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蓮池楓の朝2
しおりを挟むシャワー浴びるだけで盗撮されるかもしれないなんて
芸能人はほんと気が抜けねぇな。
梓蘭世を風呂場に案内し終え、俺はキッチンの椅子に
どさりと腰を下ろしぼんやりと待つことにした。
てかこの着替えの入ったカバンを丸ごと押し付けられたけど、あの人まさか全裸で出てくる気か?
楓「…………」
全裸ねぇ.....。
ふとうちに稽古に来るババアどもの顔がチラついて吐き気がしてきた。
俺の上裸が見たくてたまらないのか、ババアどもは着物をほんの少しはだけさせただけで興奮して目をギラつかせ、訳の分からんことを捲し立てる。
裸体って人間が1番シンプルに興奮するものとはいえ、
ちゃっかり拝んでおきながら変にキレ散らかす奴もいれば乱れた襟を直すフリしてガッツリ触って吐息混じりに喘ぐ奴まで………。
キモいな、何度思い返してもキモい。
ババアどもの欲望はまるで下品な博物館の展示物みたいに多種多様で思わず舌打ちが漏れる。
でも梓蘭世クラスともなれば盗撮だけじゃなくて、変態じみた思いもよらないことを言われる可能性だってあるんだろうしそれに……。
.........。
...........次から次へと連想しすぎか?
また夕太くんに『でんちゃんってばいっつも悪口マジカルバナナなんだから』って言われちまう。
あの笑顔でハッキリ言われると言い得て妙なのもあってつい苦笑しちまうんだよな。
楓「夕太くん、ほんとワードセンス冴えまくり」
手持ち無沙汰にスマホを手に取り夕太くんのインスマのストーリーを開くと、花火の煌めきや焼肉の煙、陰キャの間抜けな半目写真など合宿の記憶が色鮮やかに次々と流れていく。
冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し氷を入れたグラスに注いでいると、おすすめ欄にあの金髪のアカウントが表示されていた。
楓「やっぱこいつはホストでマルチでネズミ講で……
夕太くんの言ってたこと全部当たってんだよ」
夕太くんってばさすがに冴えすぎ。
ネズミ講なんてワード普通出てこないし、これから
あいつを見るたびにソレ系にしか見えんくなるわ。
キラキラした笑顔の裏でちゃっかり他人を利用して目立とうとする浅ましさを夕太くんは一瞬で見抜いたんだろうね。
金髪マルチのアイコンに映るその軽薄に輝く笑顔を見るとグラスを握る手に力がこもり麦茶の表面が小さく揺れる。
楓「……ほんとイラッとするわぁ」
三木先輩がインスマに写真を載せるな、部室に部外者を入れるなと、こいつだけにうるさく言い聞かせる理由は警戒してるからとしか思えない。
金髪マルチの周りの軽率そうな奴らも含めて三木先輩は誰が何を企んでるか、どんなリスクが潜んでるかを静かにずっと見張ってる。
もし金髪がインスマのストーリーに梓蘭世をちょっと
でも映してみろ。
それを誰かがスクショしてタバコでも加工してSNSに
流したらどうなる?
取り返しのつかないことになる前に芽を摘んでおく。
そんな先の先まで見据える三木先輩は随分大人だよな。
ほんとすげえよ。
ガリガリと氷を噛みながら裏側矯正の違和感に少し顔をしかめ、暇潰しに金髪マルチのインスマ投稿を辿ることにした。
楓「いつのだこれ」
ふと目に飛び込んできた写真に手が止まった。
日付的に4年前、中学生くらいの三木先輩と金髪マルチが合唱部の先輩らしき人達と並んだ写真。
三木先輩は今の鋭い眼光とは違うどこか柔らかい少年の面影を残していて、マルチはこの頃から胡散臭い笑顔を振りまいてる。
2人は長い付き合いだろうに、三木先輩は最近こいつに
一線引いたよな。
時折見せる梓蘭世を守るようなあの鋭い視線もそうだが、最近のマルチとの距離感には三木先輩の信念の熱さが滲む瞬間がある。
多分三木先輩のポリシーに反する何かがあったんだろうけど、ちょっとは高3らしいところもあって安心したわ。
楓「たった2個上ってだけなのにな」
三木先輩はガキのくせに人の人生を背負うような仕事をさらっとこなし、その視野が広すぎてたまにビビる。
陰キャの服選びに買い物に行った時だって、自分の欲しいものより次の衣装にどんな流行のテイストを取り入れるかとかそんなことばかり話していた。
夕太くんが黒以外の似合いそうな服を先輩に探していたけど、ディスプレイや行き交う人のファッションを一瞥しては仕事に活かそうとするからつまんないって言ってたもんな。
まるで場の空気を一手に握るような存在感があるくせに、どこか人間らしい翳りもある。
……何を食ってどう育てばあんな人間になれるんだ。
朝の光がキッチンのテーブルに淡く差し込む中、三木先輩のそんな姿が俺の胸に届かない距離感を刻んでいった。
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