山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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41.【3年生とエンカウント】

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テスト期間の唯一の良い所は、昼前に帰れることに尽きる。

最終日の今日は3教科、3限のみで終わり。

早く帰って何をしよう。映画の続きを見るか?

廊下に出ると、皆浮かれてるのかいつもより同級生の声が大きく感じる。

……分かるぞ。

俺もやっと終わったという安心感でかなり気分がいい。

初めての中間テストはどの教科も特に問題なく解けて、俺なりに手応えを感じて終えることができた。

どの教科も先輩が見せてくれた過去問が役に立ち、事前に予想し対策してくれた箇所が大当たりだった。

最初はあのサークルで勉強会だなんて…と思っていたが、終わってみれば中々有意義なものだったと気がつく。

毎日嫌々参加していたが、こんなにテストが楽なら勉強会のためだけにサークルに行くのも有りなのではと邪な考えが浮かぶ。

テスト期間中はうちのサークルを含めてどの部活も休みだったが、テストが終わった日から活動を再開する所が多い。

柊から連絡が来る前に急いで帰ってしまおう。

今日こそはサークルをサボる気満々でテスト終わりの喜びを噛み締めながら階段を駆け足で降りると、1年よりもっと騒々しい3年のフロアから見慣れた金髪が飛び出てきた。


桂樹「いやいやいや!!嘘だろ!?何で問3がアなんだよ!!」

三木「何でも何もア以外ないだろう」

桂樹「信じらんねぇ!!ガクは?」

「ウ」

桂樹「ふっざけんな!!俺イにしたわ正解どれだよ!!」


桂樹先輩はやっべぇと天を仰ぎ、俺の髪色賭かってんだぞと狼狽をあらわに大騒ぎしている。

その手に握られている問題用紙はぐしゃぐしゃで、先輩達3人で簡易的に答え合わせをしているようだ。

自分の答えに確信が持てない桂樹先輩の悲痛な声が廊下に響き渡る中、目が合ってしまった。


桂樹「お、雅臣!お疲れ」

雅臣「お、お疲れ様です」


慌てて頭を下げるが、俺より遥かに背も体格も良い人ばかりゾロゾロと出てくる3年のフロアから早く立ち去りたい。

たった2年しか違わないというのに、皆大人っぽく見えて威圧感が凄い。

三木先輩も桂樹先輩もサークルで見る時と雰囲気が違う感じがする。


三木「テストどうだった?」


少し怯えていると、三木先輩が俺の隣りに来て3人ともこのまま帰る様子だ。

……うわ、このまま俺と一緒に階段を降りていく感じか?

別のルートに変更しようにもこの人混みでは身動き取れず抜けることもできない。

仕方なくそのまま流れに身を任せる事にした。


雅臣「あ、三木先輩が出るって言ってたところ全部出ました…!」


すかさず教えてくれたお礼を伝えると、


桂樹「そうだろ、良かった良かった」

「いやなんでリオが威張んだよ春樹の手柄だろ」


俺の後ろで自分のおかげとばかりに偉ぶる桂樹先輩を短髪の先輩が窘めた。

桂樹先輩と同じくらい背が高いその先輩も近寄り難い厳しい雰囲気があるが、そういえばこの人も合唱部で揉めてた内の1人だったような..…?

記憶が定かでは無いが、三木先輩が合唱部を辞めてもこの3人で一緒にいるという事は本当に皆仲良いんだな。

……俺だったら大事な時に勝手に辞めるなんて言うのは許せない。辞めた後もこうやって一緒になんていられないし、いたくない。

桂樹先輩ともう1人の度量が余程広いのかと密かに感心していると三木先輩が、


三木「そうか、出来たなら良かった。蓮池はどうだ?」


そういう事は俺に聞かないで欲しい。

あんた達みたいに蓮池と仲が良くない俺じゃなく柊に聞いてくれと言いたいが、他の人もいる手前強くは言えない。

しかもあんなに熱心に教えていた本人に事実を伝えるのははばかられるが、仕方がないので素直に見て聞いたままを伝えた。


雅臣「あー…なんか過去問で見た問題だけ解いたみたいで……後は全部空欄らしくて」


俺の話を聞いた先輩3人が同時に目を合わせると、突然全員笑い出した。

ど、どうした?何がおかしいんだ?


三木「いや、すまんな。その戦法は1年の頃リオがやったんだよ」

桂樹「49点のギリ赤点、今でも覚えてる先輩くそ怒ってたよな」


蓮池の捨て身の作戦を意外にも桂樹先輩もしたと聞いて目を瞠る。

……いや待て。

49点で赤点だった?

ということは同じ戦法を使った蓮池も赤点じゃないのか?

まぁそんなの俺の知ったことじゃないなと桂樹先輩の話に合わせた。


雅臣「そ、そうなんですか?」


同じ事する馬鹿いんのかよとゲラゲラ笑う3人はそのままくだけた雰囲気で俺と一緒に1階まで降りていく。

3人の様子を見ているとそこに何か嫌な感情があるようにはとても見えなかった。

……3年間一緒だったって言ってたもんな。

きっと俺の知らない絆か何かがあって深い友情で結ばれてるんだろう。


三木「あぁそうだ藤城、言い忘れてた。3年は金曜日までテストがあるから、今日のサークルは俺ら抜きで始めてくれと伝えといてくれないか」


1階の下駄箱前に着いた途端、最悪の伝言を頼まれた。

3年になるとそんなにテスト期間が長いのかと少し嫌な気持ちになる。

……が、今はそんなことはどうでもいい!

そんなの自分でグループチャットに連絡してくれよ!

せっかく黙って帰ろうとしてたのに、俺が連絡したらサボれなくなるじゃねぇか!

サボるにサボれなくないと内心狼狽える俺に桂樹先輩も、


桂樹「1.2年はもうテスト終わりだろ?いいよなほんと…あ、雅臣、俺も今度サークル覗くってついでに言っといてくれ!じゃあな!」

雅臣「えっ?あ、は、はい、また…」


任せたぞと俺の肩を叩き白い歯を見せて微笑むと3人はそのまま靴を変えて外に行ってしまった。

……ええ……これ俺が連絡しなきゃいけないのか?

桂樹先輩にも頼まれてしまったから連絡する以外選択肢はないのだが、俺の懸念はそこじゃやい。

もし梓蘭世が行くって言ったら、俺は絶対サボれないじゃないか。

あの人はいつも俺だけに難癖つけて容赦なくキレるから、言いたいことが言えなくなる。

1年先輩ということもあり逆らえず、条件反射で身がすくんでしまうのだ。

大した理由もないのに休むなんて言ったら、梓蘭世に何て言われるか考えただけで嫌になる。

……前々から思っていたが、何故かはわからないが俺は梓蘭世に嫌われている気がする。

誰もを魅了する綺麗な顔をした悪魔みたいな存在を思い出し、ため息が出た。

顔は別物だが性格がキツいところが蓮池にも似ていて、この2人を相手にすると結局俺が一言も言えないまま押し黙るしかなくなる。

蓮池と梓蘭世さえいなければサークルもそんなに悪くないのにと思うも、いつだって好き勝手、言いたい放題の2人が少しだけ羨ましくなった。


雅臣「………くそ、」


なんで俺が、という思いを拭いきれないまま、律儀な俺はスマホを手に取りグループチャットを開いた。

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