ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

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京都へ

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「ええーーーーっっ!?」

 部屋中にいた全員一斉の大合唱が起こる。

「ラブホテルに連れて行かれると思ったぁ!!?」

「ち、ちょっ、声大きすぎだって……!」

 深雪は制止を促したが、誰一人聞き入れてくれない。

「それにそれは誤解で……」

 格好のゴシップネタに浮かれるクラスメイトを前に必死に弁解を試みる。

 高台寺を出てホテルの前で泣いてしまったこと、拓也が出てきて一緒に逃げてしまったこと。

 けれど結局それは間違いだとわかって……

 本当はこっそり友香だけに真相を打ち明けて謝りたかったのだが、例の三人娘がこんな面白そうな話、見逃してくれる訳がない。

 浜崎と二人、帰宅時間に遅れた上にさらに男子が一人絡んだ三角関係。

 一体何が起きているのかと思うと楽しみでならず、深雪が戻ってくるのを今か今かと待っていたのだ。

 しかし……




「ま~……、そりゃナイわよね」

「そうねぇ」

 和貴が迎えに来てすべては自分の勘違いだったことがわかったくだりまで話すと、友香があきれたようなため息をもらす。

「散々心配させておいて、彼氏からもらったアクセサリーなんかつけて帰って来て、何て言ってやろうって考えてたのに。怒る気失せたわ~」

 同室の三人も一様にうなずいた。

「ねぇ~、こんなつまらないオチだったなんて」

「え、つまらない? なんで?」

「なんでって……」

 ホテル連れ込み事件を否定されて、深雪は呆気にとられた。

 深雪にとっては大事件だ。友香はやや、発言を後悔するように言い淀む。

「だって……ねえ」

 友香にしては随分と歯切れが悪い。

「そうよね。それがわかってれば、こんな誤解しないよね……」

「だって、お寺出た後だったんでしょ?」

 友香が何やらごにょごにょと口の中で呟いていると、替わりに美波が前に出た。

「? うん」

「時間、覚えてる?」

「確か……七時半頃かなぁ」

 美波は躊躇う友香とは正反対に、目を輝かせながら言い放った。

「いくらなんでも最初のエッチをそんな短時間で済ませようとする奴いないって」

「へぇっ?」

 深雪は唐突に飛び出した単語に目を丸くした。

 エッチって……、勿論ホテルに入るということはそういうことだったんだけれど…………

「植田さん初めてだよね? 純情そうだし」

「あ……いや……」

 改めて言われるとカーッと体温が上昇する。深雪は顔色で返事をしていた。




「……ともかくそういうことよ。納得したらお風呂入っといで。文句は文句で、後でたっぷり言うから」

 友香に追い立てられ、落ち着くまもなく部屋を出る。

 三人はやや残念そうではあったが友香が助け船を出しているとわかったので、ひとまず目をつぶってくれた。

 正直ことの顛末には物足りないが、まだ聞きたいことはたくさんある。風呂から戻ったらたっぷり質問すればいい、といったところだろう。




 深雪と和貴が高台寺を出たのは19時39分。

 それからの移動時間を考えれば実際自由に使えるのは30分程度だっただろう。

 つまりあの場所であんな誤解ができるのは、それを知らない二人だけだったということだ。

 無知は罪、とはよく言ったものである。

 ――――合掌。
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