山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

文字の大きさ
136 / 394

116.【2人でいる理由】

しおりを挟む



蓮池にお姉さんがいたなんて。

だが、〝いた〟ということは今は……。


夕太「雅臣が考えてる通りだよ、今はいない」


余程顔に出ていたのか柊に苦笑される。

どうしてかと聞きたいが深刻な事情かもしれないと口を噤むと、


夕太「あ、ちなみに死んでないよ」


相変わらず容赦ない答え方をする柊にずっこけそうになるが、変に構えていたので今回こそ早めに教えてくれて助かった。


夕太「世間では駆け落ちって言われてるんだけどさー、うちの姉ちゃん達に言わせれば自分の実力を試したくて外に出ただけだよ」


柊と蓮池のように、きっと姉同士も幼馴染で仲が良かったのだろう。

友達としてお互いの悩みだったり色々な思いを知っていたのかもしれないな。


雅臣「柊と蓮池はいつから一緒なんだっけ」

夕太「生まれた時からだよ」

雅臣「それは凄いな……本当に仲が良いんだな」


生まれた時から一緒とはいえ本当に合わなかったらどこかで離れるだろうと、2人の関係の長さに改めて驚かされる。


夕太「家も隣同士でさぁ」

雅臣「あれ?蓮池の家って覚王山じゃないのか?」


俺の疑問に柊が詳しく説明してくれる。

聞くと蓮池の自宅は元々瀬戸で幼少期は稽古場も兼ねてそちらで暮らしていたが、途中家族で便利な伏見のマンションを住処とするべく引越したらしい。

現在瀬戸の家は覚王山と同じく稽古場として使い、学校から近いという理由だけで蓮池1人覚王山で生活しているということだった。

名古屋の一等地にある広い屋敷をただの稽古場として利用できるなんて、蓮池流は随分景気がいいと圧倒される。


雅臣「え、それならあの弁当や食事は?」

夕太「でんちゃんのおばさんが毎朝届けて夕ご飯まで作って置いてくんだよ」


何故その方法を取っているのかは分からないが、2人で顔を見合せ1番のボンボンはあいつだと大笑いした。

段々こいつらと過ごす時間が増えてるとはいえ今日みたいにゆっくり話すのは初めてで、この機会に柊の色んな話を聞いてみたいと思った。


雅臣「柊は蓮池と映画行ったりしないのか?」

夕太「うん、行ったことないよ」

雅臣「じゃあ2人ならどこに行くのが定番なんだ?」

夕太「んー、そもそもあんま遊び行かないかも。でんちゃんあー見えて真剣に華やってるし…俺は横でゲームしたり?」


それもそうか……。

確かに蓮池は毎日忙しそうで初めはサボりに思えた遅刻も実際本当に仕事の時もあり、学校終わりは確実に稽古でサークルに参加出来ない時だってある。

小さな頃から稽古の邪魔をしないよう柊なりに気を使って傍にいたのかもしれないと思うと、幼馴染とはいえどこかへ頻繁に遊びに行くことも出来なかったのだろう。


夕太「あ!ゲームで思い出したけど雅臣家具とか好きなの?」


柊はぽんと手を打ち今度は自分の番だと俺に質問をしてきた。


雅臣「あぁ、親父の影響だけどインテリア好きなんだ」

夕太「じゃあじゃあ!〝とびちれどうぶつの森〟絶対好きだよ!」


普段全くゲームをしない俺はタイトルを聞いただけでは想像がつかず、直ぐにスマホで検索をかけてみる。


雅臣「これか?とび森ってやつ」

夕太「そうそう!雅臣に似たキャラがいてゲーセンでぬいぐるみ取ったから後で渡すね!」


画面を見せるとこれが雅臣に似たキャラだよと柊は教えてくれた。

それが似てるかどうかは分からないが、柊が俺を思ってわざわざ取ってくれた事が嬉しい。

内容としては村や島を開拓してそこで入手した素材で家具を作ったりアイテムを増やし、自分なりにレイアウトを楽しめるというものだ。

ゲームと言えばRPGや格闘くらいしか思いつかなかった俺だがこれならシンプルだし楽しめそうだ。


雅臣「へぇー…やってみようかな」

夕太「俺とでんちゃんはこれ本当に向いてなくて誰がやるんだって思ってたけど、雅臣みたいな奴がやるんだな。ハマりそう」


ようやく理解出来たと笑う柊に、確かに2人には何となく格闘ゲームの方が合ってる気がした。


雅臣「テレビに接続してできるのか?ゲーム機さえあればいいんだよな?」

夕太「そう!俺も1台あるから、雅臣のをこのテレビで繋いだら俺と通信もできるよ!」

雅臣「それは楽しそうだな、買おう」


すぐにカートにゲーム機を入れて購入してしまえば、柊はあまりの即決具合に驚いたのか目を何度も瞬いている。


雅臣「柊、また俺の家来てくれよ。接続したら一緒にやらないか?それから蓮池も呼ぼう」


そう提案すると柊は急に吹き出した。


夕太「……やっぱり雅臣って良い奴だね」

雅臣「は?」

夕太「また来てだなんてさ、……大抵の奴は俺らから離れるよ」


笑った笑った、と立ち上がってソファに座る俺の前に立つ柊の言葉の意味が全く分からず見つめ返した。


夕太「家庭環境おかしいもん」


俺をじっと見つめる柊の目に深く隠された感情が垣間見える。

自分の家がおかしい自覚は柊にだってあるんだ。


夕太「でんちゃんあんなにお稽古頑張ってても色んな噂が後を絶たないし、俺も変な家庭環境で……どっちも変なんだよ」


きっと2人は他人からの謂れのない言葉にずっと傷ついてきたんだろう。

確かに傍から見れば変かもしれないが、俺の家も十分すぎるくらい変なので何かを言える立場ではない。


夕太「それなのに雅臣はいつも俺達を受け入れてくれる」



_____そうか。

柊も蓮池も中身をきちんと理解されるまで一緒にいた奴が今までにいないんだ。

多分2人がどんな奴なのかを知る前に、色んな噂から上辺だけで判断して離れていく。

ある種孤立した環境でずっと身を寄せ合うように2人だけでいたんだろう。

柊のわがままで子供っぽい反面どこか達観しているのはワールドワイドすぎる環境で育ったからで、嫌な奴なんかじゃない。

蓮池だって口も態度も悪いけどそれは家業からくるストレスなだけで本当は……そこまで悪い奴じゃない。

俺は2人をもっと知りたいと思ったからそれぞれの良さも分かるけど、現実は皆が皆そんな奴ばかりじゃない。

共に傷ついてきたからこそ他人の冷たさをよく知っているのだろう。


雅臣「………良い奴なのは柊だろ?」


俺が今から言うことを信じて欲しいと、初めての友達を慰めたくなった。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

【完結】後悔は再会の果てへ

関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。 その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。 数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。 小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。 そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。 末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前

処理中です...