山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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302.【借り人競走】

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大玉転がしを終えた2年生が息を切らして戻ってきた が、2人とも額に汗が光りジャージの裾が少し乱れている。

梓蘭世がゼーゼーと肩で息をする姿に俺たちは笑いを
堪えきれなくなった。


梅生「蘭世ってほんとセンスないよね」

蘭世「いやいやいやいや!?よく言えたな!?」


一条先輩がからかうようにそう言うと梓蘭世は即座に反撃するが、結局2人の大玉転がしはダントツの最下位で、玉がほとんど進まないせいで途中で切り上げられてしまったのだ。

2人が必死に玉を押す姿が今思い返してもおかしくて、俺の口元が自然と緩む。


体育祭ってこんなに楽しいものだったのか……。


中学でも誰かを応援することなんて特になく空いた時間は黙って本を読んでいた俺にとって、こうして先輩
たちが出る競技を応援するの新鮮でとても心地良かった。


楓「相性良いんだか悪いんだか……」

蘭世「いいに決まってんだろ!!な?」


蓮池の呆れた声に梓蘭世が勢いよく一条先輩に同意を
求めるが先輩はサラッと躱してしまう。


梅生「さぁね。___あれ? 三木先輩は?」


梓蘭世を無視したまたキョロキョロと周囲を探している一条先輩に、


雅臣「あぁ、クラスの人と話すついでに借人競走に
向かうって言ってました」


俺が三木先輩の行方を答えると皆の視線が少し遠くの
アリーナの方へ向く。

三木先輩はさっきクラスメイトに呼ばれて談笑しながらアリーナへと向かっていったが何となくその姿が新鮮だった。

友達とかそう呼ばれる関係が仕事人間の先輩にも
ちゃんとあるんだな……。

いや、三木先輩みたいな人望の塊に友達がいないわけないんだが。

そう自分でツッコミを入れているとふと桂樹先輩の顔が頭に浮かんだ。

………本当は桂樹先輩が呼びに来るのかと思ったんだ。

顔の広い桂樹先輩はクラスにも部活にも行き来しているのかこっちにはほとんど顔出さなかった。

仕方のないこととはいえ少し寂しく感じていると、


蘭世「おい雅臣」

雅臣「へ!?は、はい!」

蘭世「どしたよ」


突然、梓蘭世に肩を叩かれ驚いて思考が吹き飛んだ。

目の前で怪訝そうに俺を見下ろす梓蘭世の綺麗な顔を
見ていたら桂樹先輩の顔は直ぐに頭から消えてしまう。


雅臣「いや……すみません、何でもないです。先輩こそ
どうしました?」

蘭世「ああ、タピオカなんだけどさ。いつ行くかなって」

雅臣「……タピオカ?」

蘭世「花火大会ん時約束しただろ。俺が奢るって」


忘れたのか?と片眉を上げる梓蘭世に慌てて首を横に
振るが、正直完全に忘れていた。

……というか、あまり本気にしてなかった。

花火大会の後の梓蘭世はすぐにモデルの仕事に移り忙しそうだったし、そんなのは軽い口約束みたいなものだと思っていた。


蘭世「また仕事入る前にと思ってさ」

楓「こいつは___」

雅臣「はいはい!俺は暇なんでいつでも大丈夫です!!またチャットで空いてる日を送っていいですか」


蓮池に暇人だのあーだこーだと横槍を入れられる前に
俺が素早く口を開くとその姿に梓蘭世はふははと声を
上げて笑う。


蘭世「ん、待っとるわ」


や、やった……。

梓蘭世と2人きりでタピオカだなんて……。

クレープ、プールと続きものすごく貴重な体験になり
そうだと今から高鳴る胸を無理やり押さえ込んだ。




______

_______________




「先輩ー!!!!!」

「ファイトです先輩!!!!」

「俺ここにいますー!!!!」


体育会系ならではのむさ苦しい応援が飛び交う中、3年がアリーナへと入場する。

他の3年の先輩とはそこまで関わりがないが明らかに
陽キャと呼ばれるタイプばかりが集結していてアリーナへの声援は更に熱を帯びる。


梅生「柊、食べるの一旦やめた方がいいよ」

夕太「え、なんで?」


一条先輩はそれまで黙々とドーナツを口に詰め込んでいたがアリーナの3年生の入場と同時におやつ袋の封を閉じた。


蘭世「ガチ競技だからなー、該当してたら韓ドラレベルで引っ張られるぞ」

雅臣「ええ…?」


いくら借り人競走とはいえそんな簡単に該当するとは思えない。

のんびり観覧してればいいんじゃないかと思っていたが梓蘭世の顔が甘いと物語っていた。


蘭世「マジだって。もし該当してんのにトロかったら
殺されるぞ」

楓「細かいルールとかあるんですか?」

梅生「えっとね___」


借り人競走のルールは本当にシンプルで、お題に該当する人を見つけて一緒にゴールまで走るだけらしい。

それをゴールにいる生徒会がジャッジして合ってるか
どうかを判断する。

ただ会場のブーイングなども判断材料になるらしく、
違うと認定されたらまた新しい人を連れてこないといけないと先輩たちが教えてくれた。


夕太「えー?じゃあクルクル頭の金髪のイケメンって
お題を三木先輩が引いたら俺が連れてかれるってこと?」


い、イケメン……?

柊はどちらかといえば可愛い系に該当する気がして首を傾げていると蓮池がニヤニヤしながら近づいてきた。


楓「親金代表とかだったら間違いなくお前だな」

雅臣「それはお前もだろ!!」


すかさず馬鹿みたいな横槍を入れてくるのに対してそんな変なお題があるわけないだろと睨みつける。


夕太「てか、そんなん人脈勝ちゲーじゃん!」

梅生「うん、だから毎年めっちゃ盛り上がるんだよ」

蘭世「てかこれに三木さん出てんのマジウケる。何であの人出とんだ」


梓蘭世が笑いながらアリーナを見渡すのでつられて俺も目を凝らすが直ぐに見つかったのは金髪を靡かせた
桂樹先輩だった。

ただのジャージなのにやけに似合っていて、そこだけ風が靡いているかのようで本当にかっこいい。

ここが共学だったら間違いなく黄色い声援が飛び交う
はずなのだが、生憎野郎しかいないこの空間ではけたたましい雄叫びしか上がらない。


夕太「あれジュリオン先輩じゃない?」

蘭世「うわほんとだ。桂樹さん無双だろこれ」

楓「浅く広くが役立つ時ですね」

雅臣「な、何てこと言うんだよ!!」


蓮池の酷い言葉に思わず俺は声を上げるが、確かにこの勝負は桂樹先輩が1番有利かもしれない。

あの明るさとカッコ良さで頼まれたら例え桂樹先輩を
知らなくとも断れる人なんていないだろうな……。

アリーナで楽しそうに笑う桂樹先輩をじっと見つめて
いると柊が急に俺を肘でつついてきた。


夕太「父親がカニ漁に出てる奴だったら雅臣だね」

楓「異世界転生に憧れてる奴でもお前だよ」

夕太「えーそんなこと言ったらムーディ負山似の人なら雅臣だよ?」

楓「夕太くん全然似てないよ、何回も言うけどこいつは美川憲二なんだよ」

雅臣「う、うるさいぞお前ら!!!!」


黙って聞いていたらロクでもないお題ばかり出しやがって……!!!

そんな馬鹿なお題があってたまるかと睨みつけるが梓蘭世は腹を抱えて笑っている。

どいつもこいつもとギロと睨みつけた瞬間、ピストルの鋭い音が体育館に響き渡り3年生たちが一斉にお題を取りに走り出す。

ワッと上がる歓声に俺たちもアリーナで走る先輩たちを応援し始めた。





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