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122.【3羽の理由】
しおりを挟む楓「………お前さ」
雅臣「ん?」
楓「さっきの鳥、どれが1番若く見える?」
景石に腰掛けた蓮池は俺を見るとおもむろに飼っているインコの話をし始めた。
雅臣「あの子達だろ?えーっと……」
質問の意図がまったく分からないが、さっきの可愛いお喋りな3羽を思い浮かべる。
正直今までほとんど動物と接する機会が無かった俺にはハードルが高い質問で、知識も浅い俺にはインコの年齢など一目見て分かるものでもなかった。
雅臣「……というか全部同じじゃないのか?柊から頼まれて同時に引き取ったんだろ?」
これが正解だろと答えてから溶けかけのアイスを口に含むと、
楓「……やっぱそこまで違って見えないか」
良かった、と呟きふんわり微笑む蓮池にますます意味が分からなくなる。
こいつは何が言いたいんだ?
楓「あれ全部年齢違うから」
雅臣「……あ、あぁ、そういう事か!引き取った時にすでに年齢差があったのか」
だからさっき曖昧な答え方をしたのかと、蓮池にインコの年齢を尋ねた時を思い出す。
何を言ってるのか全く理解できないが、きっとクイズみたいにして蓮池は俺との会話をもたせようとしるんだろう。
相変わらず言葉が足りないぞと思ったが、俺には3羽とも同じに見えて色が違うことぐらいしか分からない。
すると、蓮池は首を振って俺を真っ直ぐ見つめ返した。
楓「鳥なんか飼ったことないからさ、何回か逃げたり亡くなったりしてるんだよね」
雅臣「そ、そうか…」
鳥にだって寿命があるし、放鳥したら予期せず逃げてしまったと蓮池は言いたいんだろう。
あの子達が何代目の鳥なのか知らないが、かなり長く鳥を飼い続けているんだろう。
やっぱりずっと飼っていれば蓮池とて愛着が湧くんだなとスプーンでアイスをすくう。
………。
……………あれ?
でも柊はスーは蓮池の家に来た時からお喋り上手って言ってたよな?
亡くなったり逃げたりしたのはスー以外の2羽なのか?
どういうことだと顔を上げると蓮池はじっと俺を見つめていた。
楓「夕太くんは気づいてないんだよ、鳥が全部入れ替わっていることなんて」
夜の静けさに、一瞬緊張が走る。
楓「インコの寿命なんて、夕太くん知らないからさ」
インコの年齢を聞かれた意図がわかり、嘘だろと見つめるが蓮池は薄笑いを浮かべるだけだ。
蓮池がいなくなった鳥達とそっくりの似た子を用意して同じ名前をつけて分からないようにしてる事実に柊が気づいていないってことか?
雅臣「な、何しにそんな___」
楓「いなくなったって知ったら夕太くんすごく悲しむだろうから」
言葉が出ず、背中にひやりとしたものを感じた。
蓮池、お前それは………。
それは幼馴染を言い訳に、己のした事を正当化しているだけじゃないのか?
俺を見る蓮池の目の奥に狂気を感じて身震いをした。
背中を伝うのは汗のはずなのにそうじゃない気がして、チリンと鳴る風鈴の音が意識を目の前の蓮池に戻させる。
蓮池は困惑する俺に気づかずに、ただ俺の様子を見ているだけだ。
……落ち着け、落ち着け俺。
_____例えば。
例えば、俺が大切にしている万年筆を親父が壊してしまいこっそり取り替えていたとする。
でもその事実を知ったら、怒ったり悲しむよりも先に本当のことを言ってくれたら良かったのにと思うだろう。
俺を思う故にした事かもしれないが近しい関係だからこそ話せば分かるはずなのに。
柊だって同じことなのに、何故それが蓮池には分からないのか。
楓「気がつかない方がいいんだよ」
そう言って蓮池は目を閉じた。
多分、蓮池は自分のした事が間違っているとは思っていない。
いくら柊を思ってした事とはいえ、もしこの話を俺が本人に伝えてしまったらどうするつもりなんだと顔を顰める。
勿論そんなことはしないけれど、こんな事が柊にバレたらただでさえすれ違ってる2人の関係がもっとおかしくなる気がした。
俺の手の中のアイスが溶けて崩れるように、幼馴染としての信頼も消えてなくなりそうだった。
雅臣「………」
……でも、本当にそうなんだろうか?
柊が事実を知ったとして蓮池が思うようにあいつが悲しむのだろうか。
確かに悲しい思いはするだろうけど、しばらくしたら仕方ないよね寿命だよとあの達観した様子を見せるんじゃないのか?
大須で俺の死んだ母親に発した言葉と同じく、柊はあっけらかんとただその事実を受け入れるだけにも思える。
楓「変わらないっていいことだよな。これからも何にも変わらないから」
蓮池が目を開いて見つめる先はまた端っこの切り株で、そこに何の思い入れがあるのかじっと見つめたまま動かない。
おかっぱの髪を片耳にかける蓮池はあの写真立ての子供とは別人で身体つきももう大人だ。
蓮池流という自分が背負うものの重さもしっかり理解し先を見据えるその目はどうして柊のことになると正しく見えないのか。
『でんちゃんっていつまでこのままなんだろ』
さっきの柊の言葉を思い出す。
あれはいつまで自分を子供の頃のままに思ってるのかということだったのかと気がつく。
きっと蓮池の中で柊はいつまでもあの写真の中の幼い柊のままなのだろう。
柊はいつまでも成長した自分に気が付かない蓮池が嫌で、今の自分を見てくれなければ本当の友達とは言えないと思ったんだ。
夕太「あーーー熱かった…でんちゃん家の風呂45度なのやっぱおかしいよ…」
雅臣「お、おかえり柊」
その瞬間、浸かりすぎたのか頬を赤くして柊が風呂から戻ってきた。
明るい声が日本庭園に広がる仄暗い雰囲気を消し去ってくれて助かったと息をつく。
話題を変えようにも俺はどう話したらいいか分からず、より変な空気にしかねなかった。
蓮池は柊を見て立ち上がると小走りで縁側に戻り下駄を脱いで部屋の奥に行ってしまった。
夕太「雅臣アイス食べてんの?それバニラ?」
雅臣「あぁ、柊の言う通り蓮池の冷凍庫本当にバニラばっかりで__」
夕太「バニラ美味いよな、1口ちょうだい」
柊が俺のスプーンごと奪おうとするからさすがに嫌で取らせまいと立ち上がると、廊下の床が少し軋み背後に蓮池が戻ってきたことがわかる。
楓「夕太くん、はいこれ」
夕太「でんちゃん!ナイスタイミン…グ…」
蓮池は持ってきたアイスとスプーンを手渡すが、その味はもちろんストロベリーだった。
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