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3.不確定な気持ちと衝動
しおりを挟むルディガーとは、それから週1位は会っていて、3ヶ月ほど経過した。
両親達の圧が強いからだ。
お付き合いをしている男女と考えたら、交際は順調と見られるだろう。
私達は関係性が微妙にも関わらず、忙しい仕事の合間にマメに会いに来る姿は、とても律儀だなと思う。
「今日はベルナの好きそうなお菓子を持って来たんだ。どうかな?」
少しはにかんで箱を差し出す。
気付けば名前呼びされているけど、敢えてそのままにする。
開けてみると、いちごやラズベリーの可愛らしいタルトが並んでいる。
特にいちごは大きめのカットでたくさん乗っている。
「うわ、美味しそうだし可愛いですね!一緒に食べましょう!!」
「喜んでもらえて良かったよ。」
ルディガーも甘党なので、一緒にティータイムを楽しみ、その後はだいたい庭園を散歩する。
婚約式の時は満開だった桜が、今は葉桜に変わっている。
陽射しを浴びて、光る豊かな緑に癒される。
「ルディガー様、その後、一目惚れの女性はどうしてますの?何か進展はありました?」
「たまに見掛ける位かな。特に進展は無い。」
「ほんの少しの時間でも会えたら嬉しいんでしょうね。」
私はちょっと胸がズキンとした気がしたけど、これはきっと気の所為と思うことにする。
「そうだな………」
ルディガーは前を向いたままポツリと言った。
「私ね、恋をしたことないんですよ。見ての通り、兄も姉も妹溺愛じゃないですか。デビュタントのダンスの相手は実の兄ですよ!?それっきり夜会とか行ったことないし。もっと外の世界を見た方がいいですよねぇ…」
「ぷぷっ、兄上とダンスっ!それは過保護だね。俺となら許可は下りるのか?夜会に行ってみたかったら付き合うけど?」
兄にツボったようで、笑いを堪え切れていない。
この人、笑顔が似合うなぁと見惚れてしまう。
ぼーっと顔を見ていたら、また揶揄ってくる。
「何?俺の顔、好きか?」
「うん。」
ルディガーは片手で顔を覆って横を向いた。
耳も真っ赤ということはテレているように見える。
「ルディガー様って綺麗な顔ね。落ちない女は居ないんじゃないかしら?ちょっと『純潔』の基準を下げたら、あっという間に私は婚約破棄されそうね…」
実際、そうなるのかもなーと思うと、また胸がズキンとした。
「ベルナはどう?ベルナも俺の顔で落ちる?」
背の高いルディガーは、屈んで私の顔を覗き込んできた。
近い。めっちゃ近い。
サラサラ風になびく黒髪と金色に光る瞳を見ていたら、何故か吸い込まれるように唇にキスをしてしまった。
そっと触れるだけのキスだけど、振り払われないから、実際には数秒かもしれないが長い時間のように感じた。
「ベルナ……?」
ルディガーは真っ赤な顔を更に赤くして私の名前を呼ぶ。
「何でだろう…ごめんなさい…」
恐らく私も真っ赤な顔だと思うけど、涙が溢れてきて心臓もドキドキだ。
逃げ出したい気持ちになってしまい、背を向ける。
「ベルナ!」
後ろから抱き締められて逃げられない。
私の耳にルディガーの唇が触れる。
「ベルナ、行かないで…」
耳元で囁かれるとくすぐったい。
「それ、くすぐったいで、、」
横を向いて話し掛けたら、そのまま唇を奪われる。さっきの触れるだけのキスじゃなくて、深くて舌を奪われるキス。
キスをしたまま体の向きを変えられて、
向き合って、更に強くぎゅっと抱き締めながら深いキスは続く。
ちゅぱちゅぱと舌を吸われ、絡められ、唾液を流し込まれる。
長い長いキスが終わり、唇が離れると、はぁはぁと熱い吐息を感じる。
「ごめん…」
ルディガーは私の肩に頭を乗せて謝る。
「この気持ちは………」
私が口を開くとルディガーの声と重なる。
「恋かも…」
「欲だ…」
はっとしてルディガーは私を見た。
私は敢えて笑顔を作る。
「欲、ですね。そうそう。そんな雰囲気にしてしまって、ごめんなさい。気にしないでくださいね。」
「いゃ、あの………」
「今日はそろそろこの辺で失礼しますね。お時間あれば、またお会いしましょう。」
何か言い掛けたルディガーを遮って、私は邸宅に戻った。
この情けなくて恥ずかしくて悲しかった時、私がルディガーに恋をした瞬間だった。
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