【完結】 その身が焼き切れるほどの嫉妬をあなたにあげる

紬あおい

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42.義家族

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「父上、母上、ただいま帰りました。」

応接間に通されると、大公のヒューレッドと大公妃のコリンがソファに座っていた。

「ジークフリード、おかえり。レナリア、ようこそ、クロムウェル公国へ。まあ座りなさい。」

ヒューレッドに促され、ジークフリードとレナリアは向かい側に座る。
レナリアは、ヒューレッドとコリンのあたたかい眼差しに、ほっとした。

「初めまして。レナリアです。」

「俺の妻、可愛いだろう?」

ジークフリードは早くもデレデレだ。

「うわっ、ジークフリードがそんな顔をするなんて、初めて見たわ。」

「良い人と巡り会えたようだな。」

「ああ、素晴らしい妻だよ。」

レナリアは誉め殺しの中で、ちょこんと座って俯いていた。

(は、恥ずかし過ぎる…この美形家族に褒められるとか、アリエナイ…)

「レナリア、緊張してる?大丈夫だよ、父上も母上も取って食いはしないから!」

「そうよ、気楽にして?良かったら、お菓子でもどうぞ。ジークフリードの好きな物を並べたから、食べてみて?」

テーブルの上には、瑞々しいフルーツがたくさん乗ったタルトやジャムのクッキーが並んでいた。

「では、いただきます。」

ひと口クッキーを食べると、杏のジャムが酸味が効いていて美味しい。
次から次へと手を伸ばすレナリアを三人が微笑ましく眺めている。

「レナリアは痩せ過ぎだから、たくさんお食べ。」

「痩せ過ぎではなくてよ?でも、美味しいから手が止まらないわ。」

気付けば、皆で和気藹々とティータイムを過ごしていた。

しばらくして、応接間のドアが開き、若い男性が入って来た。

「ジーク、おかえり!君がレナリアだね?俺はジークの兄のキルリードだ。宜しく!」

二人は声と笑顔は似ているが、キルリードは父親似、ジークフリードは母親似かと思える兄弟だ。
どちらも美丈夫であることは間違いないが。

「レナリアです。宜しくお願いします。お義兄様もご結婚なさるとジークから聞いています。おめでとうございます。」

「ありがとう。ジークが見つかって、やっと求婚出来たよ。あと一、二年遅かったら、失恋してたかもな。あははは!」

ジークフリードは頭をぽりぽりかいたフリをして反省するが、キルリードもウィルヘルムもコリンも笑い飛ばした。

そんな家族の様子を見て、ジークフリードの表情が柔らかで、両親や兄に愛されて育ったのだと感じた。
それなのに、何故家を出て、護衛騎士になったのだろう。
レナリアは、まだ聞いたことが無かったし、ジークフリードが話してくれるのを待とうと思った。
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