山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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274.【三木先輩の秘密】

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梅生「偉いね藤城!!すごいよ!!」


一通り説明すると一条先輩が目をキラキラさせて両手をパチパチと叩いてくれた。  


梅生「本当にお疲れ様!!」


しかも労う声まで掛けてくれて、何だか照れくさくて
肩をすくめて微笑んだ。

だがバイト3日目のカラフルジュエリストのファンに罵倒されてショックを受けた話をしたら皆は何故か大ウケで、梓蘭世は腹を抱えてゲラゲラと笑い蓮池には鼻で笑われた。


蘭世「いだだだだ……梅ちゃん痛いって」

楓「いだいいだい痛いです」


一条先輩はそんな2人の耳を片方ずつ引っ張って黙らせようとしてくれるが、もちろんそれくらいじゃ2人の口が止まることは無い。


雅臣「お、女の子なのにあんな酷い言葉を使うなんて……」

楓「いだだだ…てめぇはさす九か!!」

蘭世「いでで……女なんてそんなもんだって。
何夢見とんだよ」


俺がどれだけファンの女の子たちが怖かったのかを真剣に伝えても馬鹿にされるだけだった。

……何か久しぶりだなこの感覚。


雅臣「ええ?だって……」

蘭世「お前の女の理想と基準が高すぎんじゃね?」

楓「応慶にいた時の女共は優しかったのに!ってか?
プリント回されたくらいで大して話しもしとらんのに
すげぇ勘違いだな」


……。

…………酷い言われようだ。

一条先輩に耳を掴まれたまま尚悪態をつく2人を見て
困惑してしまう。


夕太「まぁまぁ!雅臣は休んだ時にノート貸してくれたり、ボッチでも修学旅行でグループに入れてくれる
ような女の子しか知らないんだよね!」

楓「それすら裏があるって」


柊は妙にリアルな例をあげてニヤニヤしているが、華道で海千山千の蓮池に断定されたらもう何も言えなくなってしまう。


えぇぇ……?


もし女の子の実態が本当はアレだというのなら、俺には彼女なんて永遠にできない気がするぞ。

蓮池にだって言い返すことがほとんどできないのにそれより何倍もキツくて怖かったんだ。

ぼっちで陰キャでコミュ障で……更に自分の未来は恋人までできないのかと脅えてしまう。


梅生「大丈夫だよ、そんな子ばっかじゃないって」

楓「お前は先輩の優しさに調子こいとらんとしっかり
地に足をつけて女を見ろよ」


優しい一条先輩が慰めてくれるが蓮池の嫌味に近い
アドバイスが1番大事な気もした。


夕太「てか、雅臣三木プロでバイトしたなら芸能人の
1人や2人見たの?」

雅臣「梓先輩と……カラフルジュエリストだけかな」

夕太「じゃなくて!!女優とかモデルとか!!」

雅臣「会わなかったよ。それどこじゃなかったし」


芸能人に興味津々なのか柊はなーんだとつまらなそうに口を尖らせているが、実際のところ俺もそれは少し
だけ思ったんだよな。

三木先輩の好意で雇って貰ってる身分で公にそんな感情は出せなかったが、有名芸能人との遭遇を期待していなかったかと言えば嘘になる。


雅臣「あ、でも〝れいあ〟も三木プロ所属だったん
ですね」

梅生「へー、そうなんだ。あの子グラビア出身でしょ?」


ふとこの前見たタレント名鑑を思い出し、梓蘭世に話しかけると即座に俺と同じテレビっ子の一条先輩が話題に食いついてきた。

れいあは〝ピュア系美少女〟として今まさにブレイク中の若手女優で、日焼け跡ゼロの透き通るような肌の
白さが売り物だ。

ドラマにCMに引っ張りだこでテレビで見ない日がない。

ボブで少しキツめのぱっちり目がちょっといいなと
思っていたが、絶対にこいつらには言わないと胸に誓う。


蘭世「れいあ?あの人東京の本社の方だぜ」

雅臣「え、三木プロ東京にもあるんですか!?」

蘭世「元々は名古屋で、事業拡大して東京に移ったん
だよ。俺もあっちの事務所の方が馴染みあるわ」


確かに芸能界は東京メインだもんなと考えていると、
目敏い蓮池が左口角を上げた。


楓「何だ陰キャ、お前そいつ目当てのバイトだったんか。エメラルド代返せ」

雅臣「ち、違うって!!タレント名鑑みたられいあさんがいるから驚いただけだ!!」


俺は慌てて否定するが机の下で蓮池に脛を思い切り蹴
飛ばされて思わず飛び跳ねた。


ク、クソ野郎……!!


向かいに座るんじゃなかっとジト目で睨むがげしげしと止まらない蹴りが痛くて、いくら避けても的確に蹴り続けてきやがる。


夕太「ふーん。でもほんとに事務所に1人も女優いなかったの?」

雅臣「いだだっ……おい止めろって!じ、事務所のスタッフさんしかいなかったよ、70代ぐらいの講師の方とか」

楓「熟女好きは健在か」

雅臣「何だよそれ!!」

蘭世「うるせぇなぁ!!!一々喧嘩すんなよ!!!」


騒々しい俺たちにキレた梓蘭世は俺らの頭をぶん殴る。

その姿を見て柊と一条先輩は笑っていて、頭も足は
痛いがやっぱり久しぶりのサークルは楽しい。

この騒がしいSSCに馴染みすぎてささやかやな日常だけでは物足りなくなっている自分に苦笑してしまう。


蘭世「大体用もねぇのに事務所なんか行かねぇっての。てか夕太ってそんな芸能人興味あったっけ?」

夕太「んーん、全然。ただ雅臣にもロマンの1つや2つあったかなーってさ?」

雅臣「ロマンって……俺はバイトしにいってたんだぞ?」


柊は海外アニメのカナリアのように上目遣いの期待した目つきをしているが、そんなものあるわけがない。

初めてのバイトに必死でそれどころじゃなかったと伝えると梓蘭世がうんうんと頷いてくれていて俺が真面目に働いていたのを肯定してくれた。


梅生「でも確かにちょっと期待しちゃうかもね。芸能人とぶつかっちゃって、みたいな?」

蘭世「何言ってんだよ梅ちゃん。そんなん三木さん
じゃねぇんだから……あ、」


梓蘭世はしまったと言わんばかりに口を閉じた。


三木先輩じゃないんだから?


その言葉を聞き逃さなかった俺たちは顔を見合わせる。


蘭世「と、とにかく___」

楓「あんたそこまでバラして無言貫く気ですか?」

夕太「えー!!気になる気になる!!ミルキー先輩に
何があったのさ!!」


梓蘭世がいくら話題を逸らそうとしても逃がさんと
ばかりに2人は食いついた。



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