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最後の夏の思い出
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朝、スマホにセットしておいたアラームが軽やかに鳴り響く。
「……もう朝か」
まぶたを擦りながら上体を起こすと、合宿特有の固めの布団が背中に心地よく残っていた。
隣を見れば、春樹と鈴木先輩はまだ夢の中。静かな寝息が部屋に漂っている。
俺はそっと布団から抜け出し、静かに扉を開けて部屋を出た。目指すは洗面所――少し寝ぼけた頭を冷やすには、まず顔を洗いたかった。
だが、そこで出くわしたのは――
「お、裕貴じゃないか」
洗面台の前にいたのは沢田先生……しかも、思いっきりラフな部屋着姿。胸元がゆるく開いたシャツから、色々と見えてしまっている。
「せ、先生!? その格好……!」
反射的に視線を逸らし、思わず数歩後ずさる。
その様子を見た先生は、口元をにやりと歪め、ズイッと俺に肩を寄せてくる。
「なぁんだ? 先生のパーフェクトボディに見惚れちゃったのか~? 照れるな~、裕貴ぃ~」
「いやいやいや! だから離してくださいってば!!」
逃げ場のない狭い洗面所で繰り広げられる地獄の朝の儀式。ようやく先生の魔の手から逃れ、歯磨きを済ませた俺は、そそくさと洗面所から出ようとする。
「なぁ、裕貴。今日は何するんだ?」
不意に先生が問いかけてきた。
「え? いや、特に決めてないですけど……」
「じゃあ、私の釣り――」
「それは遠慮しておきます!」
俺の即答に、先生はガックリと肩を落とす。
そんなやり取りの最中、洗面所の扉が開き、見慣れた顔ぶれが現れる。
「おー、おはよう~裕貴くーん」
「おはようございます、裕貴先輩」
青原先輩と澤部さん。ふたりともまだ寝起きの顔だが、どこか夏の朝らしい軽やかさがある。
「おはよう、ふたりとも」
軽く挨拶を交わすと、俺は先生の追撃をかわすようにその場を後にした。
※
外に出ると、ひんやりとした朝の風が肌を撫でた。森と海に囲まれた合宿場の裏手、木陰のベンチへと足を運ぶ。
まだ誰もいない浜辺には、朝陽が淡く差し込み、波打ち際が金色に揺れていた。
「……今日で、最終日か」
昨日の夜の出来事が思い出される。星空の下で笑い合ったこと、神木さんの横顔、澤部さんのまっすぐな言葉。
どれも温かく、そして――少し切ない。
そのとき、背後から足音が近づいた。
「……おはよう、裕貴」
振り向くと、そこには神木さんがいた。朝の光をまとったその姿は、いつもより少しだけ儚げで、でもとても綺麗だった。
「おはよう。もう準備できたの?」
「うん、ちょっと早く目が覚めちゃって。……隣、座ってもいい?」
「もちろん」
俺がベンチの端にずれると、彼女は静かに腰を下ろし、波の音に耳を傾けながら言った。
「……もう今日で終わりなんだね、合宿」
「ああ。ほんと、あっという間だった」
「ねぇ、裕貴。最後の朝に、少しだけ散歩しない?」
その瞳には、どこか決意のようなものが宿っていた。
俺は一瞬迷ってから、静かに頷いた。
「うん。行こうか」
ふたりで立ち上がり、波打ち際を歩き出す。白い砂浜に、俺たちの影が並んで落ちていく。
潮の香りと、朝の風。ほんの少し肌寒いその感触が、なぜか心地よかった。
でも――
(やっぱり、佐々木さんのことが……)
今ごろ、彼女はどうしているのだろう。
この穏やかな時間の中にいないことが、胸にぽっかりと空洞を作る。
俺は静かに決意した。
(このままじゃ終われない。夏が終わる前に……俺の気持ち、ちゃんと伝えよう)
――それぞれの想いが交差し始めた夏の合宿の終わり。物語は、次のページへと進んでいく。
「……もう朝か」
まぶたを擦りながら上体を起こすと、合宿特有の固めの布団が背中に心地よく残っていた。
隣を見れば、春樹と鈴木先輩はまだ夢の中。静かな寝息が部屋に漂っている。
俺はそっと布団から抜け出し、静かに扉を開けて部屋を出た。目指すは洗面所――少し寝ぼけた頭を冷やすには、まず顔を洗いたかった。
だが、そこで出くわしたのは――
「お、裕貴じゃないか」
洗面台の前にいたのは沢田先生……しかも、思いっきりラフな部屋着姿。胸元がゆるく開いたシャツから、色々と見えてしまっている。
「せ、先生!? その格好……!」
反射的に視線を逸らし、思わず数歩後ずさる。
その様子を見た先生は、口元をにやりと歪め、ズイッと俺に肩を寄せてくる。
「なぁんだ? 先生のパーフェクトボディに見惚れちゃったのか~? 照れるな~、裕貴ぃ~」
「いやいやいや! だから離してくださいってば!!」
逃げ場のない狭い洗面所で繰り広げられる地獄の朝の儀式。ようやく先生の魔の手から逃れ、歯磨きを済ませた俺は、そそくさと洗面所から出ようとする。
「なぁ、裕貴。今日は何するんだ?」
不意に先生が問いかけてきた。
「え? いや、特に決めてないですけど……」
「じゃあ、私の釣り――」
「それは遠慮しておきます!」
俺の即答に、先生はガックリと肩を落とす。
そんなやり取りの最中、洗面所の扉が開き、見慣れた顔ぶれが現れる。
「おー、おはよう~裕貴くーん」
「おはようございます、裕貴先輩」
青原先輩と澤部さん。ふたりともまだ寝起きの顔だが、どこか夏の朝らしい軽やかさがある。
「おはよう、ふたりとも」
軽く挨拶を交わすと、俺は先生の追撃をかわすようにその場を後にした。
※
外に出ると、ひんやりとした朝の風が肌を撫でた。森と海に囲まれた合宿場の裏手、木陰のベンチへと足を運ぶ。
まだ誰もいない浜辺には、朝陽が淡く差し込み、波打ち際が金色に揺れていた。
「……今日で、最終日か」
昨日の夜の出来事が思い出される。星空の下で笑い合ったこと、神木さんの横顔、澤部さんのまっすぐな言葉。
どれも温かく、そして――少し切ない。
そのとき、背後から足音が近づいた。
「……おはよう、裕貴」
振り向くと、そこには神木さんがいた。朝の光をまとったその姿は、いつもより少しだけ儚げで、でもとても綺麗だった。
「おはよう。もう準備できたの?」
「うん、ちょっと早く目が覚めちゃって。……隣、座ってもいい?」
「もちろん」
俺がベンチの端にずれると、彼女は静かに腰を下ろし、波の音に耳を傾けながら言った。
「……もう今日で終わりなんだね、合宿」
「ああ。ほんと、あっという間だった」
「ねぇ、裕貴。最後の朝に、少しだけ散歩しない?」
その瞳には、どこか決意のようなものが宿っていた。
俺は一瞬迷ってから、静かに頷いた。
「うん。行こうか」
ふたりで立ち上がり、波打ち際を歩き出す。白い砂浜に、俺たちの影が並んで落ちていく。
潮の香りと、朝の風。ほんの少し肌寒いその感触が、なぜか心地よかった。
でも――
(やっぱり、佐々木さんのことが……)
今ごろ、彼女はどうしているのだろう。
この穏やかな時間の中にいないことが、胸にぽっかりと空洞を作る。
俺は静かに決意した。
(このままじゃ終われない。夏が終わる前に……俺の気持ち、ちゃんと伝えよう)
――それぞれの想いが交差し始めた夏の合宿の終わり。物語は、次のページへと進んでいく。
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