ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

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放課後

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 二人は教室内でもたもたしていたため、昨日と同じく校内からは人の気配が消え閑散としていた。

 その為友香の張りのある声が無機質なコンクリの壁に余計に響いてしまう気がした。

「誰も聞いちゃいないわよ。ていうか、つなぎたいなぁ、とか思わなかったの?」

 とんでもない! とばかりに深雪はものすごい勢いで首を左右に振る。

「そこまで否定しなくてもいいんだけど。……それよりもほとんど話せなかったんでしょ? 変わってるわねえ」

「ねえ……」

 思い出してもまだ気恥かしくなってくる。本当になんでだろう。

 今まで街見かけたカップル達は必ずしも手をつないでいたわけではないが、あんな風にふたりうつむいて歩いたりしていなかった。

 喧嘩をしてむっつりしていたとかいうのとも事情が違う。

 どうしてみんな、そんなに自然にしていられるのだろう?

「う~ん……、あ、慣れじゃない? 二人とも初対面に近いし」

「そうかなあ。だといいんだけど……」

「あっ深雪お迎えよ」

 友香が入口を指さしたのでそちらへ目をやる。

「ちょっとぉ! 友香ちゃん、ふざけないでよ!」

 口ぶりから察するにてっきり和貴だと思ったら、立っていたのは似ても似つかない体型に、顔立ちに、雰囲気に……。ともかく一目で違うとわかる人物だ。

 おどけてみせる友香にわざとらしくふくれてみせると、彼女の表情に驚きが走ったのがわかる。

「やだ、冗談だって……」

「おい」

「きゃ……!」

(なに……っ!?)

 聞き覚えのない太い声と同時に、身体が宙に浮く。

「深雪!」

「植田深雪だな?」

 フルネームで呼ばれる瞬間にやっと、自分が誰かの肩に担ぎ上げられたことが理解できた。

「やだ、降ろして……!!」

 手足をばたつかせ、なんとか脱出を試みようとするが、男の腕はますます強く身体を締め付けるばかりで拘束は少しも緩まない。

 ちらと眼に入った制服はここの高校のものではないが、よその学校でこんな真似をしていったい何のつもりだろう。

「待ちなさいよ!何のつもり!?」

 友香は勇敢にも得体のしれない大男に手をかけ深雪をひっぱり降ろそうとするが、片腕でたやすく弾き飛ばされてしまう。

「いたっ」

「友香ちゃん!?」

「浜崎に伝えろよ。女返して欲しかったら不動校そばのエックスってクラブに来いってな。」

「待って! 誰か―――」

 友香は、打ちつけた腰の痛みをこらえながら男にすがりつこうとするが、間に合わない。

「放してよー!」

「深雪! ……待ちなさい!」

 深雪を抱えたまま男は駆け出した。

 友香の叫声が小さくなっているのが二人の移動距離を示していた。






ーーーーーー






 男は人一人抱えているにも関わらず、まるで一人でいるのと変わらない驚異的なスピードで走った。

 始めのうちは体をよじったりありったけの力で男の体を叩いたりしていたが、びくともしないし徐々にそれどころではなくなってくる。

 男は深雪の身体を肩に担いでいるものだから、丁度腹が肩の関節に当たり、揺れるたびみぞおちが圧迫され思うように呼吸が出来ない。

「やだっ……放して! 嫌……」

 やっと言葉を絞り出したが、それ以上は声にならない。

 どこへ連れて行くのかも、なんの目的なのかもわからない。

 先ほどなんとかと店の名前らしきものを口にしていたのだが、その時深雪は冷静ではなかったし、第一それらしき名前の店は記憶にない。

 ただわかっているのは、和貴を誘い出すため自分がさらわれていることだけ。

 肉体の苦しみもピークに近づくと神経が自らを鈍らせていくのだろうか。

 徐々に振動も、痛みも、身体のどちらが上下なのかもわからなくなってくる。

 また私は「人質」になってしまうんだと、深雪は朦朧としてくる意識の中でぼんやりと考えていた。



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