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柊夕太の帰り道2
しおりを挟むバニラレーズンのアイスをスプーンで掬って1口食べると口の中で溶ける甘さに目を細めた。
お店で食べるのって家で食べるよりも倍美味しく感じるよね。
夕太「うまー!!」
……それにしても。
でんちゃんが合宿参加したなんて奇跡だよ。
改めてその奇跡を噛みしめながらアイスをもう1口頬張るけど、でんちゃんって本当は学校行事なんて大嫌いなんだよね。
昔から遠足すら休もうとするくらいで、今回の合宿も
途中で『何かダルい』とか言って帰っちゃうんじゃないかと心配だった。
でも家の手伝いに行った後合宿にちゃんと戻ってきて
くれて、結局なんだかんだ最後まで楽しそうにしてた
から安心しちゃったよ。
衣装作りだって真剣にミシンを動かしてたし、雅臣が
失くしたネックレスも一応探してあげてたしね。
雅臣のおかげででんちゃんの意識が明らかに俺以外の
外に向いて、少しずつでんちゃんも変わってきたのが
分かって嬉しかった。
まぁ、雅臣みたいな全部オーバーリアクションの弄り
がいのあるボンボンなんてなかなかいないからなー。
最近のでんちゃんは雅臣に言いたい放題やりたい放題の怪獣みたいで、小さい頃に戻ったみたいだった。
夕太「……怪獣でんでん虫」
昔こっそりつけていたあだ名を口に出しながら、次は
ストロベリーアイスにスプーンを突き刺した。
コロコロと縦も横も幼稚園で1番大きかったでんちゃんは横暴でワガママで生意気で、すぐ怒るクソガキそのものだった。
よくよく目を凝らして見れば優しいところもたくさん
あるんだけど、子供の頃なんて嫌なことの方が目につくじゃん?
もちろん俺にも例外なく意地悪だったのに。
今は……。
今は俺には優しいだけのでんちゃんになってしまった。
あのことがあってから、でんちゃんは別人に変わり果てちゃった。
どれだけ後悔しても取り返しがつかない。
だから俺はあの時、あんなこと言わなければよかったと今でも思うんだ。
でも肝試しの時のジュリオン先輩たちを見て、お互いの気持ちをハッキリさせた方がいいこともあるような気もした。
3年生2人はまるで俺たちの近い未来を映し出す鏡のようで、このままじゃああなってしまうと警告されているみたいだった。
いつも何かと難癖つけるでんちゃんでさえ静かになってしまっていたし、きっと何かを感じ取ったんだろう。
怪獣なのに繊細で、本当は横暴なくせに優しいでんちゃん。
夕太「タチが悪いんだよなぁ.....」
俺は小さく笑いながら、俺より遥かに背が高い幼馴染を思い浮かべた。
でんちゃんのタチの悪いところってさ。
自分が好きな子とか気に入った子にはめっちゃ甘くて、許した相手には何をされても許しちゃうところなんだよな。
逆に雅臣のタチの悪さは.....。
バニラを掬おうとしながら抹茶クランチにスプーンを
伸ばし1口頬張る。
誰にでもいい顔しちゃうとこなんだよな……。
夕太「むぁさうぉみって……んぐ…雅臣だよなぁ……」
俺たち3人は類友とはいえ、似ているようで全然違う。
でんちゃんはちゃんとした家庭で育てられて、愛情を
かけられてきたからこそ人を信じることができる。
愛情の基盤がしっかりしているから芯が揺らがないし、自分の中で明確なルールを持って様々なことを判断できるんだよね。
でも、雅臣は違う。
梅ちゃん先輩がハッキリ言っちゃったけどその通りで、言い方はアレだけど育ちが悪いんだよな。
はたから見たら金もあって何不自由ない人間なんだけど中身がぐちゃぐちゃすぎる。
愛情の基盤が欠けていて、自分のルールすら定まらずにいつも心のどこかが揺れて足元がぐらついたまま。
しかも半年前まで、雅臣の世界にはとっとしかいなかった。
人間関係は壊滅的で、友達はゼロ。
普通はSNSくらい親に禁止されててもやるもんだけど、友達が1人もいなかったんだからそもそも必要なかったのかな。
箱入りに育てられすぎたからなのか、そんな雅臣は誰でも疑がわずに信じてしまう。
夕太「あんなん女だったらホス狂一直線だね。
騙されちゃうよ」
俺の優しさも、でんちゃんの優しさも、ジュリオン先輩の優しさも全部同じだと思ってるんだもん。
寂しいからって、ホス狂みたいに他人の優しさを自分の都合よく捉えるのは本当に止めた方がいいと思う。
夕太「__まぁそれも友達だから?俺がおいおい教えてやればいいんだけど」
何でも誰でも信じる雅臣と、自分のルールと境界線を
しっかり持ってジャッジするでんちゃんに、誰のことも信じない俺。
せっかく繋がった関係が手元の3つのアイスみたいに、
すぐに溶けてなくなっちゃうことのないようにしたいな。
混ざりあったアイスの部分のように、上手く調和できたら1番いいよな。
夕太「………ん?でんちゃん?」
震えるスマホの画面に、でんちゃんからのメッセージが映る。
〝帰れた?〟
〝暑いから水分補給忘れずに〟
夕太「……相変わらず優しいね」
ねぇ、でんちゃん。
俺たちもう食べ物の話だけじゃないよね。
俺たちはいつか.....。
本当に何気ない話が二人でできるようになりたいね。
そんなことを思いながら立ち上がり、空のカップを
片付けた。
夕太「ごちそーさまでした!……ん?」
ふと、バイト募集のポスターが目に止まる。
雅臣もバイトとかすればいいんだよな。
そしたら手っ取り早く世界は広がるし、もっと自分を
客観視できるようになるよ。
俺はもう1人の背の高い友達を思い浮かべて、笑いながら店を出た。
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