山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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227.【余るのは俺か!?】

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桂樹先輩の声が夜の校舎に軽やかに響く。


桂樹「そろそろ噴水前行くかー?」

夕太「え!もうそんな時間!?」

三木「戸締りだけして向かうおうか」


時計を見ると、すでに21時45分。

竹風閣の豪華な弁当とフルーツパーラーのクリケット
ゼリーを堪能した俺達は、あれからまた部室で衣装作りをする話が上がった。

しかしもう裁縫なんてしたくないのか、一条先輩が
マジックの練習をしようとトランプを取り出し、それに乗った柊が1回遊んでからにしようと譲らず……。

俺は皆でトランプをすることに密かに憧れていたのも
あって誘われたことが嬉しくてその話に乗ってしまった。

修学旅行とか、トランプをする時に誘われた事なんて1度もなかったからな……。

思い返してみてボッチすぎると頭を抱えたくなるが、
今は無事脱却したのだからいいじゃないかと自分に言い聞かせた。


蘭世「にしてもスッキリした」

楓「あれだけぶん殴ればスッキリもするでしょうよ」

蘭世「お前もだろ」

雅臣「俺ばっかり狙って……」


トランプに興じた後は“大乱闘スマッシュシスターズ”
という対戦格闘ゲームで大盛り上がり。

マリゴーと同じ会社のゲームで、キャラクターを選び
ゲームの舞台から場外へ落下した者が敗れ、最後まで
舞台に残っていた者が勝者となるのだが……。

このゲームを1度もやった事のない俺は梓蘭世や蓮池に渾身の恨みをぶつけられるかのように何度も殴り落とされ、負け続けているうちに肝試しの時間がやってきたという訳だ。

部室の鍵を閉め皆で噴水広場へと歩き出すと、校舎の
廊下に響く足音が夜の静けさに軽やかなリズムを刻む。


夕太「てか肝試しどんな感じなの?」

桂樹「左側の中等部の校舎3階からスタート。道順に
沿って進んで渡り廊下渡って次は高等部3階をぐるっと
歩く、まあ全棟3階を1周回る感じだな」

夕太「えー!そんなけ!?余裕じゃん!」

桂樹「まあ聞けって」


柊と同じく歩くだけなら俺も余裕だと思ってしまったが、桂樹先輩は人差し指を振りながら肝試しについて
丁寧に説明してくれた。

中等部から高等部まで3階を道順に沿って歩くが、
4箇所にスタンプが設置してあるらしい。


桂樹「廊下とか教室に設置してあるスタンプを探して、スタンプラリーをしながら周る肝試しってわけ」

蘭世「サッカー部が脅かし役なんだろ?」

梅生「そうなんだ。楽しみだね」


目を輝かせる一条先輩とは反対に俺は不安げに尋ねてしまう。


雅臣「あ、あの!ちなみにこれは何人ずつで周るんですか?」


肝試しといえば何となく2人ペアで周るイメージだが、ペアになればいつも余るのは俺かもしれないという毎度恒例の考えが頭をよぎる。

さすがにもうそんな事はないかもしれないが肝試しで
1人にさせられるのは流石にキツいと冷や汗をかいていると、


桂樹「何人でもいいんじゃね?ルールとかは無いと思うし、多分自由」


選ばれし人民の桂樹先輩は気楽に答えるが、突然そこへ柊が大声を上げる。


夕太「グッとパーして分れよ!!グッパージャス!」

蘭世「何だその変な掛け声、グッとパーで分かれましょが相場じゃね?」

夕太「えー何でもいいじゃん!ほら、グッパー__」


待て待て待て!?

それだとより俺が1人になる可能性が!!!

本気で焦るが、いつも通り止める間もなく俺はグーを出す。


三木「……最悪だな」

桂樹「ゲ、まじ?もう1回やらん?」


結果は三木先輩と桂樹先輩がパー、俺たち1・2年がグーで、何とも微妙な組み合わせに分かれてしまった。

せめて3人と4人に分けようと提案する桂樹先輩だが、梓蘭世と柊が面白がってそのままで決まってしまった。


桂樹「何で三木と2人なんだよ……」

三木「それはこっちのセリフだが?」

夕太「えーっ!?なら2人とも誰が良かったんだよ」


三木先輩と桂樹先輩は顔を見合わせどこか気まずそうに黙ってしまう。

合宿中、練習の合間に感じた彼らの微妙な空気が頭を
よぎり大丈夫かと俺は少し不安になる。

今だって軽口を叩いているように見えるがもしかしたら本気で嫌なのかもしれない。


雅臣「あの、もしあれなら___」

三木「誰がいいも何も、スレンダー巨乳の女一択だろ」


………。

つい心配して口を開いたのに三木先輩が自分の好みの
タイプを押し出した。


桂樹「そんなん俺だって尻がデカいミニスカート履いてる女がいいっての!」

三木「ハッ、お前はワンチャンを狙いすぎだ」

桂樹「三木に言われたらおしまいなんだよなぁ」

蘭世「醜い争いだな……お似合いだよアンタら」


負けじと返す桂樹先輩に梓蘭世も一条先輩も苦笑していて、2人が好きな女のタイプを言い合って譲らない姿は以前と何ら変わりはなくて俺の心配が杞憂だったことに安堵の吐息をつく。


ふと強い視線を感じて、横にいる蓮池をチラと見ると、


楓「ムッツリ野郎」

雅臣「はぁ!?」


また突然訳の分からないことを言われ、鼻で笑われた。


楓「どうせお前はケツも乳もデカい女がいいんだろ」

夕太「それはぽっちゃりって……え、雅臣ぽっちゃり
好き?ごめんタイプは人それぞれだもんな」

雅臣「あのなぁ!!俺は……」


声を上げると同時に今度は一条先輩と目が合った。

まるで何か企んでいるかのような雰囲気を漂わせる一条先輩の目が細まり口角が微妙に上がったその表情に、俺はデザートパラダイスで先輩に自分の好みのタイプを話した事を思い出した。

俺のタイプをここで話されたら永遠にこいつらに擦られいじり続けられる……!!


雅臣「い、一条先輩!!」

梅生「ふふ、言わないよ。大丈夫」


言って欲しくなくて縋るような目付き出みると一条先輩は面白そうに笑った。


夕太「え、何!?梅ちゃん先輩もしかして雅臣の好きなタイプ知ってるの!?教えて教えて!!」

梅生「さぁ?どうかな」


一条先輩は背中に飛びつこうとする柊をひらりと躱し、早く行こうといたずらっぽく笑って走り出した。

その軽やかな足音を追いかけ俺達は夜の校舎を噴水広場へと向かった。







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