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その告白は無惨に散るだけだった
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ダンスが終わった瞬間、教室中に拍手が湧き上がった。
まるで舞台の主役になったような錯覚に陥るほど、クラス中の視線が俺たちに注がれていた。
けれど、その熱気とは裏腹に、神木さんと俺はまだ手を繋いだまま、静かに見つめ合っていた。
「……楽しかった」
ぽつりとこぼれた神木さんの一言が、拍手の音よりも、音楽よりも、ずっと深く心に響いた。
「俺も。ありがとう、神木さん」
「ねぇ、裕貴。私ね、今、すっごく幸せなんだ」
神木さんが小さく笑う。その笑顔は、いつもの勝ち気な彼女とは違う、年相応の“女の子”そのものだった。
「ねぇ裕貴、このあと……屋上に来てくれる?」
ふいに表情が変わる。何かを決意したような、覚悟を持った顔。
その目を見た瞬間、俺は察していた。
彼女が何を伝えようとしているのか。屋上で何を言おうとしているのか。
だから俺も、すでに答える言葉を決めていた。
※
透き通るような蒼い空。
文化祭の喧騒が嘘のように、屋上には静かな時間が流れていた。
潮風が吹き抜ける中、神木さんが一人、フェンス越しに海を見つめていた。
髪が風に揺れ、夕焼けがその輪郭をやさしく染め上げている。
「……ごめんね、呼び出しちゃって」
そう言った彼女の横顔は、どこか寂しげだった。
「ねぇ裕貴、私さ……初めてなんだよ。ここまで一人の男の子に依存して、好きでいられるなんて。全部、裕貴のせいだよ」
「うん」
俺はうなずきながら、動揺せずに彼女の言葉を聞いていた。
「だから……裕貴。私、ずっと、ずっと前から裕貴のことが好き」
その言葉に驚きはなかった。
彼女の想いも、その想いからくる行動も、これまでずっと見てきたから。
神木さんの目はまっすぐだった。
揺るぎのない真剣な眼差しの奥に、でもほんの少し、不安が宿っていた。
沈黙が落ちたあと――俺は口を開いた。
「……ごめん。俺は、神木さんの気持ちに応えられない」
その言葉は、自分でも驚くほど、はっきりとしていた。
「っ……そっか。やっぱり……」
神木さんの表情が、ぐっと歪んだ。
「……やっぱり、悠里なんでしょ?」
その声には、かすかな怒りが混じっていた。
「全部、見てたよ。いつだって悠里ばっかり見てるよね。私がどれだけそばにいても、気づいてくれなかった」
「神木さん……」
「私だって……ずっと裕貴のそばにいたのに。泣いてるときも、悩んでるときも、笑ってるときも。私はずっと、見てたのに……」
感情が堰を切ったように溢れ出す。
その声は震え、胸の奥から絞り出すようだった。
「でも……でも、あの人には敵わないんだよね。優しくて、綺麗で、いつも一歩引いて見守ってくれる、完璧な“ヒロイン”にはさ」
涙はこぼさなかった。けれど、その目は、誰よりも泣いていた。
俺は……何も言えなかった。
ただ神木さんの痛みが、鋭く、胸の奥に突き刺さっていた。
それでも、言わなければならない。
たとえ、彼女の心をこれ以上傷つけるとしても――伝えなきゃいけない。
「神木さんには、すごく助けられた。体育祭の日も、合宿の日も、俺がフラれた日も……出会い方は複雑だったけど、俺が見てきた神木さんは、誰よりも真っ直ぐで、カッコよくて、素敵だった。だから――」
言葉を続けようとした瞬間、神木さんが俺の胸に飛び込んできた。
「……分かってる。分かってるから……それ以上、私を苦しめないで……」
その声は震えていて、必死に涙を堪えているように聞こえた。
「私、知ってるから……裕貴が悠里のことを好きなの、ちゃんと知ってるから……だから……お願い、しばらくこうさせて」
神木さんのその言葉に、俺はそっと腕を緩めて、彼女を包むように受け止めた。
彼女の震えが止まるまで。
その悲しみが、少しでも静まるまで――
俺は、ただ黙ってそこにいた。
まるで舞台の主役になったような錯覚に陥るほど、クラス中の視線が俺たちに注がれていた。
けれど、その熱気とは裏腹に、神木さんと俺はまだ手を繋いだまま、静かに見つめ合っていた。
「……楽しかった」
ぽつりとこぼれた神木さんの一言が、拍手の音よりも、音楽よりも、ずっと深く心に響いた。
「俺も。ありがとう、神木さん」
「ねぇ、裕貴。私ね、今、すっごく幸せなんだ」
神木さんが小さく笑う。その笑顔は、いつもの勝ち気な彼女とは違う、年相応の“女の子”そのものだった。
「ねぇ裕貴、このあと……屋上に来てくれる?」
ふいに表情が変わる。何かを決意したような、覚悟を持った顔。
その目を見た瞬間、俺は察していた。
彼女が何を伝えようとしているのか。屋上で何を言おうとしているのか。
だから俺も、すでに答える言葉を決めていた。
※
透き通るような蒼い空。
文化祭の喧騒が嘘のように、屋上には静かな時間が流れていた。
潮風が吹き抜ける中、神木さんが一人、フェンス越しに海を見つめていた。
髪が風に揺れ、夕焼けがその輪郭をやさしく染め上げている。
「……ごめんね、呼び出しちゃって」
そう言った彼女の横顔は、どこか寂しげだった。
「ねぇ裕貴、私さ……初めてなんだよ。ここまで一人の男の子に依存して、好きでいられるなんて。全部、裕貴のせいだよ」
「うん」
俺はうなずきながら、動揺せずに彼女の言葉を聞いていた。
「だから……裕貴。私、ずっと、ずっと前から裕貴のことが好き」
その言葉に驚きはなかった。
彼女の想いも、その想いからくる行動も、これまでずっと見てきたから。
神木さんの目はまっすぐだった。
揺るぎのない真剣な眼差しの奥に、でもほんの少し、不安が宿っていた。
沈黙が落ちたあと――俺は口を開いた。
「……ごめん。俺は、神木さんの気持ちに応えられない」
その言葉は、自分でも驚くほど、はっきりとしていた。
「っ……そっか。やっぱり……」
神木さんの表情が、ぐっと歪んだ。
「……やっぱり、悠里なんでしょ?」
その声には、かすかな怒りが混じっていた。
「全部、見てたよ。いつだって悠里ばっかり見てるよね。私がどれだけそばにいても、気づいてくれなかった」
「神木さん……」
「私だって……ずっと裕貴のそばにいたのに。泣いてるときも、悩んでるときも、笑ってるときも。私はずっと、見てたのに……」
感情が堰を切ったように溢れ出す。
その声は震え、胸の奥から絞り出すようだった。
「でも……でも、あの人には敵わないんだよね。優しくて、綺麗で、いつも一歩引いて見守ってくれる、完璧な“ヒロイン”にはさ」
涙はこぼさなかった。けれど、その目は、誰よりも泣いていた。
俺は……何も言えなかった。
ただ神木さんの痛みが、鋭く、胸の奥に突き刺さっていた。
それでも、言わなければならない。
たとえ、彼女の心をこれ以上傷つけるとしても――伝えなきゃいけない。
「神木さんには、すごく助けられた。体育祭の日も、合宿の日も、俺がフラれた日も……出会い方は複雑だったけど、俺が見てきた神木さんは、誰よりも真っ直ぐで、カッコよくて、素敵だった。だから――」
言葉を続けようとした瞬間、神木さんが俺の胸に飛び込んできた。
「……分かってる。分かってるから……それ以上、私を苦しめないで……」
その声は震えていて、必死に涙を堪えているように聞こえた。
「私、知ってるから……裕貴が悠里のことを好きなの、ちゃんと知ってるから……だから……お願い、しばらくこうさせて」
神木さんのその言葉に、俺はそっと腕を緩めて、彼女を包むように受け止めた。
彼女の震えが止まるまで。
その悲しみが、少しでも静まるまで――
俺は、ただ黙ってそこにいた。
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