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34.【鬼まんじゅうを知っているか?】
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山王生に一本道と呼ばれる、校門から覚王山駅までの緩やかな坂道を3人で歩く。
柊と一条さんは俺の前に2人並んで歩いていて、柊が相変わらずよく動く口でペラペラと話しかけている。
先程まで暗く落ち込んでいた一条さんの表情も柊の勢いにつられて笑顔が見え始めたので安堵した。
夕太「あ!!」
もうすぐ駅前の交差点という所で柊が立ち止まった。
夕太「鬼まんじゅう買ってきてって言われてたんだ」
……鬼饅頭?
なんだその硬そうな饅頭は。聞いたことがないぞ。
梅生「松花堂の?美味しいよねあそこの鬼まんじゅう。俺も買っていこうかな」
どうやら鬼饅頭を知らないのは俺だけなのか?
聞いたことのない、名前から想像もつかない饅頭に首を傾げていると一条先輩が俺を見てあ、そうかと声を上げる。
梅生「藤城、もしかして東京に鬼まんじゅうない?」
夕太「え!嘘!!鬼まんじゅうないの!?」
その正体は何なのかさっぱりわからないが、今まで一度も聞いたことがないから東京には存在しない気がする。
軽く首を横に振ると、
夕太「じゃあ一緒に行こう、鬼まんじゅうを教えてあげる」
ふっふっと笑う柊を見て別にお前が作ってるわけでもないだろうと思うが、鬼まんじゅうがどういう物なのかが少し気になる。
こっちこっちと手招く柊の後に着いて3人で交差点を渡った。
______________________
雅臣「…鬼?」
夕太「良かった!今日はまだ売り切れてなかった!雅臣、これが鬼まんじゅう」
狭い店内は意外と混みあっていて、売り切れるくらい人気なのかとショーケースの中を見るも、想像と全く違う饅頭に更に首を傾げた。
柊が指差した鬼まんじゅうは黄色くてサツマイモ丸出しで、饅頭というよりかは蒸し芋…蒸しパン…に近い感じだが、何とも言えないビジュアルだった。
中に餡子は入っていないのか?
ごつごつしているからこのネーミングになったのか分からないが、確かに初めてみる形だ。
東京で見たことは一度もない。
梅生「ふふ、イメージと違った?」
雅臣「はい…これはどういう…?」
梅生「モチモチして美味しいんだよ。俺も4つ買っていこう」
柊は家族の分なのか、10個はいるよなとブツブツ言いながら注文に行ってしまう。
それに続いて一条先輩も並んでいるが、鬼まんじゅうの正体を知ることが出来て満足した俺は外に出て待つことにした。
外からショーケースを見ると鬼まんじゅう以外にも普通の饅頭やわらび餅も売っている。
至って普通の饅頭屋だが名古屋にはこんな食べ物があるんだな。
…そういえば、名古屋に引っ越してきたというのにまだ何も名古屋名物を食べていない。
味が濃かったり、味噌のイメージだが、実際名古屋は何が美味しいんだろう。
ぼんやりしながら2人を待つこと数分。
夕太「雅臣お待たせー!」
ガサガサと袋を抱えて柊と一条さんが店から出てきた。
柊は結局何個買ったのか分からないが、レジ袋の大きさからたくさん買ったのが分かる。
梅生「はい、藤城」
雅臣「え?」
一条さんが俺に袋を手渡した。
中を覗くと鬼まんじゅうが入っていて、驚いてまじまじと見返すと、
梅生「__さっきは変な事言ってごめん」
そう言って微笑む一条先輩を見て、言葉が出なかった。
変なことって……
俺が蓮池なんかと仲良くなれない、と勝手に怒っただけで一条さんは別に何も悪くないのに。
梅生「それから、いつも庇ってくれてありがとう。……でも蘭世は悪くないんだよ。キツく見えるかもしれないけど、あぁ見えて情が深くてさ。……それに本当に俺が悪いんだ」
記憶の中にあるものを探すかのような目をした一条さんの表情は酷く儚げだった。
それと同時に、俺の拙い言葉や態度でも、この人を庇おうとしている事が伝わっていた事に少し安堵する。
梅生「それに…蘭世に言えないことがたくさんある」
そう言って一条先輩はまた悲しい顔をして空を見据えた。
どうしていつもこんな顔ばかりするんだろう。
先輩なんだからもっと偉そうにしてればいいのに…
いや、こんな些細な事で俺に鬼まんじゅうを買ってくれる程優しいこの人にそんな事ができるわけがないか。
気まずい沈黙が落ち、2人きりの時に上手く出来なかったがやっぱりこの人を元気づけたくて、今度こそと言葉を選び口を開く。
雅臣「そんなの当たり前ですよ。言えない事の1つや2つ…誰だってあるし、俺も思ったこと言えない時とかあるし……」
それでもやはり俺の下手な慰めに、一条先輩は目を見開くと、ほどなく小さく呟いた。
梅生「そうだね。本当の事って言いづらいよね。……藤城ありがとう、柊もまた明日」
夕太 「……梅ちゃん先輩バイバイ」
ひらひらと手を振り駅に向かって歩く一条先輩の寂しげな背中を、柊と2人で見送った。
柊と一条さんは俺の前に2人並んで歩いていて、柊が相変わらずよく動く口でペラペラと話しかけている。
先程まで暗く落ち込んでいた一条さんの表情も柊の勢いにつられて笑顔が見え始めたので安堵した。
夕太「あ!!」
もうすぐ駅前の交差点という所で柊が立ち止まった。
夕太「鬼まんじゅう買ってきてって言われてたんだ」
……鬼饅頭?
なんだその硬そうな饅頭は。聞いたことがないぞ。
梅生「松花堂の?美味しいよねあそこの鬼まんじゅう。俺も買っていこうかな」
どうやら鬼饅頭を知らないのは俺だけなのか?
聞いたことのない、名前から想像もつかない饅頭に首を傾げていると一条先輩が俺を見てあ、そうかと声を上げる。
梅生「藤城、もしかして東京に鬼まんじゅうない?」
夕太「え!嘘!!鬼まんじゅうないの!?」
その正体は何なのかさっぱりわからないが、今まで一度も聞いたことがないから東京には存在しない気がする。
軽く首を横に振ると、
夕太「じゃあ一緒に行こう、鬼まんじゅうを教えてあげる」
ふっふっと笑う柊を見て別にお前が作ってるわけでもないだろうと思うが、鬼まんじゅうがどういう物なのかが少し気になる。
こっちこっちと手招く柊の後に着いて3人で交差点を渡った。
______________________
雅臣「…鬼?」
夕太「良かった!今日はまだ売り切れてなかった!雅臣、これが鬼まんじゅう」
狭い店内は意外と混みあっていて、売り切れるくらい人気なのかとショーケースの中を見るも、想像と全く違う饅頭に更に首を傾げた。
柊が指差した鬼まんじゅうは黄色くてサツマイモ丸出しで、饅頭というよりかは蒸し芋…蒸しパン…に近い感じだが、何とも言えないビジュアルだった。
中に餡子は入っていないのか?
ごつごつしているからこのネーミングになったのか分からないが、確かに初めてみる形だ。
東京で見たことは一度もない。
梅生「ふふ、イメージと違った?」
雅臣「はい…これはどういう…?」
梅生「モチモチして美味しいんだよ。俺も4つ買っていこう」
柊は家族の分なのか、10個はいるよなとブツブツ言いながら注文に行ってしまう。
それに続いて一条先輩も並んでいるが、鬼まんじゅうの正体を知ることが出来て満足した俺は外に出て待つことにした。
外からショーケースを見ると鬼まんじゅう以外にも普通の饅頭やわらび餅も売っている。
至って普通の饅頭屋だが名古屋にはこんな食べ物があるんだな。
…そういえば、名古屋に引っ越してきたというのにまだ何も名古屋名物を食べていない。
味が濃かったり、味噌のイメージだが、実際名古屋は何が美味しいんだろう。
ぼんやりしながら2人を待つこと数分。
夕太「雅臣お待たせー!」
ガサガサと袋を抱えて柊と一条さんが店から出てきた。
柊は結局何個買ったのか分からないが、レジ袋の大きさからたくさん買ったのが分かる。
梅生「はい、藤城」
雅臣「え?」
一条さんが俺に袋を手渡した。
中を覗くと鬼まんじゅうが入っていて、驚いてまじまじと見返すと、
梅生「__さっきは変な事言ってごめん」
そう言って微笑む一条先輩を見て、言葉が出なかった。
変なことって……
俺が蓮池なんかと仲良くなれない、と勝手に怒っただけで一条さんは別に何も悪くないのに。
梅生「それから、いつも庇ってくれてありがとう。……でも蘭世は悪くないんだよ。キツく見えるかもしれないけど、あぁ見えて情が深くてさ。……それに本当に俺が悪いんだ」
記憶の中にあるものを探すかのような目をした一条さんの表情は酷く儚げだった。
それと同時に、俺の拙い言葉や態度でも、この人を庇おうとしている事が伝わっていた事に少し安堵する。
梅生「それに…蘭世に言えないことがたくさんある」
そう言って一条先輩はまた悲しい顔をして空を見据えた。
どうしていつもこんな顔ばかりするんだろう。
先輩なんだからもっと偉そうにしてればいいのに…
いや、こんな些細な事で俺に鬼まんじゅうを買ってくれる程優しいこの人にそんな事ができるわけがないか。
気まずい沈黙が落ち、2人きりの時に上手く出来なかったがやっぱりこの人を元気づけたくて、今度こそと言葉を選び口を開く。
雅臣「そんなの当たり前ですよ。言えない事の1つや2つ…誰だってあるし、俺も思ったこと言えない時とかあるし……」
それでもやはり俺の下手な慰めに、一条先輩は目を見開くと、ほどなく小さく呟いた。
梅生「そうだね。本当の事って言いづらいよね。……藤城ありがとう、柊もまた明日」
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