【完結】 心だけが手に入らない 〜想い人がいるあなたは、いつか私を見てくれますか?〜

紬あおい

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1.心は期待しないでと言われて

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ワーグナー侯爵家の三女レイシアとして生まれた私は、既に親同士が決めた婚約者がいる。
スタンリー公爵家の長男フィーロだ。

新規事業を立ち上げる為、潤沢な資金を持つワーグナー侯爵家と利便性の良い土地を持つスタンリー公爵家が手を組んだのだ。
その証として、両家の子息令嬢を結婚させることとした。

侯爵家の三女という立場で、親が決めた相手との婚姻に背くことは出来ず、当たり前のように受け入れるしかない。
せめて、相手がまともであることを祈るしかない。

幸い、フィーロは美丈夫だった。
背が高く、がっしりとした体格で、艶やかな銀髪に意志の強そうな光を放つ金色の瞳が美しい。
行動力があり、明朗快活な人と言われている。

対する私は、背が小さく、実際の年齢よりも若く見られることがあるが、性格的には自由気ままな人間だ。
父譲りの金髪と母譲りの薄紫の瞳は、人から羨ましがられることもあり、容姿も悪くはないと思っている。

私とフィーロは同い年なので、十八歳になったら結婚させることになっていた。
一緒に事業を進めるにあたり、両親とお互いの家を行き来することもあったし、それなりに良い関係を築いていると思っていた。

しかし、結婚式を終えて、初夜を迎える時、フィーロから衝撃的な話をされた。

「俺には愛する女性がいます。心はその女性に捧げました。しかし、スタンリー公爵家の嫡男という立場です。ワーグナー侯爵家とも友好な関係を続けていきたいと思っています。お互いの家の為に、初夜だけでなく、子どもも授かりたいし、レイシアとも信頼関係は築きたいと思います。ただ、愛せないと思うので、心だけは期待しないでください。」

真剣な眼差しで話すフィーロに、唖然としながらも強い意思を感じた。
同時に、これから夫婦として、愛し支え合って生きていきたいという私の想いの置き所に困った。

「あなたは、愛する女性と体は繋げたのですか?」

「いいえ。そうしたいと思ったことは何度もありますが、出来ませんでした。口付けもしたことがありません。」

そんなに大切にしている女性なのかと思う気持ちと、それを愛と呼べるのかという疑問と、私は複雑な思いで聞いていた。

「どうしてその女性と添い遂げようとしないのですか?」

「それが不可能な相手だからです。」

それ以上は聞いてほしくないという顔をしていたので、私は聞かなかった。
感情を抑えきれなくなったら、自然と態度にも出るだろう。
追々分かることだ。

それよりも、この状況を突き付けられ、初夜をどうしたらいいか、今の私にはその方が問題だった。
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