山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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282.【先輩たちの出し物は?】

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夕太「でんちゃん今日お稽古は?」

楓「稽古…は置いといて、1件打ち合わせしとかないといけない相手がいてね」

夕太「置いとかないでよ……って、あぁそゆこと」

楓「そういうこと」


授業が終わって部室に向かういつもの道すがら、俺は隣を歩く蓮池と柊のやり取りを横目で眺めていた。

柊は蓮池の話を直ぐに理解していて、幼馴染ならではの阿吽の呼吸を感じる。

最近の2人はどこから見ても普通の友達のようにしか思えず、ふと夏休みが始まったばかりの頃に柊が俺に漏らした本音を思い出す。



『でんちゃんと本当の友達になりたいんだ』



俺の前で弱々しく俯いていた姿に心配したが、もう大丈夫なのではないかと少し安心した。


雅臣「それなら今日のサークルは厳しそうだな」

楓「帰るわ、何か決まったらまた教えてね夕太くん」

夕太「おう!でんちゃんファイト!」


階段を足早に降りていき、手を振る蓮池の姿は軽やか
だったがどこか真剣な空気をまとっているようにも見えた。

出会った頃の蓮池は文句を言いながら華道の稽古に
向かっていたが、最近ではかなり真面目に取り組んで
いるようで家業とはいえ偉いよな。


雅臣「仕事で色々な人と話さないといけないのは大変
だな」


喋るのがあまり得意ではない自分と違って蓮池は誰を前にしても堂々とした振る舞いで、バイトを始めてからその凄さをより実感した。

俺なんか三木先輩の事務所で知らない人と話すだけでもかなり気疲れするのに……。


夕太「だよな。でも今回はねー、その仕事相手に
ちゃんときっちり話しとかないとなの」


柊は妙に真面目な顔をしながら目を閉じてうんうんと
頷いているが、きっと蓮池から今日の打ち合わせ相手が重要な取引先だとか教えて貰っているんだろう。


雅臣「柊、今日のサークルって___」

蘭世「あーーーーダルかった」


俺が今日は何をするのか相談しようとすると同時に聞き慣れた声が後ろから飛んできた。

振り返ると案の定梓蘭世で、本気でだるそうな顔で階段を降りてくる。

隣には一条先輩がのんびりした調子で歩いていて、
対照的な2人は妙に絵になっていた。


蘭世「大体3年が使うもんを何しに俺らが設置しないかんの?」

梅生「来年は俺らもやって貰う側だからいいじゃん」


俺たちがいるのにまだ気づいていない梓蘭世は階段の
手すりを軽く叩きながら文句を垂れ、一条先輩が穏やかな声で返す。


夕太「梅ちゃん先輩!!」

梅生「柊?藤城も」


2人を見つけた柊が弾んだ声を上げながら階段を二段
飛ばしで駆け寄った。

勢い余って一段踏み外しやしないかと心配するが、先輩2人の袖を軽く引っ張りながら3人で階段をゆっくり降りてくる。


夕太「何してたの?」

梅生「明日3年が説明会で使う椅子を体育館に並べてきたんだよ」

雅臣「説明会?」


俺が思わず口を挟むと、階段の踊り場で一瞬足を止めた梓蘭世が面倒くさそうに鼻を鳴らした。


蘭世「文化祭のな。暑いから部室で話そうぜ」


そのまま階段を降りきり、俺たちはぞろぞろと部室へ向かった。



______

_______________



部室に着くと、俺たちは椅子に腰を下ろし直ぐに話題が文化祭のことに移った。


夕太「え!屋台とか飲食って3年優先なの!?」

蘭世「おう、クラスの出し物で喫茶とか食事処ができんのは基本3年だけなんだよな」

夕太「屋台とか、飲食物全般も?やっぱ何?衛生面とかそれ系?」


柊の言う通りらしく、2人は頷いた。

明日開かれるという体育館での説明会は、文化祭の食品衛生関連のものらしい。

父兄だけでなく他校からもたくさん人が来るわけだし、もし食中毒とかになったら大変だもんな。

俺たちのクラスでも最初展示ではなく喫茶店の案が出たが、担任が1年生はできないと言っていたのはそういう事だったのかと気づく。


梅生「3年の屋台はね、今年はチュロスとクレープがあるって噂なんだ。椿先輩がいるクラスは絶対行かないと……」


だが一条先輩は説明会なんてどうでもいいとばかりに
真剣に文化祭当日の甘味情報を喋り始めた。


夕太「え!サクサク先輩何組だっけ!?」

蘭世「どーせ激混みじゃね?行くのダルい___」

梅生「蘭世は誘ってないよ」


ふんとそっぽ向く一条先輩だが、椿先輩ってあの生徒会の不思議な雰囲気の……。

夏休みに入る前生徒会室で手作りのお菓子を出して
貰ったがとても美味しかった覚えがある。

柊が生徒会室に教室の申請許可を貰いに行く度にあの人からおやつを戴いていたくらいだ。

椿さんが作るのならきっと行列ができるに違いないと
俺も当日が楽しみになった。


雅臣「ところで先輩たちのクラスは何をやるんですか?」

梅生「俺らのクラスはカジノだよ」

夕太「カジノ!?」

蘭世「ダーツとかポーカーとか、4卓くらい用意してさ?勝った分のコインで景品と交換できんの」


景品は色々あるらしいが、先輩のクラスの目玉は3年の屋台の割引券らしい。

50パーセントオフ券も用意するそうで、3年の何クラスかの屋台や喫茶店と連携すると聞いて山王は部活で
縦の繋がりが強いからこそできることだよなと思う。


夕太「えー!楽しそう!絶対行く!」

蘭世「オムそばととんぺい焼き、あと喫茶店やるクラスで使えるクーポンやるから3人で遊びに来いよな」


屋台で食べたことなんて大須やプール以来なので今から文化祭が楽しみだと浮かれていると、


三木「お疲れ」


そのタイミングで三木先輩が顔をのぞかせた。


三木「すまない、今日サークルに参加できないが置いてある荷物だけ取りに来た」

雅臣「そうなんですね、お疲れ様です」

夕太「ねぇー、ミルキー先輩のクラスは文化祭何やるの?」

三木「俺らのクラスは喫茶店だ。あとお前ら、楽しみにしてるのはいいが歌もしっかり練習しとけよ?」

蘭世「うわ、そうじゃん」


久しぶりのこの緩い感じを楽しんでいて頭から抜け落ちがちだが、メインは文化祭2日目の部活ごとの発表なわけで……。

さすがに通し練習をもう2回くらいして合わせておかないといけないよなと部長として立ち上がる。


雅臣「明日あたりに文化祭までの練習日程を今一度決めましょう!それと、騎馬戦の練習とかも……」

蘭世「あー、それもしないとだな」

夕太「やること意外とあるんだよなー…え、てか雅臣
衣装作り終わった?」


柊に衣装の出来具合を聞かれた瞬間、俺は固まってしまった。

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