124 / 394
106.【柊のお姉さん】
しおりを挟む雅臣「お姉さん…4人いるんだよな?」
夕太「そうそう!姉ちゃん達の写真見る?」
喋りながら1度に色んな種類を口に詰め込もうとする柊に、喉につかえるんじゃないかと一旦アイスティーを飲むよう差し出す。
蓮池は既によく知っているのか、お姉さん達の写真に興味のない様子で今は黙々と食べている。
目の前のケーキスタンドから優雅な手つきでプレーンスコーンを取るのはいいが、蓮池はそこにクロテッドクリームを品がないくらいべったり乗せてかぶりつく。
胸焼けしそうなクリームの量に一条先輩の姿を重ねるが、見なかったことにして隣に座る柊が写真を出すのを待つことにした。
柊はアイスティーを飲みながら片手でスマホをスクロールし、この前皆で撮ったんだよねと目当ての写真を探している。
初めて柊の事を知るチャンスを得たわけだが、山王に入って約4ヶ月経った今でも俺は柊自身がよく分かっていなかった。
明るくて抜群のコミュ力があって…、でもどこか少しズレていて時折寂しそうな顔をする不思議な存在。
ずっとぼっちだった俺が友達になりたい奴を詳しく知る良いチャンスだよな。
柊はクォーターだと言っていたし、弟に似てお姉さん達も全員明るい髪色をしているんだろうか?
夕太「これ!」
そんな想像をしながら柊が差し出すスマホを覗き込むと、そこには衝撃の家族写真があった。
雅臣「……………」
何と返事をしたらいいのか分からず一瞬固まってしまう。
まともじゃないだなんて言うんじゃなかった。
先程の発言を後悔するくらい、お姉さん達4人ともがナチュラルに目も肌の色も全員違って柊と似ているところが1つもない。
ここで変に間を開けるのも悪いと思うものの、あまりにも想像と違うので戸惑いが隠せなかった。
夕太「これが1番上の姉ちゃんでー」
柊はそんな俺を気にせず順にお姉さんの説明をし始める。
1番目のお姉さんは中世ヨーロッパ貴族のような服を着て、腰より長い縦ロールのピンク髪を上に2つ結びしている。
染めているのかウィッグなのか分からないが、真夏にレースとフリルのドレスだなんて暑くないのか?
夕太「いちねぇは新しいロリータブランドを立ち上げてさ、この服も全部手作りだよ」
この季節感はないけれどやたら手の込んだ華やかな服はお姉さんが自分でデザインして作ってるのか。
それは凄いなと感心するが、柊より顔が外国よりなのがどうしても気になる。
俗に言うハーフ顔なのだが…こう…何と言うか…。
一旦次のお姉さんに話題を移そう。
雅臣「こっちは……」
夕太「こっちは2番目の姉ちゃん!にぃなちゃんは錦のキャバ嬢!」
さっき明らかに周囲が怪訝な目をしたのはそういう事かと気づくと同時に、道理で学生には相応しくない金額のお小遣いを貰えるワケだと腑に落ちた。
1番上のお姉さんとはまた違う系統の顔だが、2番目のお姉さんは陶器のような白い肌にかなり明るい茶髪で派手なロングドレスを纏っている。
この姿とキャバ嬢という情報から、どうやら〝錦〟とは地名で東京でいうと新宿のような繁華街なのだろう。
職業に貴賎なしとはいうものの水商売はどうしたって差別される事が多く、ホテルで堂々と言ってしまうあたりが柊のズレたとこだよな。
____でも。
両親共にイカれてる俺が言えた義理じゃない。
NO.1と書かれた華やかな2番目のお姉さんが大きく映った看板を前に、柊を真ん中にして写る4人のお姉さん達は俺の家とは大違いだ。
皆笑顔で写っていて、実に楽しそうで……。
仲の良い光景に羨ましくなるくらい、笑顔に溢れたとても良い写真だった。
夕太「んでこれが3番目」
雅臣「あ、あぁ…」
柊が紹介しながらチョコレートに手を伸ばすので俺もタルトを取って食べながら説明を聞くことにした。
3番目のお姉さんは分かりやすく褐色みのある肌で、中東特有のクッキリした目元と黒髪ロングのウェーブが美しい。
夕太「みー姉ちゃんは美容師で俺の髪も綺麗にしてくれるんだよね」
雅臣「……パーマをか?」
前から疑惑を抱いていたことを伝えると、柊はこれは天パだからと目線を上げてわざとらしく口笛を吹く素振りを見せた。
柊のふざけた顔つきを見て絶対パーマをかけてるだろと確信するが、
雅臣「…となると、パティシエのお姉さんはこの方か」
夕太「そう!しぃちゃん!」
以前パウンドケーキを作ってくれた4番目のお姉さんを当てるが、このお姉さんの目も絶妙にグリーンがかって見えて鼻も高く顔立ちがハッキリしている。
お姉さん2人ずつに挟まれて写る柊だが4人とも柊より背が高くて、そこだけ外国に見えるくらい見事に多国籍な家族だった。
雅臣「………柊はどっち似なんだ?」
夕太「俺ぇ?パピー、てか全員パピー似だよ…あ、パピーってもう言わないんだった、父ちゃん、父ちゃんね」
おっとっと、とまたふざける柊に構う余裕はなく、その言葉は全員父親が違うことを証明するものだった。
家族の闇に触れてはいけない…というか触れられたくないかもしれないとお姉さんから柊本人へと話題に移そうとしたが上手くいかない。
家族紹介を終えた柊はスマホを閉じてココナッツプリンを食べ始めるが、俺が動揺して何も言わないのに気づいた蓮池がため息をつく。
楓「__夕太くん、ちゃんと教えてあげなよ。それにお前もハッキリ言えよ鬱陶しい」
…………聞いてしまっていいのだろうか?
蓮池の少し苛立ってる様子を見て、俺は意を決して精一杯言葉を選びながら尋ねてみることにした。
雅臣「えっと…お姉さん達も…柊も似てな__」
夕太「あぁ、そっか。うち父ちゃん5人とも違うんだよ」
柊のよく通る声がラウンジ中に響いて、やっぱりそうかと俺の予想が当たったことに冷や汗が背中を伝った。
21
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
嘘をついたのは……
hamapito
BL
――これから俺は、人生最大の嘘をつく。
幼馴染の浩輔に彼女ができたと知り、ショックを受ける悠太。
それでも想いを隠したまま、幼馴染として接する。
そんな悠太に浩輔はある「お願い」を言ってきて……。
誰がどんな嘘をついているのか。
嘘の先にあるものとはーー?
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる