8 / 394
7.【相手は選べ】
しおりを挟む___確信した。
蓮池は確実に、俺に悪意を持っていると。
コスプレだのパチモンだのなんとも分かりやすく俺を煽っているが、何が気に入らなくてそんなに突っかかってくるのか。
何度も言うが今日初めて会ったんだぞ?
初めて会う相手に気に入らないも何もないだろう。
やはり一言言ってやらないと気が済まない。
そんな馬鹿げた衝動が駆け巡る。
夕太「それにしてもさぁ、運命っていうか?ねー?どうやってあの先輩に話しかけようか」
楓「重症。恋じゃんもう」
ため息をつく蓮池に独り言のように口が出た。
度重なる挑発に無視するという決意は脆くも崩れ去った。
雅臣「…ハッ。散々俺の髪をいじってたくせに…多様性はお前じゃないか、柊」
憧れの先輩だか知らないが俺から見れば柊の方が充分多様性だ。
蓮池も自分の友達の多様性は許せて人の多様性は許さない矛盾に気づけよ。
いや、俺は別に多様性ではないのだが。
もし俺が本当に多様性とかで向けられる悪意に病んでどうにかなったら、お前は責任が持てるのか?
楓「は?お前のかまってちゃんで伸ばしてる汚ねえ髪と、夕太くんのピュアな心一緒にすんなよ」
雅臣「誰がかまってちゃんだよ!髪だってもう切ろうと__」
横柄に脚を組んで椅子に座っていた蓮池は俺の話を遮るよう鼻で笑ったかと思うと、立ち上がって目の前に来た。
デカい体で威圧しにわざわざこっちに来るな。
俺が臨戦態勢を取るより早く蓮池は胸の内ポケットから何かを取り出し、机の上に無造作に置いた。
教室に硬質で重い音が響く。
楓「貸すよ。どうぞ」
ガシャン、と置かれたハサミと蓮池の顔を交互に見る。
鉄製のハサミ……?
何しにこんな物騒なもん持ち歩いてんだ?
小夜「父兄の皆様、お子様の教室を確認した後にもう一度体育館の方へお戻り………」
その時、遠くに先程の担任の声が聞こえた。
式を終え次第に廊下が騒がしくなってきた。
教室へ近づいてくる生徒や父兄の足音と、俺の心臓の音が入り乱れる。
冷静を装いたいのに、感情がぐちゃぐちゃになって剥き出しになる。
普段の俺ならこんなに挑発に乗らないのに。
いやそもそもこんな挑発を受けることなんてないのだが。
夕太「でんちゃん、仕舞いなよ」
何の悩みもなく楽しそうに話す柊の声も。
呑気に入学式に参加してる奴らも。
当たり前に両親が来ることも。
今現在ずっと振り回してくるこいつも。
自分の運の悪さを憎むよう舌打ちし、ドンと机に両手をついて立ち上がった。
俺が何をしたっていうんだよ。
目の前に差し出されたハサミを右手で取り、重なった苛立ちをぶつけるかのように結った髪を反対の手で引っ掴む。
自分でも驚くほどに、躊躇はなかった。
夕太「おい!!」
伸ばしてきた髪が床に落ちていく。
蓄積された苛立ちは全て髪と共に無理やり切り落とした。
久しぶりに軽くなった頭をガシガシと掻く。
雅臣「ほらよ、これで満足かよ」
点々と床に散らばった髪が、あの病室と連鎖する。
勝手に始めたことだった。
終わらせ方がわからなかったんだ。
雅臣「…呆気ねえな」
夕太「何やってんだよ!!」
元々大きな目を鳥のように見開き、慌てて俺のそばに寄ろうとする柊を蓮池が手で制した。
楓「ほらな、そうやって短気起こしてドヤ顔するところがかまってちゃんだって言ってんだよ」
雅臣「…っ、お前…」
吐かれた言葉に怒りが湧き上がり声が上擦る。
夕太「でんちゃん煽るな!お前も乗るなよ!」
柊が慌てて諌めようとするが、今の俺には売られた喧嘩を買うことしか頭になかった。
掴みかからんばかりの勢いで距離を詰めると、蓮池の眉が一瞬歪んだ。
機嫌が更に急降下したのが見て取れる。
そうだな。こんな奴、話して丸め込めるわけがない。
驚かせる気持ちも込めて、手にしたハサミを蓮池に当たらないように投げ捨てた。
鬱屈した空気を断ち切るような金属音に、胸がすく思いがした。
楓「イキってんなあ」
しかし、蓮池は全く動じもしなかった。
それどころか少し目を細めるようにしてじっと俺見つめたまま、ニヤリと唇を歪めた。
落ちたハサミを拾い上げながら、シャキン、と数回音を鳴らす。
楓「こういうのはな、」
相手の異常を察知し硬直した身体を引こうとした瞬間、
楓「当てなきゃ意味ねえんだよ!」
蓮池はいきなり俺の前髪を鷲掴にし、顔を上げさせ刃先を俺の方に向けた。
━━━━━━━━━━━━━━━
【後書き】
読んでいただきありがとうございます。
お気に入り登録や感想、いいねが励みとなりますため、この作品が面白いと思った方はぜひ!よろしくお願いいたします!
また、小説家になろうの方では先読み可能ですため、こちらもぜひよろしくお願いいたします!
6
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
嘘をついたのは……
hamapito
BL
――これから俺は、人生最大の嘘をつく。
幼馴染の浩輔に彼女ができたと知り、ショックを受ける悠太。
それでも想いを隠したまま、幼馴染として接する。
そんな悠太に浩輔はある「お願い」を言ってきて……。
誰がどんな嘘をついているのか。
嘘の先にあるものとはーー?
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
