クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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合宿最終日

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 夏の朝の陽が高くなり始めた頃、合宿場の前には、いつもより少し浮かれた空気が漂っていた。

「おいおい、早く支度しろって! 今日はもう最終日なんだぞ!」

 春樹がテンション高く走り回り、皆をせかしている。まるで修学旅行の最終日を惜しむ小学生のような騒がしさだった。

「ねえ、先に海いっちゃうよ~!」

 青原先輩が浮き輪を肩に引っかけながら、子どものような笑顔で浜辺へ駆け出す。
 その後ろを追うように、澤部さんと神木さんもそれぞれ準備を整えてついていく。

「俺も少し張り切るか!」

 俺も準備を終え、浜辺へ向かった。



 空は一面の青。雲はまるでわたあめみたいに柔らかく、潮風が心地よく吹いていた。

 俺たちはビーチバレーをしたり、スイカ割りをしたり、水鉄砲でのバトルロイヤルまで展開された。
 途中、鈴木先輩が全力でスイカを割ろうとして空振りし、転倒した瞬間は全員が腹を抱えて笑った。

「うっ……ちょっと鼻に水入った……!」

 澤部さんが鼻を押さえながら笑う姿に、みんなが「だいじょうぶ!?」と笑いながら駆け寄る。
 青原先輩はいつの間にか砂の城を築いていて、芸術的な完成度に先生すら感心していた。

「なぁ、裕貴」

 水鉄砲を持った春樹が、ニヤリと笑いながら近づいてくる。

「ここまで遊び尽くすのも、なんか久しぶりだな」

「……だな。たぶん、この夏一番楽しいかもしれない」

「……でも、ここで終わらせるなよ?」

「……ああ、分かってる」

 春樹と俺は拳を軽く合わせる。それはまるで、まだ続く夏への誓いのようだった。



 午後になり、全員で浜辺に敷いたレジャーシートの上に寝転ぶ。
 海風が心地よく、どこか夢の中のようなひとときだった。

「ねぇ、裕貴」

 隣で寝転んでいた神木さんが、そっと話しかけてくる。

「今日、ありがとう。たくさん笑って、たくさん遊んで……すごく楽しかった」

「こっちこそ、ありがとう」

「また……来年も来たいね」

「うん、来よう。来年も、再来年も――」

 俺の言葉に、神木さんは少し顔を赤らめ、そっと目を伏せた。



 そうして日が傾き始めたころ、俺たちは合宿場へと戻る。

 夕焼けが空を朱く染めるその景色を見ながら、心のどこかで、もう一人――まだ来ていない誰かのことを、俺は強く思い出していた。

(……佐々木さん。やっぱり俺、君に会いたい)

 胸の奥で、再び灯った小さな決意。その炎は、夏の合宿の終わりと共に、さらに強くなっていく気がした。

 ――そして次の朝、佐々木さんから届いた一通のメッセージが、俺の夏を大きく変えていくことになる――。

『来週、花火大会に行かない?』
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