10 / 394
9.【廊下へ】
しおりを挟む小夜「君達はなんで数十分で揉めれるの?若さ?ねえ若さゆえなの?」
1組の教室を出て小言を言う担任の後を俺、柊、蓮池の順でついて行くものの、後ろの2人はやはりうるさかった。
楓「あのジジイ耄碌こいてやがる」
夕太「でんちゃんのじいちゃんはピンシャンしてるよ」
楓 「俺が食べたうどんは、6玉だってのに人をブタみたいに言いやがって…」
夕太「5玉以上からはもう何玉でも同じだよ」
本当に何も気にせずベラベラと話し続ける2人を無視し、少し離れた階段を下りると、踊り場で担任は立ち止まった。
今度こそ怒鳴られるか、職員室まで連行されるかと思った。
教師は呆れてるというよりかは、壁に手を付き半笑いで俺たちに背を向け独り言を言っている。
小夜「いや~…せんせーって大変なのね、今日1日どころかまだ半日も経ってねーのに痛感したわ」
新任なんだろうか?
若くて新任だと、あまり頼りにならないのが相場だろう。
その頼りなさついでにあまり叱らないでくれたらいいな、と思った矢先に、振り向いた担任は急に薄い唇を少し歪めて冷淡に笑った。
小夜「で、柊。鋏出せよ」
夕太「な、なんのこと?」
鋏、見られていたのか。
嘘を言わせる隙のない気配と、先程までのフランクさはどこにもない。
近寄りがたい張りつめた空気を一瞬で身に纏う担任に、後ろの蓮池も流石に息を潜めている。
言葉にならない緊張が走る中で、式典から退場させられた時に感じた直感が当たっていたのだと嫌でも分かった。
小夜「んー、」
担任は未だすっとぼける柊に痺れを切らしたのか、柊の上着のポケットへと手を突っ込み、あったと鋏を取り出した。
小夜「この花鋏、蓮池のだろ」
そう言って後ろの蓮池にハサミを手渡す。
蓮池「…俺のじゃないですよ」
あれ花鋏、っていうのか。
鉄製でやけに重たいし、というか何でこんな鋏を蓮池が持ってるんだ?
それに何故、担任は一目でそのハサミの持ち主が分かったのだろうか。
にっこりと微笑む蓮池に、担任は喉の奥で笑った。
小夜「蓮池流のお坊ちゃんにはわからないかも知れないが、刃物を見ただけでパニック起こして死のうとする奴とかいるんだよ。お前ら物騒なもんは絶対に出すな」
花鋏を受け取ろうとしない蓮池の胸ポケットに無理やり押し込め、語る担任の威圧感に息が詰まる。
俺は口の乾きを感じながらも、己の正当性を伝えようとした。
雅臣「先生、でも俺はむしろ被害者って言うか…」
小夜「藤城、そういや短時間で随分さっぱりしたな。ところで蓮池がお前の髪を切り落としたのか?それとも鋏持って脅されたのか?」
雅臣「いや…それは…」
蓮池「やだなぁ、そんなことしてませんよ。こいつが自分で短気起こして切ったんです」
俺の代わりに答える蓮池に、辛抱ならなくなる。
雅臣「鋏を前に置いてきたのはお前だろ!」
小夜「藤城、お前が自分で髪を切ったのか、それとも蓮池に無理やり切らされたのかどっちなんだよ」
雅臣「…...それは」
確かにどちらなのかと言われれば、無理矢理脅されてとかではない。
雅臣 「.........自分で切りました」
小夜「そ、ならいいな」
は?
全然、良くねぇだろうが。
もっと蓮池に怒ってくれよと思うも、よく考えれば蓮池の挑発に乗り、勝手に短気を起こしたのは紛れもない自分だった。
それを言えば、酷く自分がかっこ悪い気がした。
結局冷静でいられなかった自分が悪かったのだ。
俯く3人を前に、担任は努めて明るく声を出す。
小夜「高校は退学あるからなー」
夕太「…はーい。皆もう二度としません」
舌打ちする蓮池と何も言えない俺に代わるかのように、柊が返事をした。
小夜「じゃ、ここ立ってろよ。次うるさくしたら本当に退学にするからね。30分位したら戻ってこい」
楓「いい迷惑だよほんと」
雅臣「ふざけるな、大体お前が...」
独りごちる蓮池と怒りが勝り言い返そうとする俺の間に担任が入り、2人の肩を抱いて告げた。
小夜「退学、なりたくないよな?」
にっこりと笑う教師に、もう言葉は出なかった。
巻き込まれただけなのに。
どうしても愚痴のような思いが渦巻く中、
小夜「いやほんとに初担任なんだから勘弁しろってー。頼むわ、ほんと。次呼びに来たらしこたま怒られたみたいな感じで教室に戻れよ?いいか、わかったな」
ひらひらと手を振り、歩き出す教師の後ろ姿を見ることしかできなかった。
6
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる