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隣の席のイケメンに懐かれた
修学旅行 2日目(早川視点)
しおりを挟む(早川視点)
お土産屋に入り、どれにしようかと悩んでいると、隣に高峰が立った。
いつも一緒にいるはずの柴野がそこにはいない。
「高峰、柴野は?」
「トイレ行ってくるって」
「そうなんだ」
柴野が「いいやま」と呼ぶ男と会ってから、高峰は少しピリピリしている。
俺も矢沢も、その雰囲気を感じつつも触れないようにしていた。
柴野の反応から、「いいやま」に何かトラウマ的なものがあるというのは感じ取れた。高峰はそれについて、俺たちよりも知っているみたいだが、全てではないようだ。
「早川ー、見てー!木刀買った」
矢沢が笑顔で木刀を掲げる。そんなものも売ってたのか。
「お前中学の修学旅行のときも、木刀買ってなかった?」
「木刀なんて何本あってもいいですからね~」
いやいらないだろ、と言うツッコミは心の中で留めた。
「柴野遅いな。俺ちょっと見に行ってくる」
柴野のこととなると心配性な高峰が動きだす。
「いいやま」の件もあり、俺も心配だったのでついていく事にした。「俺もいくー」と矢沢もついてきた。
結論からすると、この時の俺たちの決断は正しかったと言える。
「いいやま」が柴野に手を出していたからだ。
柴野は涙を流しながらも動けない、といった様子だった。それもそのはずだ、柴野と「いいやま」の体格差は大きい。柴野には太刀打ちすらもできないだろう。柴野は震えているようにも見えた。
それを見た瞬間に高峰が「いいやま」を思いっきり蹴り飛ばした。サッカー部だからか、元々高峰がそうなのかはわからないが足癖の悪さがここで活かされた。
「いいやま」が「うぐっ」と情けない声を出して倒れこんだのを確認して、高峰は柴野に駆け寄った。
「早川、矢沢。こいつのこと後は頼んだ」
高峰にそう言われ、頷く。今、高峰が優先すべきは柴野だ。「いいやま」は俺たちに任せるのが1番だろう。
柴野は呆然としていて、高峰の呼びかけに対する反応も少し遅れているようだった。
高峰に気づいた途端に、ポロポロと涙をこぼし始めた。
柴野は「恐怖」と「安心」が混ざり合ったようにグチャグチャに泣いていた。
「早川ー。こいつどーする?」
木刀もって俺に聞く矢沢の目は笑っていなかった。
明らかに怒りがこもっている。俺も同じだった。
俺は飯山の前に立つ。
「いいやまくん、だよね。学校どこ?言わなくても制服から割り出すけど」
俺はスマホで調べだす。駅などでたまに見る制服だったのでうちの学校から比較的近いところにある学校だろう。
柴野と面識があるということは、柴野の家から近いところか。そうあたりをつけて調べると、「いいやま」の制服が出てきた。ここで間違いないだろう。
「学校は見つけたよ。次は君の先生の場所を教えてくれる?修学旅行で来てるなら、このあたりにいるはずだよね」
「いいやま」はなにも言わずにこちらをみて笑みを浮かべる。なにを考えているかわからないその笑みは、控えめに言って気持ちの悪いものだった。
「君たち~、芹くんのなんなの?」
「お兄ちゃん」
「母親ですが?」
「冗談やめなよ」
「いいやま」の質問に矢沢と俺は間髪をいれずに答えた。
友達、というよりも守ってあげたくなるような危うさを柴野は孕んでいる。
「芹くんも可愛かったけど~、君も綺麗な顔してるよねぇ」
「は?」
脈絡のない「いいやま」はそういって俺に近づき、手を伸ばしてきた。最大限に眉を顰めていると、「いいやま」の手を矢沢が叩き落とした。ちなみに木刀で、だ。
「ごめんだけど、早川は俺のだから。触んな」
今までにないくらい真剣な表情のあと。
「大丈夫?」と俺を見て微笑む矢沢から顔を背けた。
そんなこと言われたら、勘違いするだろ。ばか。
顔は赤くなっていないだろうか。
恥ずかしくなった俺は早口で矢沢に言う。
「お前に助けられなくても平気だったし。それよりも早くそいつのカバンからしおり探して」
「素直じゃないなぁ。きょーちゃんは」
「その呼び方やめろ」
「へいへい」
俺の心臓がいつもよりも早く動いているなんて知らない矢沢が、「いいやま」のカバンを探し始める。
「いいやま」はなにも抵抗しないようだ。ニヤついて俺らのことを見ていてゾワっとする。
「あったよ、きょーちゃん。これでどうすんの?」
「先生のいる場所とか、電話番号とか載ってるかなって」
「なるほどねー。きょーちゃん頭いいな!」
矢沢が俺のことを「きょーちゃん」と呼ぶのを無視して、しおりをペラペラめくると、教師の電話番号が書いてあった。思った通りだ。
その番号に電話をかけ、事情を説明する。物分かりの良い教師で助かった。処罰はしっかりと行われるようだ。
電話が終わった後、俺は「いいやま」を見据える。
「もう2度と、柴野に近づくな」
「え~なにそれ~」
「次柴野には近づくなら、タダでは置かない」
もう、柴野があんなに悩んで苦しんでいる姿を見たくない。そう思う俺に、「いいやま」は意味深な笑みを浮かべる。
「じゃあさ、早川くん?だっけ。オレの相手してよ」
「は?」
「オレ顔可愛い子好きなんだよねぇ。芹くんの方がウブで可愛かったけど、顔は早川くんの方がタイプだし~」
気持ち悪い、と心からそう感じた。よく柴野はこれに耐えていたなと思う。
また俺に手を伸ばしてくる「いいやま」の変態加減に呆れていたら、後ろにクイと引っ張られた。反対に矢沢が俺の前に出た。
矢沢が木刀を「いいやま」につきつける。
「それ以上キモいこと言ってみろ。これでお前の頭かち割るから」
矢沢はそう吐き捨てると、俺の腕を掴んでズンズンと歩き出した。
少し歩いたところで立ち止まる。
「矢沢?」
「あのさぁ、きょーちゃんは柴野のこと『危機感ない』とか『無防備』とか言うけど、きょーちゃんもだいぶだから!!」
「きょーちゃんって言うな」
「今そこじゃない!」
頭を抱えだす矢沢に思わず笑ってしまう。
矢沢がちゃんと俺のことを考えてくれたことが嬉しかった。まあ、そんなこと口が裂けても言えないのだけれど。
「まあ、ありがとね。千秋」
俺がそういうと、矢沢は一瞬驚いたような顔をして、その後ニコッと笑った。ドキッと胸が高鳴る。
矢沢の笑顔は心臓に悪すぎるんだよ、ばか。
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