クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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メイドとしての復帰

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 前期期末テストも無事に終わり、テストから数日後。

「お坊っちゃん、お坊っちゃん、朝ですよ」

 耳元に響く、柔らかく透き通った声。その声に反射的に目を見開いた俺は、ベッドから勢いよく起き上がった。

「佐々木さん……!」

 思わず呟いた俺の視線の先に立っていたのは、見慣れた姿――いや、待ち望んでいた存在だった。

 佐々木さんは、いつもの優しい微笑みを浮かべ、俺をまっすぐ見つめていた。

「今日から復帰します、佐々木悠里です」

 その言葉に、心の奥底に溜まっていた不安や焦燥が一気に溶けていくのを感じた。

「おかえり! 佐々木さん!」

 気づけば、俺は潤んだ目をこすりながら、彼女の手をぎゅっと握りしめていた。

「ただいま、裕貴くん」

 柔らかな返事に、胸がじんわりと温かくなる。

「朝食の支度ができてますよ、お坊っちゃん」

「うん、行こう!」

 心が浮き立つような気持ちで、俺は佐々木さんの後に続いた。



 朝の光が差し込むダイニングの扉を開けた瞬間、ふわりと漂う温かく香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

 食卓には焼きたてのトーストがこんがりと並び、ベーコンエッグの黄身がとろりと溶け出している。湯気の立つスープに、新鮮なサラダ。見るだけで心が満たされる光景だった。

「うわ……なんか、久しぶりに“ちゃんとした朝飯”な気がする」

 思わず漏れた言葉に、佐々木さんがふふっと小さく笑った。

「えへへ、張り切っちゃった」

 彼女は少し照れくさそうに頬を赤らめつつ、俺の隣にコーヒーカップをそっと置いた。

「めちゃくちゃうまそう……!」

「うん! 頑張ったから、いっぱい食べてね」

 その声に背中を押されるように、俺はフォークを手に取り、ベーコンエッグにナイフを入れる。半熟の黄身がとろりと溶け、白身とベーコンに絡む様子に食欲が刺激された。

「……うまっ!」

 口に入れた瞬間、ジュワッと広がるベーコンの旨味と黄身の濃厚さに思わず声が漏れる。

「ふふ、良かった」

 佐々木さんは目を細めて、まるで家族のような優しい表情を浮かべた。

「食べながらでいいから、今日の予定とか教えてくれない?」

「うん……今日は午前は普通に授業。でも午後は生徒会から依頼されて、イベントの準備手伝う予定なんだ」

「イベント準備? 何か楽しそう!」

「まあ、文化祭の準備だよ。でも、俺たちのクラスはまだ何やるか決まってないけど」

「ふふ、文化祭か~……そういうのって、ちょっとワクワクするよね」

「佐々木さんは無理してない? まだ完璧に元気ってわけじゃ……」

「大丈夫! 今日は元気いっぱいだよ!」

 彼女は力強く頷き、その目に迷いはなかった。

「じゃあ今日もよろしく、裕貴くん!」

「ああ、こちらこそ!」



 制服に着替え、靴を履こうと玄関に向かうと、佐々木さんがまた俺に声をかけた。

「はい、今日のお弁当!」

「いつもありがとう、佐々木さん」

「私がいない間、結構偏ったもの食べてたらしいからさ」

 その言葉に、俺の頭に青原先輩との“あのデリバリー事件”がフラッシュバックする。あれは確かに……偏りまくってたな。

「それと……私がいない間のこと、あとで教えてね?」

「うん、もちろん」



 校門の前には、見慣れた後ろ姿――沢田先生だ。

「お、佐々木に裕貴じゃないか」

 先生は手を振りながら、俺たちに歩み寄ってくる。

「おはようございます!」

「朝から元気だな。……佐々木、体調はもう大丈夫か?」

「はい! バッチリです!」

「そうか、ならいい。……裕貴、佐々木をしっかり見ておけよ? お前ならできるだろ」

 沢田先生は俺の肩をガシッと掴み、茶化すように笑った。

「はい、任せてください」

「おう、期待してるぞ」

 先生は俺の胸元を軽く拳で叩き、行ってこいと言わんばかりに背中を押してくれた。
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