山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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柊夕太の原宿log1

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「夕太!!動くなって!!」

夕太「いだだだだ、ハゲる、でんちゃんのパパになる」


キョロキョロと地下の会場内を眺めていたら、怒った
みー姉ちゃんが俺の襟足をぐいっと引っ張った。

何かこういういかにも!なところでメイクされてると
MeTuberになった気分になるよね。

俺は今、いちねぇのロリータショップ

〝TWILIGHT DOLLHOUSE〟

の初のポップアップを手伝いにラフォーラ原宿で絶賛
ヘアメイク中。

PARCOみたいな感じかなと想像していたラフォーラは実際は栄にあるNOVAの上位互換みたいな感じで、色んなジャンルの店でごった返してた。


夕太「てかみー姉ちゃんも呼ばれてたんだ」

「うん、人件費をキリキリに削りたいらしくてね」

夕太「きょうだいにお金払う方が安く済むもんね……
あだだだ、いだいって!!」


俺の頭に青いエクステを固定しているのは3番目の美容師の姉ちゃん。

てっきりいちねぇがどっかのヘアメイクでも雇ってるのかと思えば現場にいたのはみー姉ちゃんだった。


〝Winter Nocturne ~冬の夜想曲~〟


今期のファッションコンセプトに因んで、冬の夜の静けさと星空の下の幻想をイメージした青とシルバーのつけ毛が鏡の中の自分の頭についているけど……。


夕太「なんか俺でんちゃん家のスーみたいじゃない?」


幼馴染の家のよく超えた可愛いインコ達を思い出せば
自然と頬が緩んでくる。


「……ブタの家の鳥と一緒にしないで」


でも、それまで慌ただしく新作アイテムを並べていた
いちねぇにギロっと睨まれたので急いで口を閉じた。

いちねぇは姉妹の中で1番物静かで優しいのに、でんちゃんのことになると誰よりも手厳しいんだよなー。


「……今日はブタと来たってほんと?」

夕太「うん、ここまでタクシーで送ってもらったし……って!!何だよさっきからブタブタって!!」

「そんくらいして当然。夕太、ちょっと上向いて。
白のツケマ乗せてその上からマスカラ塗るから」


……どうしてうちの姉妹はでんちゃんのことになると
こうも厳しいのか。

があったからとはいえ、今も変わらずずっと手厳しいので困ってしまう。

あの日を思い返せば自分のした事が他人の人生を変えるなんて小さかった俺は思いもしなかった。

でんちゃんも、でんちゃんの家族も。

そしてうちの姉ちゃん達もあの日を境に全てが変わっ
ちゃって………。


夕太「……そんなに酷く言わないであげてよ」


何度考えても、あの日は俺に非があったんだ。

でんちゃんのことを俺以外の人がそこまで言うのは
ちょっと嫌で、姉ちゃん達の様子を伺った。


「……私達は許してないの」

「でんは一生引きずるくらいでちょうどいいよ」

夕太「はーいはい」


でも今日はブランド立ち上げからずっと頑張ってきた
いちねぇの大切な日だもんね。

これ以上は何もいわないでおこうと口を閉じた。


「あとはラメをチークに飛ばしゃいいね」

夕太「ねぇ、この眼帯は何?」

「何か左目につけて欲しいんだって」


みー姉ちゃんはまた俺を着飾るのに専念し始めたので
俺も黙って鏡に映る自分を改めてじっくり見る。


うーん、すげーな。


着せられた服のド派手さに、もし雅臣がこの姿の俺を
見たらいつもみたいに目をひん剥くだろうと笑ってしまった。

淡いラベンダーのフリルシャツに胸元に小さな蝶モチーフのシルバーピンバッチ。

星形ボタンのついたネイビーのベストの上から、星座柄の刺繍が施された薄手のネイビーテールコートまで着させられている。

黒のショートパンツに蝶モチーフのタイ、シルバーの懐中時計が首からぶら下がっていて、レースアップブーツなんてヒールが10cm以上あるし……。


夕太「え!!何それ!?」

「ミニシルクハットだって。ピンで刺すから絶対動かないで」


みー姉ちゃんがブスブスとピンで頭にハットを固定していく手つきはさすがプロだけど、これを1日中頭に乗せたままでいるのは首が凝りそう。

でもいちねぇのロリータブランドが名古屋だけでなく
東京でも認知拡大するために、俺も頑張らないとね。

それになんてったって、バイト代がデカすぎるもんな。


「……夕太、笑ってないで先にこれつけてみて」


一通りのメイクが終わると、いちねぇはトータルバランスを見たいのかシルバーの糸で星座の刺繍が入った黒い眼帯をみー姉ちゃんに手渡した。


夕太「えぇー!?マジで眼帯つけんの!?これで接客
すんの至難の業じゃない!?」

「……転ばないようにね」


絶対に譲らないいちねぇに根負けした俺に、みー姉ちゃんは後ろに眼帯のリボンを結びながら微笑んだ。

カラコンに眼帯、あまりの視界の悪さに思わず目を細めてしまう。


「おー…いいんじゃない?あと前髪だけ調整するか……夕太、夏休み終わる前にまたパーマかける?」

夕太「かける!!」


以前雅臣が俺の髪の毛を見て疑わしい目をしてたけど、一応天パってのは嘘じゃないんだよね。

でもそのままにしておくと中途半端で死ぬほどダサい
から上からパーマかけちゃってるのは内緒。


夕太「最早誰って感じ、別人だよ」


メイクはだいぶ完成に近づき鏡の中の俺は完全に別人
状態。

でもその瞬間メイクが大好きなでんちゃんの顔が思い
浮かんだ。

今日は仕事じゃないし、蛾みたいに群がるオバサンたちもいないのにばっちりメイクしてたな……。

喧嘩を売りに行くんじゃないんだからと相変わらずの
幼馴染の気の強さにニンマリしてしまった。


でんちゃんがやる気に満ちてるのはいい事だよね。


ライバル流派の敵情視察をしに行くと聞いた時、俺は
もの凄く嬉しかった。

でんちゃんは気の迷いを起こすことなく、ずっと華の
道を真っ直ぐに歩んで欲しい。

このままいけば俺の考えていた通りになりそうで、俺たちの関係が少しずつ良い方向に向かっていてたまらなく嬉しくなる。

きっとでんちゃんは今頃ライバルの作品を見ながら自分を高めつつ、想像もつかないような悪口マジカルバナナを繰り広げてるんだろうな……。


『一々言わないさ、思うことはあるけどね』


何となくでんちゃんが嫌そうに口角を引き攣らせる表情が思い浮かんでニヤニヤしちゃった。


「何笑ってんの?」

夕太「なんでもなーい」


みー姉ちゃんが仕上げのスプレーで頭を固め始めたので目を瞑った。


___ねぇ、でんちゃん。


でんちゃんと一緒に東京に行く日が来るなんて思いも
しなかったね。

新幹線の中の俺たちは何かすごく友達っぽかったよね。

会話だってすごくナチュラルな感じで……。


「……夕太」

夕太「うわ!!!びっくりした!!!」


優しい幼馴染についてあれこれ考えるのを邪魔するように、いちねぇは横から俺の手首を掴んだ。


「……ミサンガ」


開場前のひと通りの準備が終わったのか、いちねぇは
俺の左手首についてるミサンガをぐいぐいと引っ張る。

服装にそぐわないから外せってことだと思うけど、シャツの下に隠すからと言ったら黙って引いてくれた。


「……今日はよろしくね」


ポップアップ開店まで残すところ20分くらいとなった。



_________
【後書き】
本日は夕太視点!
明日も続きます✨
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