クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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好きな人と同士の覚悟

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 星空を見終えた俺たちは、合宿場のロビーに集まり、沢田先生から部屋割りを告げられていた。

「男子と女子で分かれる感じでいいな。誰か文句あるやついるか?」

 満面の笑みでそう言い放つ沢田先生。……いや、あの笑顔、完全に圧力をかけてるじゃないか。誰があれに逆らえるんだよ。

「よし、じゃあ今日も遅いし、明日は合宿最終日だからな。しっかり英気を養えよー!」

 その号令と共に、俺たちはそれぞれの部屋へと向かった。



 男部屋に入った瞬間、春樹がベッドへダイブして「ふっかふかだぁ~!」と大声で叫ぶ。その様子はまるで子犬みたいで、思わず笑ってしまう。

「は~、釣りで肩こき使われたせいで、もうボロボロだよ」

 鈴木先輩は椅子にどっかりと座り、肩を回しながら呻いていた。

 そんな他愛のない空気の中、不意に春樹が声を落とす。

「……なあ、裕貴。お前、本気なのか? 佐々木さんのこと」

 その言葉が、部屋の空気を一気に変えた。

 静まり返る室内。春樹も鈴木先輩も、真剣な眼差しで俺を見ている。

「……うん。本気だ。これは冗談でも気まぐれでもない。俺は――佐々木さんが好きなんだ」

 言葉にして初めて、胸の奥からじわっと熱いものがこみ上げてきた。

 すると春樹は、静かに息を吐き、ゆっくりと笑みを浮かべた。

「……そうか。じゃあ、今日から俺たちはライバルだな」

「――っ!」

「ぶはっ!? 春樹、まさかお前も!?」

 驚きで目を剥く鈴木先輩に、春樹はにやりと笑って見せた。

「なぁ、裕貴。俺、負けねぇから」

 そう言って、軽く俺の胸を拳で叩く。俺も同じ力加減で返した。

「ああ、俺も」

 不思議と、そこに不快感はなかった。ただ、まっすぐな春樹の気持ちに、真正面から応えたくなった。



 風呂上がり、俺は合宿場のロビーにあるマッサージチェアに沈み込んでいた。肩も背中もガチガチで、椅子の振動が身体に心地いい。

 その時――

「あ、裕貴」

 聞き慣れた声に顔を上げると、そこにはタオルを肩に掛けた湯上がりの神木さんがいた。濡れた髪が光に反射していて、妙にドキリとする。

「か、神木さん!?」

「隣、座ってもいい?」

「あ、うん、どうぞ」

 神木さんは隣のチェアに腰を下ろし、スイッチを入れる。静かなモーター音が2人の間に流れた。

「……これ、めっちゃ気持ちいいね」

「うん。……ほんと、最高」

 ふと、神木さんが俺の方をちらりと見て言う。

「ねぇ、裕貴。明日、何して遊ぶ?」

 その笑顔が、ちょっとだけ照れたような、それでいて自信ありげな、絶妙なバランスで――俺は思わず口を滑らせてしまった。

「……カッコイイ」

「なっ……ば、バカ! 今そんなこと聞いてないでしょ!」

 真っ赤になってそっぽを向く彼女に、俺も慌てて手を振る。

「ご、ごめん! つい本音が!」

「まったく……裕貴といると、いろんな意味で疲れる」

「……なんか、ごめん」

「謝んなってば。別に嫌ってわけじゃないし……あ、そうだ。牛乳飲まない?」

 神木さんが指差した先には、風呂上がりの定番・牛乳の自販機。

 俺はコーヒー牛乳、神木さんは普通の瓶牛乳を選んだ。

 そして。

「「プハァ!!」」

 まったく同じタイミング、同じリアクション。

「ぷっ……!」

 お互いの顔を見て、吹き出してしまった。

「アハハ……やっぱり楽しいな、裕貴といると」

「俺も、神木さんと一緒にいるの、楽しいよ」

「……そ、そう……」

 彼女が照れたように目をそらしたとき、後ろから聞き慣れた声が響いた。

「あー! ずるいですー! 2人とも美味しそうなもの飲んでるなんて!」

 澤部さんがぷくっと頬を膨らませてこっちへ駆け寄ってくる。

「ほほう~? これはもしや、恋人たちの密会ですかな~?」

「「えっ?!」」

 茶化す青原先輩の言葉に、神木さんと俺はハモるように声を上げる。

「ちょ、青原先輩~!」

 神木さんが真っ赤な顔で先輩の肩を揺さぶる。その様子に俺はまた、笑みがこぼれた。

 ふと、隣に立つ澤部さんが俺の腕をそっと掴む。

「先輩……私、裕貴先輩が先輩で良かったって、心から思ってます」

「えっ……あ、ありがとう」

「明日も、たくさん遊びましょうね!」

「うん、そうだね」

 そう言って、夜空を見上げる。

 そこには、昨日と同じ星空――でも、少しだけ輝きが増したような気がした。
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