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3.夫婦らしく
しおりを挟む愛はなくとも、フィーロはとても優しく親切な夫であった。
きっと、周りからも仲の良い新婚夫婦に見えているだろう。
私自身もそうであると錯覚してしまうほどに、彼は完璧な夫だった。
今日は、外出先から戻ったフィーロが、恥ずかしそうに花束を私に手渡した。
赤と黄色のチューリップが可愛らしいリボンでまとめられている。
「まあ!素敵な花束ですね!!色鮮やかで、可愛らしいです。気分も明るくなりますね!」
「レイに似合うと思って選んでみたんだ。」
微笑む顔はとても穏やかで優しく、危うく愛されていると勘違いしそうになった。
こういったことは頻繁にあって、花束・ケーキ・ネックレスなど、日によって様々な贈り物をくれる。
たまたま目に付いたからと言うが、フィーロが忙しい合間を縫って準備してくれることが嬉しい。
それに、いちいちセンスが良いのだ。
贈り物だけでなく、行動も夫婦らしい。
食事は可能な限り一緒に取るし、庭園の散歩や買い物などにも、気軽に付き合ってくれる。
何もなくても、傍でお茶を飲んだり、読書をする日もある。
また、閨事も、私の体調が悪い日以外は、毎日のように求めてくる。
公爵邸は、フィーロと私の私室がそれぞれあり、真ん中が夫婦の寝室という造りだが、初夜以来ずっと一緒のベッドで寝起きしている。
いつ子どもが出来てもおかしくないだろう。
家の為に跡取りとなる子どもが必要だからなのか、私の体が気に入ったからなのかは、怖くてとても聞けない。
怖いと思うほど、私の気持ちはフィーロに傾いていたからだ。
(想うだけならば、負担にはならないわよね。今も、 他人から見たら、ちゃんと夫婦に見える筈だもの…政略結婚と思えない位に、今幸せだわ。)
これ以上は我儘だと、私は思った。
忙しくとも、穏やかな日を過ごしていたある日、フィーロが言った。
「レイが良ければ、旅行に行かないか?海の近くに公爵家の別荘があるんだ。」
「海!いいですね。行きたいです。」
「では、新婚旅行だな!結婚早々、忙しくさせてすまなかった。のんびりと過ごす時間も必要だからな。」
翌日から着々と準備を始めて、いよいよ明日出発だ。
執務は義父の公爵様にお任せとなるが、孫を期待しているので、「ゆっくりしてきていい」と、ひと月も休暇がもらえた。
フィーロが、愛じゃなくても、限りなくそれに近い気持ちになってくれたらいいという期待はあった。
私はフィーロと、このまま穏やかに暮らすことだけを願っていた。
しかし、それは楽しい筈の旅行で、いとも簡単に崩れ落ちた。
神様はいたずら好きなのだろうか。
それとも、私は運命に試されているのだろうか。
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