【完結】 初恋を終わらせたら、何故か攫われて溺愛されました

紬あおい

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38.共同作業

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「ヴィル様!」

岩から少し離れた木陰で、血を流したヴィル様を見つけた。

「サラ、何でここに!危ないじゃないか!」

「だってヴィル様が帰って来ないから!ケガは?」

右の肘と右足の太ももをケガしていた。

「イーサン、包帯!」

急いで止血する。
太い血管は避けたのか、何とか止血出来た。

こんな状態になったのは、岩のひびが大きく、魔気がいつもより広範囲に漂い、動物達が汚染されて、魔獣の数が増えていたらしい。
騎士達は魔獣退治を優先し、未だに追っている。

魔気を止めないと魔獣の発生が続く為、ヴィル様は剣を抜こうとしていた。
しかし、ヴィル様は騎士の目を掻い潜った魔獣に襲われた。
手足に力が入らず、木陰に避難したところに私とイーサンが現れた。

「ヴィル様、剣はどの位刺されはいいのですか?もしかしたら、剣そのものに浄化作用があるのではないでしょうか?」

「正直そこまでは分からないんだ。俺が刺した場合、半分までは刺さる。その後は勝手に保護の魔法陣が発動して、魔気は止まるんだ。」

「剣を抜くのは?」

「俺はちょっと力を込めれば抜けていた。でも、今はケガで踏ん張れないから、この有様だ…」

今は魔獣が近くに居ない。
とても静かだ。

「ヴィル様、私とやりましょう!」

「はっ?」

「一人で出来ないなら、私と一緒にやってみましょう!」

ヴィル様は考え込んだ。
私を危険に晒さないか、悩んでいるのだろう。

「このままだと、もっと危なくなります!ヴィル様、やりましょう!!」

「分かった。俺から離れるな!」

岩までイーサンに支えてもらい、剣のある中心部までは2人で行った。

「剣をしっかり持つぞ。真上に引き上げろ!」 

ヴィル様と息を合わせて抜く。

「おぉー、抜けましたね!」

「サラ、もう一本!」

こちらも抜けた。

次は、刺す方だ。

「せーの!」

ヴィル様の体を支えながら、全体重を剣にかける。

「ヴィル様!根元まで刺さりましたよ!!」

「この調子でもう1本いくぞ!」

2本の剣は、見事に根元まで刺さった。
次の瞬間、岩全体が黄金の光に包まれて、魔法陣が発動した。
同時に、辺りの魔獣が魔法陣に吸い込まれていった。

「ヴィル様、これ、もしかして上手くいきました???」

「あぁ、上出来だ!魔獣まで消えたのは初めて見た。きっと完全に浄化された完成形なんだと思う。」

魔獣が吸い込まれて消えたので、騎士達がヴィル様を心配して駆け付けてきた。

「取り敢えず、帰ろう。みんな、ご苦労だった!」

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