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蜂の光明
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「くっ……、その通りでございますわ、今は確かに」
今にも叫び出しそうなほど、顔を茹で蛸のように真っ赤にしていたのに、カナリーは言葉の矛先を収めた。
「申し訳ありません、殿下。私、少々体調が芳しくないものですから、失礼しますわ」
ふぅっ、といかにも心を鎮める動作をしてから、ゆっくりと扇を開く。
周囲で青ざめていたご令嬢に、順に目をやって合図を送った。
「では、わたくしたちも、御前、失礼致します……」
即座に従ったのはミカエラだ。
バジル侯爵、ペレス子爵、ハロルド伯爵はベラスコ派に与していると見て取れた。
「では」と頭を下げて、カナリーは扇で口元を覆い隠した。
「偉そうにしていられるのも、今のうちだけですわ。お飾りの妃が」
そうして振り返ると同時に、皮肉をボソリ。
扇で隠した裏でこぼすのを、レオノールは聞き逃さなかった。
ガシッ
咄嗟にカナリーの肩を掴み止める。
「カナリー嬢、口には気をつけなさい。私はとても耳が良いので、聞きたくない醜聞も耳に入るのです」
「いったい何の話でしょう? 私は何も申し上げておりませんが」
絶対に、聞き違えではない。
カナリーは、はっきりと口にしたにもかかわらず、堂々と知らばっくれた。
これが”貴族流”というやつか。
確かに、音での伝達は一時的なもので、証拠は残らない。
最近はメリッサやリュシエンナが傍にいてくれたから、すっかり忘れていた。
カナリーは憎まれ口を叩いたのがバレて困るどころか、むしろ嬉々として口端を釣り上げた。
レオノールを挑発するためにわざと聞かせたようだ。
「まあ! わざと聞こえるように呟いたのね。性根の悪いお嬢さんだこと」
そこまでされては、いくら呑気者のレオノールでも黙っていられない。
何か気の利いた仕返しはできないものかと頭をフル回転させたが、結局は当たり前の感想しか出てこなかった。
「クラウディオ様は横槍を入れた私に感謝しなくちゃいけないわね。こんな捻くれたお嬢さんを妻にしなくて済んだんだから」
これも素直な感想だ。
リュシエンナから一通りの情勢を教わった時に、クラウディオには婚約者候補がいたと聞かされた。
それらを押しのけて自分が横入りをしたと知って、多少の罪悪感を覚えていた。
けれどカナリーがこんなに性悪な女なら、自分のほうが幾分かマシではと思える。
一連の行動を見る限り、レオノールの推察は恐らく正しい。
カナリーは高慢だし、大分、性根も曲がっているだろう。
行動を共にしている令嬢の様子を見ても、それは明らかだ。
レオノールとカナリーの対立を前に、身を寄せ合うようにして気を揉んでいる。
痛々しささえ漂っていた。
健全な友情でないことは明らかだ。
バキンッ
当のカナリーは、今度は口をへの字に曲げて、力任せに扇子をへし折った。
よっぽど躾が行き届いているのか、レオノールには直接働きかけない。
責められないギリギリのラインを狙っている。
令嬢たちは揃ってびくんと肩を揺らしたが、レオノールは痛くも痒くもない。
今にも叫び出しそうなほど、顔を茹で蛸のように真っ赤にしていたのに、カナリーは言葉の矛先を収めた。
「申し訳ありません、殿下。私、少々体調が芳しくないものですから、失礼しますわ」
ふぅっ、といかにも心を鎮める動作をしてから、ゆっくりと扇を開く。
周囲で青ざめていたご令嬢に、順に目をやって合図を送った。
「では、わたくしたちも、御前、失礼致します……」
即座に従ったのはミカエラだ。
バジル侯爵、ペレス子爵、ハロルド伯爵はベラスコ派に与していると見て取れた。
「では」と頭を下げて、カナリーは扇で口元を覆い隠した。
「偉そうにしていられるのも、今のうちだけですわ。お飾りの妃が」
そうして振り返ると同時に、皮肉をボソリ。
扇で隠した裏でこぼすのを、レオノールは聞き逃さなかった。
ガシッ
咄嗟にカナリーの肩を掴み止める。
「カナリー嬢、口には気をつけなさい。私はとても耳が良いので、聞きたくない醜聞も耳に入るのです」
「いったい何の話でしょう? 私は何も申し上げておりませんが」
絶対に、聞き違えではない。
カナリーは、はっきりと口にしたにもかかわらず、堂々と知らばっくれた。
これが”貴族流”というやつか。
確かに、音での伝達は一時的なもので、証拠は残らない。
最近はメリッサやリュシエンナが傍にいてくれたから、すっかり忘れていた。
カナリーは憎まれ口を叩いたのがバレて困るどころか、むしろ嬉々として口端を釣り上げた。
レオノールを挑発するためにわざと聞かせたようだ。
「まあ! わざと聞こえるように呟いたのね。性根の悪いお嬢さんだこと」
そこまでされては、いくら呑気者のレオノールでも黙っていられない。
何か気の利いた仕返しはできないものかと頭をフル回転させたが、結局は当たり前の感想しか出てこなかった。
「クラウディオ様は横槍を入れた私に感謝しなくちゃいけないわね。こんな捻くれたお嬢さんを妻にしなくて済んだんだから」
これも素直な感想だ。
リュシエンナから一通りの情勢を教わった時に、クラウディオには婚約者候補がいたと聞かされた。
それらを押しのけて自分が横入りをしたと知って、多少の罪悪感を覚えていた。
けれどカナリーがこんなに性悪な女なら、自分のほうが幾分かマシではと思える。
一連の行動を見る限り、レオノールの推察は恐らく正しい。
カナリーは高慢だし、大分、性根も曲がっているだろう。
行動を共にしている令嬢の様子を見ても、それは明らかだ。
レオノールとカナリーの対立を前に、身を寄せ合うようにして気を揉んでいる。
痛々しささえ漂っていた。
健全な友情でないことは明らかだ。
バキンッ
当のカナリーは、今度は口をへの字に曲げて、力任せに扇子をへし折った。
よっぽど躾が行き届いているのか、レオノールには直接働きかけない。
責められないギリギリのラインを狙っている。
令嬢たちは揃ってびくんと肩を揺らしたが、レオノールは痛くも痒くもない。
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