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北海道旅行開始!?
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「……裕貴く――じゃなくて、真一郎。もう、私……我慢できない」
その一言で、俺の理性は、半分くらいどこかへ旅立った。
――俺の名前は、裕貴真一郎。
今の状況をざっくり説明すると、クラスのマドンナにして俺の彼女――佐々木悠里と、北海道の温泉宿に来ています。しかも、浴衣姿。しかも、二人きり。しかも……彼女は布団の上に正座して、まっすぐ俺のこと見つめている。
結論から言おう。
誰か、助けてくれ。マジで。
※
数日前。
いつものように起きて、ぼんやりした頭のままダイニングへ行くと――珍しく両親が揃って朝食を囲んでいた。
「おはよう、父さん、母さん。……二人が並んでると、天変地異でも起きそうだな」
軽口を叩いたつもりだったが、空気は思った以上に重たかった。
「そうね。どんな風の吹き回しかしら」
母さんが、刺すような視線で父さんに言う。
一方の父さんは、ナイフとフォークを静かに置いて、目を閉じたまま低い声を発した。
「……ただ、お前たちの“これから”について話しに来ただけだ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸に嫌な予感が広がる。父と母――二人の間には、長年積もった何かがある。俺は、それを知っている。
思い出すのは幼い頃の記憶だ。あの頃の父さんと母さんは、手を繋いで笑っていた。テレビドラマの夫婦みたいに、やたら仲が良かった。
でも、父が会社を継いで社長になってから、すべてが変わった。
家にいる時間は激減。帰ってきても、食事の席は無言。次第に母さんも疲れたような顔をするようになり、やがて“言い合う”のが当たり前になった。
「真一郎、あの時の話……覚えているな?」
父さんの鋭い眼差しが俺に突き刺さる。
その瞬間、俺の脳裏にある記憶が甦った。
――あれは、夏休みの終わり。佐々木さんが家庭の事情で転校を迫られていた時。俺は父と“ある条件”で取引をした。佐々木家を援助する代わりに、父が提示した“役割”を受け入れること。
「お前には、あの時言った“役割”を果たしてもらう」
父さんの声が低く重く響く。
俺は思わず手を止め、持っていた箸を置いた。
「真一郎――お前には、私の会社を継いでもらう。佐々木家を助けた娘と……結婚するんだ」
「っ……!」
息を呑んだのは俺だけじゃなかった。
母さんもまた、思わず声を上げる。
「さ、佐々木って……まさか、あの“メイド”のこと!?」
「なんで、知って……!?」
俺が顔を上げると、母さんと目が合った。
「私が知らぬとでも思ったか?」
父さんはフッと笑いながら続ける。
「お前とあのメイドが付き合っていることなど、すでに耳に入っている。“風の噂”というやつだな」
「——っ!!」
俺と母さんは同時に固まる。
「ちょ、ちょっと! 真一郎、なんで彼女のこと私に報告しないの!?」
今度は母さんが詰め寄ってきた。
「え、いや……そこなの!?」
俺はてっきり、“メイドと交際なんて非常識だ”って怒られると覚悟していたのに。
しかし母さんは、珍しく楽しそうな笑みを浮かべて言った。
「別に怒ってないわ。むしろ歓迎よ。これは母としてじゃなく、女としての助言でもあるけど――」
母さんは指を一本立てて、すました顔で言った。
「数年ぶりに、北海道旅行に行きましょう」
「……は!?」
その一言で、俺の理性は、半分くらいどこかへ旅立った。
――俺の名前は、裕貴真一郎。
今の状況をざっくり説明すると、クラスのマドンナにして俺の彼女――佐々木悠里と、北海道の温泉宿に来ています。しかも、浴衣姿。しかも、二人きり。しかも……彼女は布団の上に正座して、まっすぐ俺のこと見つめている。
結論から言おう。
誰か、助けてくれ。マジで。
※
数日前。
いつものように起きて、ぼんやりした頭のままダイニングへ行くと――珍しく両親が揃って朝食を囲んでいた。
「おはよう、父さん、母さん。……二人が並んでると、天変地異でも起きそうだな」
軽口を叩いたつもりだったが、空気は思った以上に重たかった。
「そうね。どんな風の吹き回しかしら」
母さんが、刺すような視線で父さんに言う。
一方の父さんは、ナイフとフォークを静かに置いて、目を閉じたまま低い声を発した。
「……ただ、お前たちの“これから”について話しに来ただけだ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸に嫌な予感が広がる。父と母――二人の間には、長年積もった何かがある。俺は、それを知っている。
思い出すのは幼い頃の記憶だ。あの頃の父さんと母さんは、手を繋いで笑っていた。テレビドラマの夫婦みたいに、やたら仲が良かった。
でも、父が会社を継いで社長になってから、すべてが変わった。
家にいる時間は激減。帰ってきても、食事の席は無言。次第に母さんも疲れたような顔をするようになり、やがて“言い合う”のが当たり前になった。
「真一郎、あの時の話……覚えているな?」
父さんの鋭い眼差しが俺に突き刺さる。
その瞬間、俺の脳裏にある記憶が甦った。
――あれは、夏休みの終わり。佐々木さんが家庭の事情で転校を迫られていた時。俺は父と“ある条件”で取引をした。佐々木家を援助する代わりに、父が提示した“役割”を受け入れること。
「お前には、あの時言った“役割”を果たしてもらう」
父さんの声が低く重く響く。
俺は思わず手を止め、持っていた箸を置いた。
「真一郎――お前には、私の会社を継いでもらう。佐々木家を助けた娘と……結婚するんだ」
「っ……!」
息を呑んだのは俺だけじゃなかった。
母さんもまた、思わず声を上げる。
「さ、佐々木って……まさか、あの“メイド”のこと!?」
「なんで、知って……!?」
俺が顔を上げると、母さんと目が合った。
「私が知らぬとでも思ったか?」
父さんはフッと笑いながら続ける。
「お前とあのメイドが付き合っていることなど、すでに耳に入っている。“風の噂”というやつだな」
「——っ!!」
俺と母さんは同時に固まる。
「ちょ、ちょっと! 真一郎、なんで彼女のこと私に報告しないの!?」
今度は母さんが詰め寄ってきた。
「え、いや……そこなの!?」
俺はてっきり、“メイドと交際なんて非常識だ”って怒られると覚悟していたのに。
しかし母さんは、珍しく楽しそうな笑みを浮かべて言った。
「別に怒ってないわ。むしろ歓迎よ。これは母としてじゃなく、女としての助言でもあるけど――」
母さんは指を一本立てて、すました顔で言った。
「数年ぶりに、北海道旅行に行きましょう」
「……は!?」
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