クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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その告白がどれだけ虚しくても

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 修学旅行・最終日――夕方

 観光もすべて終わり、バスはもうすぐ宿へと戻ろうとしていた。

 窓の外には、沈みかけた夕日が街を淡く染め上げていて、空には少しずつ星の気配がにじみ始めていた。

 そんな景色を見ながら、春樹は一人、深く呼吸を繰り返していた。

 その様子を見ていた俺は、隣の席で小さく声をかける。

「……本気、なんだな」

「……ああ。今日、言わなきゃ後悔するって思ってた」

 春樹の顔には、いつもの明るい笑顔はなかった。けれど、その代わりに真っすぐな意志が宿っていた。



 宿に戻り、解散前の自由時間。みんながそれぞれお土産を買ったり、荷物をまとめたりしている中――

 春樹は、佐々木さんを呼び出した。

「佐々木さん、少しだけ、時間くれる?」

「うん……なにかあったの?」

 静かな中庭の、紅葉が舞い落ちるベンチの前。

 春樹はゆっくりと、彼女の方を向く。

「修学旅行、すごく楽しかったよな。みんなで騒いだり、風景見たり、飯食ったり……全部、思い出に残ってる」

「うん、私も。すごく、楽しかった」

 そこまで言って、春樹は一歩だけ、彼女の方へ近づいた。

「……でも、たぶん、俺がこの旅で一番大きな思い出にしたいのは――この瞬間だ」

「え……?」

 佐々木さんの目が、驚きに揺れる。

 春樹は拳をぎゅっと握りしめながら、言葉を吐き出すように続けた。

「俺、佐々木のことが好きだ。……ずっと、ずっと前から、気づいたときには目で追ってた。話すたびにドキドキして、笑顔を見るたびに嬉しくなって……」

 言葉が震える。

 けれど、彼は止まらなかった。

「最初は、裕貴のことが好きなんだろうって、思ってた。だから、諦めようとも思った。だけど……一緒に過ごして、話して、近づいて……本気で、佐々木が好きだって思ったんだ」

 佐々木さんは、何も言わず、ただじっと春樹を見つめていた。

「俺じゃダメかもしれない。……それでもいい。断られたって構わない。ただ……俺のこの気持ちだけは、ちゃんと伝えておきたかったんだ」

 春樹の声が静かに途切れた。

 沈黙が二人の間に流れる。

 けれどそれは、決して重たいものではなかった。

 佐々木さんはそっと口を開いた。

「……春樹くん。ありがとう。ちゃんと、伝わったよ」

 彼女は優しく微笑んでいた。

「その気持ち、とても嬉しい。でも……ごめんなさい。私には、今……他に気持ちを向けている人がいます」

 春樹は、苦笑した。

「だよな。なんとなく、分かってたよ」

 その表情には、寂しさと同時に、どこかスッキリとした清々しさもあった。

「でも、言えてよかった。これで……胸張って、友達としてまた笑える」

「うん。春樹くんは、私の大切な友達だから」

 二人の間に、ほんの少し風が吹いた。

 秋の終わりの空気が、紅葉を一枚、ふわりと舞い上がらせる。

 春樹はそれを目で追いながら、最後にもう一度だけ、佐々木さんの方へ向き直った。

「ありがとう、佐々木。……好きになって、よかった」

 そう言って春樹は背を向け、ゆっくりと歩き出した。

 その背中を、佐々木さんはしばらく見つめ続けていた。

――そして、修学旅行は静かに幕を下ろす。

その想いをそれぞれに抱えながら、俺たちはまた、日常へと帰っていくのだった。
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