、昼休憩が始まった。

 グラウンドのあちこちで生徒たちがレジャーシートを広げ、お弁当を囲んで談笑している。まるで遠足の昼食時間のような雰囲気だ。

 俺も、今朝佐々木さんからもらった弁当を持って、観客席の方で食べることにした。

 その時——。

「ゆ、裕貴先輩!」

 背後から、少し息を切らせた声が聞こえた。

 振り向くと、走ってきたのか頬を紅潮させている澤部さんが立っていた。

「澤部さん?」

「あ、あの、今日はありがとうございました! おかげで私、これからも前を向いて学校生活を送れそうです!」

 彼女は息を整えながら、けれどまっすぐな瞳で俺を見つめる。その表情には、午前中の騎馬戦で得た自信が色濃く滲んでいた。

「澤部さん……それは俺のおかげじゃないよ。これは澤部さん自身が成し遂げたすごいことだ。だから、もっと自分に自信を持っていいよ!」

「裕貴先輩……はい! ありがとうございます!」

 その瞬間、彼女の表情がぱっと花開いたように明るくなる。俺も、そんな彼女の笑顔を見て、どこかほっとした気持ちになった。



 澤部さんとの会話を終え、俺は観客席へ向かう。そろそろ昼飯にしよう。

 しかし、ベンチに腰を下ろし、お弁当を開けようとしたその時——。

「お、美味そうじゃん!」

 不意に、俺の隣に座る影。

 顔を上げると、神木さんが俺の肩に手を回し、妙に距離を詰めてくる。

「私のもやるから、一緒に食べない?」

「ちょ、ちょっと!? 神木さん!?」

「いいじゃん、いいじゃん! 私たちの仲だろ?」

 彼女の汗で湿った肌がすぐ隣にあるせいか、なんだか妙にムワッとした熱気が漂う。

「わ、分かりましたから! ちょっと離れてもらっていいですか!?」

 俺は慌てて神木さんの肩を押し、何とか距離を確保する。

「そうだ、裕貴、私の唐揚げ食べてよ。めちゃくちゃ美味しいから」

 神木さんは弁当箱のフタを開けると、箸で唐揚げをつまみ、俺の口元へと差し出してきた。

「はい、美味しいからさ!」

 俺が唐揚げに口を開こうとした、その時——。

「あむ!」

 突如、俺と神木さんの間に割り込む影。そして、唐揚げがあっという間に消えた。

「うーん! 美味しい! 神木ちゃんの唐揚げ、美味しいね!」

 ——佐々木さん。

 彼女は頬を膨らませながら、幸せそうに唐揚げを味わっている。

「でしょ? 私のとっておきなんだよ」

「じゃあじゃあ、私が作った卵焼き食べて!」

 佐々木さんはすかさず、自分の弁当から卵焼きをつまみ、今度は神木さんに差し出す。

 そして、神木さんもそれを受け取り、口に運ぶ。

 その後も、「じゃあこのおかずは!」「そっちのも食べてみたい!」と、二人は楽しげに俺の弁当を食べ進め——。

 結果、俺の弁当には梅干しだけが残った。

 俺の弁当……だったのに……。



 休憩が終わり、午後の部が始まる。

 結局、何も食えなかった……。佐々木さんの弁当を食べられるはずだったのに……。

「よ! 昼飯は食べれたか?」

 突然、背中をポンッと叩かれる。振り向くと、そこには担任の沢田先生。

「いや、あの、ちょっと色々あって食べられてないです」

 俺のゾンビのような顔を見た先生は、苦笑しながら俺の背中をもう一度叩く。

「裕貴、私の奢りで飯を食べさせてやるから、少し雑務を手伝え!」

「わ、分かりました……」

 その後、先生に連れられ、売店で焼きそばパンを奢ってもらい、体育倉庫で体育祭の用具の整理を手伝うことに。



「なぁ裕貴、お前の最近の人間関係はどうだ? ちゃんと友達増えたか?」

「あぁ、まぁ……2、3人くらいは……?」

「2、3人も増えたのか!? いやー! 先生からすればそれは良い事だ! それで誰だ!? 男か!? 女か!?」

 ……なんでこの人、そんなにテンション高いんだ? しかも目が怖い。

「そ、それより、なんで先生は俺をこの用具入れの手伝いに?」

 俺は先生の圧から逃げるように話題を変える。

 すると、先生は少し考えるように腕を組み、静かに言った。

「少し、お前の人間関係が気になったからだ」

「え?」

「私はお前の先生だ。お前を見る責任があると思ってる。それにだ、私からしてみれば、まだ君たち学生は子供。そんな君たちが社会に出る前に、人間関係に挫折したらいけないだろ? だから『経過観察』という名目でここに呼んだのさ」

 ……呼んだ、というより、ほぼ強引に連れてこられた気がするんだけど。

「なぁ裕貴、私はお前が卒業する頃、どんな人間になっているのか気になっていてね。1年間まともに交友関係が作れなかった人間が、これから先どう変わるか——私に、魅せてくれよ」

 先生の言葉が、不思議と心に響いた。

 体育倉庫の静けさの中、その言葉だけが鮮明に残る。

 ——俺は、この1年で、どんな風に変わるのだろうか?

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