332 / 394
282.【先輩たちの出し物は?】
しおりを挟む夕太「でんちゃん今日お稽古は?」
楓「稽古…は置いといて、1件打ち合わせしとかないといけない相手がいてね」
夕太「置いとかないでよ……って、あぁそゆこと」
楓「そういうこと」
授業が終わって部室に向かういつもの道すがら、俺は隣を歩く蓮池と柊のやり取りを横目で眺めていた。
柊は蓮池の話を直ぐに理解していて、幼馴染ならではの阿吽の呼吸を感じる。
最近の2人はどこから見ても普通の友達のようにしか思えず、ふと夏休みが始まったばかりの頃に柊が俺に漏らした本音を思い出す。
『でんちゃんと本当の友達になりたいんだ』
俺の前で弱々しく俯いていた姿に心配したが、もう大丈夫なのではないかと少し安心した。
雅臣「それなら今日のサークルは厳しそうだな」
楓「帰るわ、何か決まったらまた教えてね夕太くん」
夕太「おう!でんちゃんファイト!」
階段を足早に降りていき、手を振る蓮池の姿は軽やか
だったがどこか真剣な空気をまとっているようにも見えた。
出会った頃の蓮池は文句を言いながら華道の稽古に
向かっていたが、最近ではかなり真面目に取り組んで
いるようで家業とはいえ偉いよな。
雅臣「仕事で色々な人と話さないといけないのは大変
だな」
喋るのがあまり得意ではない自分と違って蓮池は誰を前にしても堂々とした振る舞いで、バイトを始めてからその凄さをより実感した。
俺なんか三木先輩の事務所で知らない人と話すだけでもかなり気疲れするのに……。
夕太「だよな。でも今回はねー、その仕事相手に
ちゃんときっちり話しとかないとなの」
柊は妙に真面目な顔をしながら目を閉じてうんうんと
頷いているが、きっと蓮池から今日の打ち合わせ相手が重要な取引先だとか教えて貰っているんだろう。
雅臣「柊、今日のサークルって___」
蘭世「あーーーーダルかった」
俺が今日は何をするのか相談しようとすると同時に聞き慣れた声が後ろから飛んできた。
振り返ると案の定梓蘭世で、本気でだるそうな顔で階段を降りてくる。
隣には一条先輩がのんびりした調子で歩いていて、
対照的な2人は妙に絵になっていた。
蘭世「大体3年が使うもんを何しに俺らが設置しないかんの?」
梅生「来年は俺らもやって貰う側だからいいじゃん」
俺たちがいるのにまだ気づいていない梓蘭世は階段の
手すりを軽く叩きながら文句を垂れ、一条先輩が穏やかな声で返す。
夕太「梅ちゃん先輩!!」
梅生「柊?藤城も」
2人を見つけた柊が弾んだ声を上げながら階段を二段
飛ばしで駆け寄った。
勢い余って一段踏み外しやしないかと心配するが、先輩2人の袖を軽く引っ張りながら3人で階段をゆっくり降りてくる。
夕太「何してたの?」
梅生「明日3年が説明会で使う椅子を体育館に並べてきたんだよ」
雅臣「説明会?」
俺が思わず口を挟むと、階段の踊り場で一瞬足を止めた梓蘭世が面倒くさそうに鼻を鳴らした。
蘭世「文化祭のな。暑いから部室で話そうぜ」
そのまま階段を降りきり、俺たちはぞろぞろと部室へ向かった。
______
_______________
部室に着くと、俺たちは椅子に腰を下ろし直ぐに話題が文化祭のことに移った。
夕太「え!屋台とか飲食って3年優先なの!?」
蘭世「おう、クラスの出し物で喫茶とか食事処ができんのは基本3年だけなんだよな」
夕太「屋台とか、飲食物全般も?やっぱ何?衛生面とかそれ系?」
柊の言う通りらしく、2人は頷いた。
明日開かれるという体育館での説明会は、文化祭の食品衛生関連のものらしい。
父兄だけでなく他校からもたくさん人が来るわけだし、もし食中毒とかになったら大変だもんな。
俺たちのクラスでも最初展示ではなく喫茶店の案が出たが、担任が1年生はできないと言っていたのはそういう事だったのかと気づく。
梅生「3年の屋台はね、今年はチュロスとクレープがあるって噂なんだ。椿先輩がいるクラスは絶対行かないと……」
だが一条先輩は説明会なんてどうでもいいとばかりに
真剣に文化祭当日の甘味情報を喋り始めた。
夕太「え!サクサク先輩何組だっけ!?」
蘭世「どーせ激混みじゃね?行くのダルい___」
梅生「蘭世は誘ってないよ」
ふんとそっぽ向く一条先輩だが、椿先輩ってあの生徒会の不思議な雰囲気の……。
夏休みに入る前生徒会室で手作りのお菓子を出して
貰ったがとても美味しかった覚えがある。
柊が生徒会室に教室の申請許可を貰いに行く度にあの人からおやつを戴いていたくらいだ。
椿さんが作るのならきっと行列ができるに違いないと
俺も当日が楽しみになった。
雅臣「ところで先輩たちのクラスは何をやるんですか?」
梅生「俺らのクラスはカジノだよ」
夕太「カジノ!?」
蘭世「ダーツとかポーカーとか、4卓くらい用意してさ?勝った分のコインで景品と交換できんの」
景品は色々あるらしいが、先輩のクラスの目玉は3年の屋台の割引券らしい。
50パーセントオフ券も用意するそうで、3年の何クラスかの屋台や喫茶店と連携すると聞いて山王は部活で
縦の繋がりが強いからこそできることだよなと思う。
夕太「えー!楽しそう!絶対行く!」
蘭世「オムそばととんぺい焼き、あと喫茶店やるクラスで使えるクーポンやるから3人で遊びに来いよな」
屋台で食べたことなんて大須やプール以来なので今から文化祭が楽しみだと浮かれていると、
三木「お疲れ」
そのタイミングで三木先輩が顔をのぞかせた。
三木「すまない、今日サークルに参加できないが置いてある荷物だけ取りに来た」
雅臣「そうなんですね、お疲れ様です」
夕太「ねぇー、ミルキー先輩のクラスは文化祭何やるの?」
三木「俺らのクラスは喫茶店だ。あとお前ら、楽しみにしてるのはいいが歌もしっかり練習しとけよ?」
蘭世「うわ、そうじゃん」
久しぶりのこの緩い感じを楽しんでいて頭から抜け落ちがちだが、メインは文化祭2日目の部活ごとの発表なわけで……。
さすがに通し練習をもう2回くらいして合わせておかないといけないよなと部長として立ち上がる。
雅臣「明日あたりに文化祭までの練習日程を今一度決めましょう!それと、騎馬戦の練習とかも……」
蘭世「あー、それもしないとだな」
夕太「やること意外とあるんだよなー…え、てか雅臣
衣装作り終わった?」
柊に衣装の出来具合を聞かれた瞬間、俺は固まってしまった。
20
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる