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13ー1.ヴィルヘルムの気持ちーチャンスー
しおりを挟む辺境伯邸に無事帰って来た。
サラーシュは疲れたのか、食事と湯浴みを済ませると早々にうたた寝。
抱き上げてベッドに運ぶ時も、目を覚まさなかった。
ぐっすり眠るサラーシュに添い寝しながら、一人反省会。
ごめんね、サラーシュ。
こんな田舎に連れて来て。
どうしてもサラーシュが欲しかったんだ。
明るくて、一途で、可愛いの塊。
こんな女が俺を想ってくれて、一緒に暮らせたら、俺は幸せだって思ったんだ。
サラーシュが初恋十年目なら、俺は一目惚れからの三年片思いだ。
初めてサラーシュに会ったのは、北部に赴任する前日。
たまたまマクレガン公爵邸に用事があって訪れた際に、不在の公爵様に代わって書類を受け取ってくれた。
にこにこと受け応えするサラーシュに、心臓が騒めいた。
しばらくして、公爵様が戻られたので、北部への支援を検討してもらえるよう申し入れた。
帰りに、公爵様オススメの庭園を拝見した時にサラーシュをまた見掛けた。
リュシフェルの後を追いかけて、嬉しそうにしていた。
あんなに好かれてるのに、何でリュシフェルはスカしてんだ?
元々リュシフェルに良い印象を持っていなかったせいか、後を追う少女の健気さに惹かれた。
「あんなに可愛い子だったら、大事にしてあげるのに。」
その時は、それだけだと思っていた。
北部に赴任し、領地管理と数ヶ月に一度の魔獣征伐。
公爵家の跡取りからは、疾うに外れていた。
夢も希望もなく、どんどん疲弊していく自分。
心の支えは、いつしか、あの時見掛けただけの少女となった。
あの瞳が自分を見てくれたら、俺は他に何も望まない。
三年の月日が経ち、領地での暮らしに慣れてきた頃、一旦首都に戻れと命令された。
恐らく、このまま辺境地を治めろということだろうと容易に推測出来た。
首都の賑わいは好きではない。
だから、辺境地でもいいとも思った。
だけど、もし。
もしも、一つだけ願いが叶うなら、あの子が欲しい…
そう願いながら、久々に帰宅した。
嫁でも見つかれば…と父上に言われ、マクレガン公爵家の長女の誕生パーティーの招待状を渡された。
これだ!と神に初めて感謝した。
あの子と、また会えたら…
藁をも掴む勢いで、当日はマクレガン公爵邸に向かった。
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