「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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貴方の妃でいるために

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 後ろ手で窓を開けるとカタン……と音を立てて外側に開いた。

 入り込んだ外気は冷たいのにどこか水気を含んでいて、湿っぽい。

 雨が降るのだろうか。

「行くな。そんな義務はもう、どうだっていい。この俺が行くなと言っているんだ」

 レオノールがクラウディオとの結婚を望んだ際、王家には”エルグランの危機には国の切り札としてレオノールが立ち向かってくれる”だろうとの打算があった。

 反対派もその確たる見返りがあるからこそ、認めざるを得なかった。

 レオノールもそれを覚悟でエルグランとクラウディオに忠誠を誓い、夫となった彼の為に身を捧げると決めている。

 圧倒的な戦闘力。

 それが身分も後ろ盾もないレオノールが持っている、唯一無二の武器だった。

「頼むから、行くな。君が……俺を愛しているなら、行かないでくれ」

 呼びかけに応じず、窓の桟に爪先を掛けると、クラウディオの声が僅かに掠れた。

 哀願するような呟きに、心が震える。

 愛してると言ってくれた。

 行かないでと乞うてくれた。

 きっと一時的な方便でなく、今のクラウディオはレオノールを愛してくれている。

 でも、だからこそ行かなければ。

 これからも妃として、彼の隣に立ち続けるために。

「愛しています。クラウディオ様、でも行きます」

 一言で総てを託して、レオノールは窓枠に飛び乗った。

 胸が痺れるほど甘く、切ない感触に後ろ髪を引かれながら、そっと振り返る。

 蒼い双眸と絡むように見つめ合って、レオノールは笑った。

 夜の闇に身を踊らせると、クラウディオの叫びが宙に木霊した。

 悲鳴に近い叫びの内容は不明瞭だ。

 けれども、届いた気がした。

 だから、レオノールは窓から身を乗り出しているだろうクラウディオへ、笑って手を振った。

 遙か上空には分厚い雲が空一面に広がって、月の明かりを遮っている。

 思ったより風は強くない。

(……門衛を叩き起こして、武器庫を開けてもらおう。それと馬も)

 レオノールは空中で身を翻して、大地に着地した。

 どんな希望の明かりも、友もない。

 初めての孤独な旅に、レオノールは身を投じようとしていた。



 ***



 今回は出立を秘匿する理由がない。

 レオノールが馬を引き、堂々と開門を迫ると、城門の門番は大慌てで桟橋を下ろしに向かった。

「そんななりでどこへ行くのさ」

 寝巻きのまま、部屋を飛び出したレオノールは、武器庫に常備してあった騎士服を身に纏っていた。

 身の丈は合っているが、男性とは体型が違うためフィットしていない。

 ウエストはガバガバのためベルトで縛っても布の余りがひどく、ズボンも貫頭衣もシワシワだ。

 胸元はキツくて動きにくい。

 サイズの合わないソードベルトに借り物の大剣。

 確かにあまり、いい格好とは言えない。
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