山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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106.【柊のお姉さん】

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雅臣「お姉さん…4人いるんだよな?」

夕太「そうそう!姉ちゃん達の写真見る?」


喋りながら1度に色んな種類を口に詰め込もうとする柊に、喉につかえるんじゃないかと一旦アイスティーを飲むよう差し出す。

蓮池は既によく知っているのか、お姉さん達の写真に興味のない様子で今は黙々と食べている。

目の前のケーキスタンドから優雅な手つきでプレーンスコーンを取るのはいいが、蓮池はそこにクロテッドクリームを品がないくらいべったり乗せてかぶりつく。

胸焼けしそうなクリームの量に一条先輩の姿を重ねるが、見なかったことにして隣に座る柊が写真を出すのを待つことにした。

柊はアイスティーを飲みながら片手でスマホをスクロールし、この前皆で撮ったんだよねと目当ての写真を探している。

初めて柊の事を知るチャンスを得たわけだが、山王に入って約4ヶ月経った今でも俺は柊自身がよく分かっていなかった。

明るくて抜群のコミュ力があって…、でもどこか少しズレていて時折寂しそうな顔をする不思議な存在。

ずっとぼっちだった俺が友達になりたい奴を詳しく知る良いチャンスだよな。

柊はクォーターだと言っていたし、弟に似てお姉さん達も全員明るい髪色をしているんだろうか?


夕太「これ!」


そんな想像をしながら柊が差し出すスマホを覗き込むと、そこには衝撃の家族写真があった。


雅臣「……………」


何と返事をしたらいいのか分からず一瞬固まってしまう。

まともじゃないだなんて言うんじゃなかった。

先程の発言を後悔するくらい、お姉さん達4人ともがナチュラルに目も肌の色も全員違って柊と似ているところが1つもない。

ここで変に間を開けるのも悪いと思うものの、あまりにも想像と違うので戸惑いが隠せなかった。


夕太「これが1番上の姉ちゃんでー」


柊はそんな俺を気にせず順にお姉さんの説明をし始める。

1番目のお姉さんは中世ヨーロッパ貴族のような服を着て、腰より長い縦ロールのピンク髪を上に2つ結びしている。

染めているのかウィッグなのか分からないが、真夏にレースとフリルのドレスだなんて暑くないのか?


夕太「いちねぇは新しいロリータブランドを立ち上げてさ、この服も全部手作りだよ」


この季節感はないけれどやたら手の込んだ華やかな服はお姉さんが自分でデザインして作ってるのか。

それは凄いなと感心するが、柊より顔が外国よりなのがどうしても気になる。

俗に言うハーフ顔なのだが…こう…何と言うか…。

一旦次のお姉さんに話題を移そう。


雅臣「こっちは……」

夕太「こっちは2番目の姉ちゃん!にぃなちゃんは錦のキャバ嬢!」


さっき明らかに周囲が怪訝な目をしたのはそういう事かと気づくと同時に、道理で学生には相応しくない金額のお小遣いを貰えるワケだと腑に落ちた。

1番上のお姉さんとはまた違う系統の顔だが、2番目のお姉さんは陶器のような白い肌にかなり明るい茶髪で派手なロングドレスを纏っている。

この姿とキャバ嬢という情報から、どうやら〝錦〟とは地名で東京でいうと新宿のような繁華街なのだろう。

職業に貴賎なしとはいうものの水商売はどうしたって差別される事が多く、ホテルで堂々と言ってしまうあたりが柊のズレたとこだよな。


____でも。


両親共にイカれてる俺が言えた義理じゃない。

NO.1と書かれた華やかな2番目のお姉さんが大きく映った看板を前に、柊を真ん中にして写る4人のお姉さん達は俺の家とは大違いだ。

皆笑顔で写っていて、実に楽しそうで……。

仲の良い光景に羨ましくなるくらい、笑顔に溢れたとても良い写真だった。


夕太「んでこれが3番目」

雅臣「あ、あぁ…」


柊が紹介しながらチョコレートに手を伸ばすので俺もタルトを取って食べながら説明を聞くことにした。

3番目のお姉さんは分かりやすく褐色みのある肌で、中東特有のクッキリした目元と黒髪ロングのウェーブが美しい。


夕太「みー姉ちゃんは美容師で俺の髪も綺麗にしてくれるんだよね」

雅臣「……パーマをか?」


前から疑惑を抱いていたことを伝えると、柊はこれは天パだからと目線を上げてわざとらしく口笛を吹く素振りを見せた。

柊のふざけた顔つきを見て絶対パーマをかけてるだろと確信するが、


雅臣「…となると、パティシエのお姉さんはこの方か」

夕太「そう!しぃちゃん!」


以前パウンドケーキを作ってくれた4番目のお姉さんを当てるが、このお姉さんの目も絶妙にグリーンがかって見えて鼻も高く顔立ちがハッキリしている。

お姉さん2人ずつに挟まれて写る柊だが4人とも柊より背が高くて、そこだけ外国に見えるくらい見事に多国籍な家族だった。


雅臣「………柊はどっち似なんだ?」

夕太「俺ぇ?パピー、てか全員パピー似だよ…あ、パピーってもう言わないんだった、父ちゃん、父ちゃんね」


おっとっと、とまたふざける柊に構う余裕はなく、その言葉は全員父親が違うことを証明するものだった。

家族の闇に触れてはいけない…というか触れられたくないかもしれないとお姉さんから柊本人へと話題に移そうとしたが上手くいかない。

家族紹介を終えた柊はスマホを閉じてココナッツプリンを食べ始めるが、俺が動揺して何も言わないのに気づいた蓮池がため息をつく。


楓「__夕太くん、ちゃんと教えてあげなよ。それにお前もハッキリ言えよ鬱陶しい」


…………聞いてしまっていいのだろうか?

蓮池の少し苛立ってる様子を見て、俺は意を決して精一杯言葉を選びながら尋ねてみることにした。


雅臣「えっと…お姉さん達も…柊も似てな__」

夕太「あぁ、そっか。うち父ちゃん5人とも違うんだよ」


柊のよく通る声がラウンジ中に響いて、やっぱりそうかと俺の予想が当たったことに冷や汗が背中を伝った。






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