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京都へ
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(深雪!?)
和貴は戸惑いながら、わが目を疑った。
これはひょっとして……、甘えられているんだろうか!?
最悪の場合、軽蔑されていることさえ覚悟していた。
なのに、こんなにおいしい展開が待っていていいのかとこっそり右足をつねってみる。
が……どうやら夢ではないらしい。
「…………」
幸運な状況に乗っても良い物か、迷ったものの誘惑には勝てない。
腕を回して深雪の肩を、そして身体を抱きしめた。
小さくて……暖かくてやわらかい。
それにそこはかとなく甘い香りも。
ほんの少し力をこめて、失わずに済んだ幸せをかみ締める。
どうしてこんなに愛しいのだろう?
愛しいと思えば思うほど、欲してしまうのに。
欲してはいけないことは百も承知だ。
今回のことだって、誤解であることは伝わったようだが、深雪をおびえさせた事には変わりない。
まだ待たなければとわかっている。
俺とそうなってもいいと思ってくれるその時まで。
この子を、傷つけたくなんかないのに――
(和貴くん……)
深雪はやっと、抱きしめてもらいながら心地よさに身をゆだねた。
頬を寄せ身体を預ける。
そうすることで和貴がさらに追い詰められていることなんか、知るよしもない。
するうちに段々と、気持ちが落ち着いて来た。
「私こそ、ごめんなさい。泣いたりして……。でも和貴君が嫌で泣いたんじゃないのよ」
ようやく謝ることができて、ひとまずほっと息をつく。
更に勢いで全部言ってしまおうと、言葉を続けた。
「藤原君が、和貴くんには当たり前のことだって言ったのを聞いて……、ああそうか、和貴くんは初めてじゃないんだって思ったの。つまり単にそれが、嫌だったの……」
改めて口に出すとそのときの感情が蘇る。
過去に恋人がいたかどうか、和貴に直接尋ねたこともなかったが、そんなことは考えなくても無意識に想像はついていた。
心のどこかで考えないようにしていた。
そんなこと考えたっていいことがないのは知っている。
けれどその事実を――意識せずとも耳にしたら、どうにもならなくなってしまっていた。
気持ちは伴わないのに涙だけ出て……
泣いたからってどうなるものでもないのに。
「恥ずかしいよね、そんなことで。本当にごめんなさい」
「深雪……」
深雪の告白に、和貴は胸を熱くした。
それほどまでに自分を想ってくれていたのかと思うと、今までの経験が悔やまれた。
今までの経験をなかったことにできるなら、喜んで投げ出すのに。
「それなのに、迎えに来てくれてありがとう」
深雪は顔を上げて、和貴を見上げた。どこかすっきりとした表情をしている。
「和貴君が許してくれるならこれからも一緒にいたい、私」
深雪は一度言葉を切って、こくりと空気を飲む。
道路を行き交う車のライトがちらちらと瞳に映って、きらきらと輝いて見える。
「私も、和貴君が好きなの」
心の籠った最後の一音を、冷静に受け止めることができない。
胸の奥で鼓動がどくどくとさざめいて、耳の奥が真っ白に、ふわっと浮いたような心地になる。
深雪の信頼を裏切るかもしれない。でも、我慢できない。
この子が、欲しい……!
「……うん。俺こそ」
欲しい気持ちが、脳内で破裂していた。
和貴の声の、トーンが低く、重く落ちた。
言葉に詰まったかのように思われた。
ふっと、身体を包んでいたぬくもりが遠のいて、手のひらが頬に触れた。
(和貴くん……?)
指先がそのまま顎へとすべって、顔を上へと持ち上げる。
「ありがとう。俺も、深雪が好きだ」
和貴の囁きは少し掠れて、明瞭ではない。
でも、とても甘美な響きで――
――深雪はうっとりと聞き入るように、瞳を閉じた。
少し遠くに人の声と足音が。
辺りには木の葉のざわめきだけが響いていた。
和貴は戸惑いながら、わが目を疑った。
これはひょっとして……、甘えられているんだろうか!?
最悪の場合、軽蔑されていることさえ覚悟していた。
なのに、こんなにおいしい展開が待っていていいのかとこっそり右足をつねってみる。
が……どうやら夢ではないらしい。
「…………」
幸運な状況に乗っても良い物か、迷ったものの誘惑には勝てない。
腕を回して深雪の肩を、そして身体を抱きしめた。
小さくて……暖かくてやわらかい。
それにそこはかとなく甘い香りも。
ほんの少し力をこめて、失わずに済んだ幸せをかみ締める。
どうしてこんなに愛しいのだろう?
愛しいと思えば思うほど、欲してしまうのに。
欲してはいけないことは百も承知だ。
今回のことだって、誤解であることは伝わったようだが、深雪をおびえさせた事には変わりない。
まだ待たなければとわかっている。
俺とそうなってもいいと思ってくれるその時まで。
この子を、傷つけたくなんかないのに――
(和貴くん……)
深雪はやっと、抱きしめてもらいながら心地よさに身をゆだねた。
頬を寄せ身体を預ける。
そうすることで和貴がさらに追い詰められていることなんか、知るよしもない。
するうちに段々と、気持ちが落ち着いて来た。
「私こそ、ごめんなさい。泣いたりして……。でも和貴君が嫌で泣いたんじゃないのよ」
ようやく謝ることができて、ひとまずほっと息をつく。
更に勢いで全部言ってしまおうと、言葉を続けた。
「藤原君が、和貴くんには当たり前のことだって言ったのを聞いて……、ああそうか、和貴くんは初めてじゃないんだって思ったの。つまり単にそれが、嫌だったの……」
改めて口に出すとそのときの感情が蘇る。
過去に恋人がいたかどうか、和貴に直接尋ねたこともなかったが、そんなことは考えなくても無意識に想像はついていた。
心のどこかで考えないようにしていた。
そんなこと考えたっていいことがないのは知っている。
けれどその事実を――意識せずとも耳にしたら、どうにもならなくなってしまっていた。
気持ちは伴わないのに涙だけ出て……
泣いたからってどうなるものでもないのに。
「恥ずかしいよね、そんなことで。本当にごめんなさい」
「深雪……」
深雪の告白に、和貴は胸を熱くした。
それほどまでに自分を想ってくれていたのかと思うと、今までの経験が悔やまれた。
今までの経験をなかったことにできるなら、喜んで投げ出すのに。
「それなのに、迎えに来てくれてありがとう」
深雪は顔を上げて、和貴を見上げた。どこかすっきりとした表情をしている。
「和貴君が許してくれるならこれからも一緒にいたい、私」
深雪は一度言葉を切って、こくりと空気を飲む。
道路を行き交う車のライトがちらちらと瞳に映って、きらきらと輝いて見える。
「私も、和貴君が好きなの」
心の籠った最後の一音を、冷静に受け止めることができない。
胸の奥で鼓動がどくどくとさざめいて、耳の奥が真っ白に、ふわっと浮いたような心地になる。
深雪の信頼を裏切るかもしれない。でも、我慢できない。
この子が、欲しい……!
「……うん。俺こそ」
欲しい気持ちが、脳内で破裂していた。
和貴の声の、トーンが低く、重く落ちた。
言葉に詰まったかのように思われた。
ふっと、身体を包んでいたぬくもりが遠のいて、手のひらが頬に触れた。
(和貴くん……?)
指先がそのまま顎へとすべって、顔を上へと持ち上げる。
「ありがとう。俺も、深雪が好きだ」
和貴の囁きは少し掠れて、明瞭ではない。
でも、とても甘美な響きで――
――深雪はうっとりと聞き入るように、瞳を閉じた。
少し遠くに人の声と足音が。
辺りには木の葉のざわめきだけが響いていた。
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