ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

文字の大きさ
24 / 43
京都へ

5

しおりを挟む
 高台寺行きは元々、友香が提案したものだった。

 さすがにカップル歴が長いだけあり、イベント情報などの収集も意欲的だった。

 和貴に光一、深雪にも反対する理由はない。

 特に深雪は、和貴と見る夜景を、とても楽しみにしてくれていた。

「うわぁ……」

 庭園に入ると、得も言われぬ美しさに深雪が感嘆の声を上げた。

 色づいた紅葉が光を受け輝いている。紅色の彼方には竹林の濃い緑が透けていた。

 かと思えば足元の池が立体のすべてを映し出していて、地上にいる心地がしない。

 空気は冷たいのに頭上が紅に燃えているようだ。

 普段は感情の起伏が薄い和貴だが、なるほど。これは一見の価値がある。

「これは本当に……」

 綺麗だね。と声をかけようとして、和貴は声を失った。

 もっともっと、綺麗なものをすぐそばに見つけたからだ。

 高揚した頬に、うっとりと夢見るようにうるんだ瞳。

 そこに自分の姿はなかったが、その清らかな輝きに心が満たされる。

 ――と同時に。

 体の奥で想いが、鈍く疼いた。

 深雪に触れたい。

 至極当然の欲求だ。と、和貴は体験的に知っている。

 だが、相手はこの深雪だ。

 純真で清廉な深雪に……こんなに邪念たっぷりの気持ちで触れて良いものか。

 こんなに近くにいて、こんなに愛らしいのに。

 触れたいと思えば思うほど、どうしたら触れられるのかわからなくなってくる。

 今までに女性に触れる機会は幾度かあった。けれど、こんな気持ちは初めてだ。

 これまでにないほど強く、触れたいと感じるのに。














(なんだよ、浜崎のヤロー)

 一方、二人を尾行して来た藤原拓也は、人ごみに紛れながら、ちらりちらりと様子を伺っては和貴を睨み付ける。

 夜間とはいえ、期間限定のライトアップに観光客の入りは上々だった。

 修学旅行のシーズンなので学生らしき人影もちらほらあり、拓也の存在はそれほど目立たずにすんでいた。

 この場にそぐわない表情も、夜の闇とシチュエーションのお陰で人々の目には入らなかった。

(植田さんばっか見やがって、景色を見ろよ! このむっつりスケベ!)

「拝観料まで払って、何をやってんだ……」

 ぎりぎり奥歯を噛んで、心の内を声に漏らす。

 お前こそ、拝観料まで払って何をやっているのだ。

 と、突っ込んでくれる友も、今はない……。













 

 深雪の知るイルミネーションは、地上で瞬く星のように綺羅綺羅しいものだった。

 だが今日は、また違う幻想的な景色に、足元が浮かぶような不思議な心地を味わっていた。

「ねえ、とっても綺麗ね……」

 透き通る清々しい空気の中で、深雪は幽玄に身をゆだねていた。

 感動の波が穏やかになり、感動を口にしたところで我に返る。

「うん。すごく綺麗だ」

 耳に染み入るような優しい声で夢から醒めると、和貴がずっと自分を見ていたことに気がついた。

 その眼差しの暖かさに、甘く胸がときめく。

 どうしてこんなに素敵な人が私と一緒にいてくれるのだろう。

 和貴は噂と違い、優しく紳士的だ。

 それほど長い時を共に過ごしているわけではない。

 けれど一緒にいる時は、いつでも深雪の事を第一に考えてくれている。

 自分でも大切にされていることが、はっきりと分かる。

「和貴くん……」

 こんな男の子が現実にいるのかと、思えば想うほど、際限なしに惹かれてしまう。

 人を好きになるって、こんなに幸せな気持ちになるんだ。

 深雪は新たな発見と喜びに、感動していた。












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...