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レオノールの本音
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レオノールの意見を尊重し、共感してくれるのは嬉しい。
けれど、どうも内緒にして欲しいとの意向が伝わっていない気がする。
こちらは恥ずかしいから、黙っていてくれと頼んでいる。
後世に残されたりしたら堪らない。
「ただし」
こちらの願いを聞いているのかいないのか。
夫人は再び、眼鏡の奥に光を宿す。
「それは妃殿下のご事情であって、クラウディオ殿下のお気持ちはまた別です。これまでどのような女性がお声をかけようと相手にもされませんでした。殿下を射止めるには相当の努力が必要となります。私が申し上げるのも何ですが、殿下はあの通り大変に高潔で完璧主義なお方です。しかし、私はできる限りお手伝いをさせていただきましょう」
「え? じゃあ夫人は、私がクラウディオ様を籠絡するために協力してくれるって仰るんですか?」
「籠絡とは穏やかでありませんが、そう捉えて頂いて結構です。妃殿下が礼節を学び、貴婦人の手本となる振る舞いを身につければ私は務めを果たせます。妃殿下にとっても、美しく品のある所作は殿下を心酔させる武器となるでしょう」
「心酔……クラウディオ様が、私に。ぜひ、教えてください……!」
レオノールは目を輝かせて、リュシエンナの手を取った。
誰よりもクラウディオの近くにいられる。
それだけでも充分、幸せだと思っていたが、クラウディオが惚れてくれるなら。こんなに嬉しいことはない。
グッと身を寄せて夫人に迫ると、彼女は少し圧倒されたように身体を退いた。
「それは……もちろんですが。私のレッスンは厳しいですよ。根本から叩き直さねばなりませんし、妃殿下の振る舞いはまるで殿方のようです」
「任せてください。私、スパルタには強いので!」
盛りのついた犬のように押し迫る勢いのレオノールを苦笑混じりに見つめてから、リュシエンナはコホンと咳払いをして再び厳しい顔つきに戻った。
「かしこまりました。では、早速ではありますが、お茶会での礼節をご教授しましょう。まずはお召し替えから」
リュシエンナがそう告げると同時に、タイミングを見計らったように扉がノックされた。
「失礼いたします――お茶をお持ちしました」
シャヘルが銀盆を抱えて戻ってきた。
緊張した面持ちで二人の様子を窺う。
どうやら部屋の空気が先ほどまでと違うことに気づいたらしい。
「遅かったですね」
リュシエンナは静かな声音で言うと、侍女の手元を一瞥する。
盆に並べられた茶器からは、うっすらと湯気が立っていた。
「まあ……これはちょうど良い。冷めたお茶であっても妃殿下は気品を保って飲まれなければなりませんから。シャヘル、そこに置きなさい」
「……は、はい」
戸惑いを隠せない様子で茶器をテーブルに並べながら、シャヘルは訝しげに二人の間を見た。
「それと、侍女長を呼んでらっしゃい。これからの配置換えを指示します。その際に厨房へ伝言を。明日までにもっとまともな茶葉を用意しておくようにと」
「侍女長を? 配置換えって、それは」
リュシエンナが口早に命じると、シャヘルは目に見えて狼狽した。
「クラウディオ殿下は紅茶を好まれませんもの。用意がなくても仕方ありません。貴女たちが王太子妃にお茶の一つも出さない役立たずなことくらい、聞かずとも分かっています。ぐずぐずせずに行きなさい!」
反論を遮り、リュシエンナはピシャリと言い放つ。
けれど、どうも内緒にして欲しいとの意向が伝わっていない気がする。
こちらは恥ずかしいから、黙っていてくれと頼んでいる。
後世に残されたりしたら堪らない。
「ただし」
こちらの願いを聞いているのかいないのか。
夫人は再び、眼鏡の奥に光を宿す。
「それは妃殿下のご事情であって、クラウディオ殿下のお気持ちはまた別です。これまでどのような女性がお声をかけようと相手にもされませんでした。殿下を射止めるには相当の努力が必要となります。私が申し上げるのも何ですが、殿下はあの通り大変に高潔で完璧主義なお方です。しかし、私はできる限りお手伝いをさせていただきましょう」
「え? じゃあ夫人は、私がクラウディオ様を籠絡するために協力してくれるって仰るんですか?」
「籠絡とは穏やかでありませんが、そう捉えて頂いて結構です。妃殿下が礼節を学び、貴婦人の手本となる振る舞いを身につければ私は務めを果たせます。妃殿下にとっても、美しく品のある所作は殿下を心酔させる武器となるでしょう」
「心酔……クラウディオ様が、私に。ぜひ、教えてください……!」
レオノールは目を輝かせて、リュシエンナの手を取った。
誰よりもクラウディオの近くにいられる。
それだけでも充分、幸せだと思っていたが、クラウディオが惚れてくれるなら。こんなに嬉しいことはない。
グッと身を寄せて夫人に迫ると、彼女は少し圧倒されたように身体を退いた。
「それは……もちろんですが。私のレッスンは厳しいですよ。根本から叩き直さねばなりませんし、妃殿下の振る舞いはまるで殿方のようです」
「任せてください。私、スパルタには強いので!」
盛りのついた犬のように押し迫る勢いのレオノールを苦笑混じりに見つめてから、リュシエンナはコホンと咳払いをして再び厳しい顔つきに戻った。
「かしこまりました。では、早速ではありますが、お茶会での礼節をご教授しましょう。まずはお召し替えから」
リュシエンナがそう告げると同時に、タイミングを見計らったように扉がノックされた。
「失礼いたします――お茶をお持ちしました」
シャヘルが銀盆を抱えて戻ってきた。
緊張した面持ちで二人の様子を窺う。
どうやら部屋の空気が先ほどまでと違うことに気づいたらしい。
「遅かったですね」
リュシエンナは静かな声音で言うと、侍女の手元を一瞥する。
盆に並べられた茶器からは、うっすらと湯気が立っていた。
「まあ……これはちょうど良い。冷めたお茶であっても妃殿下は気品を保って飲まれなければなりませんから。シャヘル、そこに置きなさい」
「……は、はい」
戸惑いを隠せない様子で茶器をテーブルに並べながら、シャヘルは訝しげに二人の間を見た。
「それと、侍女長を呼んでらっしゃい。これからの配置換えを指示します。その際に厨房へ伝言を。明日までにもっとまともな茶葉を用意しておくようにと」
「侍女長を? 配置換えって、それは」
リュシエンナが口早に命じると、シャヘルは目に見えて狼狽した。
「クラウディオ殿下は紅茶を好まれませんもの。用意がなくても仕方ありません。貴女たちが王太子妃にお茶の一つも出さない役立たずなことくらい、聞かずとも分かっています。ぐずぐずせずに行きなさい!」
反論を遮り、リュシエンナはピシャリと言い放つ。
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