「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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闇の力

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 だが、違うような気がしながらも否定しきれない。

 じわりじわりと、ブルネンの声が足元から這い上がり、耳から頭に語りかけてくるようだ。

「アルヴァロ王子の中身は……オーグレイルもまた、レオノールを女として欲している。妻にして、大切にするだろう……」

「突然何を言い出すんだ。魔王がレオノールを大切に扱うはずがない」

「王位継承権を持つ気高い血筋を持つ王子の身体に、世を震撼させた魔竜王の魔力が宿る。その伴侶となればもはや誰も敵わない。誰もが憧憬を向け、慕い、敬う。そんな華々しい人生を送ることができる」

 寡黙な性格に反して、ブルネンはスラスラと言葉を紡いだ。

 熱弁を振るっている最中でも、彼の攻撃の手が止まることは無い。

 クラウディオは反論もできずに、呆然とその背中を見つめた。

 言葉面の、表面だけは理解できても納得など到底できない。

 なのに勝手に腕が弛緩して、構えを維持するのがやっとだ。

 ……そうなのだろうか?

 ここへ至って、ようやくレオノールへの気持ちを自覚したクラウディオと共にエルグランに戻るより、アルヴァロの身体と魔王オーグレイルの強力な魔力を併せ持つ者と共に、新たな国を作るほうが、レオノールのためなのか。

 魔王と呼ばれ悪意の代名詞であった竜魔王オーグレイルが、レオノールを得ることで善となるなら……それこそが最良ではなかろうか。

 クラウディオは魔法も使えず、妻の武力に華を添える程度の力しかない。

 彼女にとっては足枷にしかならない存在だ。

 今回だとて、なすすべもなく、レオノールを単身でノーキエへ旅立たせた。

 政治に左右され、妻の一人も守れない……。

「そうだったのか。俺と一緒に帰っても、レオノールには一つも利点がないのか」

 自分の声が、やけに遠い。

 ズ……

 足元の靄がゆっくりと広がっていた。

 濃さを増して膝から下はもう見えなくなっていた。土を踏みしめていた踵が、地中に沈み始める感触がする。

「クラウディオ様……? 何言ってるんですか」

 ブルネンがまた、何事かを呼びかけていた。

 だが内容まで、クラウディオの耳には届かない。

「ノーキエにいるほうが、レオノールは幸せだ。アルヴァロは、レオノールを愛している……」

 考えていたことは他にも色々とあったはずなのに、他に言葉が出てこない。

 まるで肺腑までを侵食されているように、息が苦しい。

「何をっ……! 駄目です、クラウディオ様!! そもそもレオが貴方を選んだんだ! 気をしっかり持っーー」

 怒鳴り声と、腕を掴まれるような衝撃があった。

 だが、その瞬間に足場の板が外されたような浮遊感がクラウディオを襲う。

 ついには目の前まで真っ暗になって、クラウディオは闇に引き摺り込まれた。
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