43 / 140
舞踏会
2
しおりを挟む
だけど……違うかもしれない。
「どうした、もうぼーっとしてるなら先に部屋に戻れ」
「だ、大丈夫です!」
オリヴィエは慌てて、否定した。
やっぱり、もしかしたら、以前のルーカスも、少しは残っているのかも。
だって、今、笑った……とても優しい笑顔だった。
すぐに仏頂面に戻ってしまったけれど、オリヴィエはとても嬉しかった。
「オリヴィエとは最終の打ち合わせがあるんでしょう? 私たちは先に失礼してもよろしいですか?」
セルゲイの台詞に、えっ? とオリヴィエはルーカスに目を移した。
無駄を嫌うルーカスなら、明日、馬車の中で打ち合わせれば充分だとでも言いそうだ。
ルーカスは一瞬、息を呑んだように見えたが、慌てたように頷いた。
「そうだな、各自準備を済ませたら、あとは自由時間だ。お前たちも充分に休んで明日に備えろ」
「じゃあ俺たちはこれで。団長、お疲れ様です」
ルーカスの言葉を引き取って、セルゲイは団員達に解散を告げた。
ぞろぞろと6人が部屋を出ると、しん、と部屋は静まり返った。
「あの、打ち合わせとは、何でしょうか」
オリヴィエは、おずおずとルーカスに問いかけた。
「どうした、随分緊張しているな」
改めて目が合い、どきんと胸が跳ねる。
朝見ても、夜見ても、まだ、慣れない。
この世にこんなに完璧な姿形の男性がいるだろうか。
オリヴィエは、ルーカスの端正な顔に圧倒された。
整った眉に、切れ長の眼は少し意地悪そうに、目尻に向かい上がっている。
すっと通った鼻筋に、意思の強そうな口元。
どこを取っても美しくて、ため息が出そうだ。
というか、どこまで行ってもオリヴィエの好み過ぎて、どんなに忘れようとしてもときめいてしまう。
王子様らしくない、と感じたクールな態度も、時と共にオリヴィエの〝好み”に書き換えられた。
こんなに疲れていても、どきどきと胸が高鳴るのだから重症だ。
「緊張しているつもりは……ないのですが」
オリヴィエはルーカスから目を外して、俯いた。
「具合でも悪いのか?」
心配そうな声が降ってくる。
(本当に、どうしてしまったのだろう)
「そうか……2人きりだからと心配するな。何もしない」
「!」
オリヴィエは、弾かれたように顔を上げた。
(まさか、これは何かの罠?)
どこか、いつもの棘がない。
心を見透かされて、揶揄われているような気がする。
「な……何もってなんですか? 私そんなに子供じゃありませんから。お気遣いなく」
(あれ? 気を遣わないでって、何かして良いって意味に取られる?)
オリヴィエは自分で言って、自分に疑問を投げかけた。
「いえ、違うんです! そう言う意味ではなくて……」
「そういう意味、とはどういう意味だ?」
言葉尻を捕まえられ、オリヴィエはしまったと口を手で塞いだ。
ルーカスは、意地悪をしている風でもない。
本当に分からないようで、キョトンとした表情でこちらを見ている。
「どうした、もうぼーっとしてるなら先に部屋に戻れ」
「だ、大丈夫です!」
オリヴィエは慌てて、否定した。
やっぱり、もしかしたら、以前のルーカスも、少しは残っているのかも。
だって、今、笑った……とても優しい笑顔だった。
すぐに仏頂面に戻ってしまったけれど、オリヴィエはとても嬉しかった。
「オリヴィエとは最終の打ち合わせがあるんでしょう? 私たちは先に失礼してもよろしいですか?」
セルゲイの台詞に、えっ? とオリヴィエはルーカスに目を移した。
無駄を嫌うルーカスなら、明日、馬車の中で打ち合わせれば充分だとでも言いそうだ。
ルーカスは一瞬、息を呑んだように見えたが、慌てたように頷いた。
「そうだな、各自準備を済ませたら、あとは自由時間だ。お前たちも充分に休んで明日に備えろ」
「じゃあ俺たちはこれで。団長、お疲れ様です」
ルーカスの言葉を引き取って、セルゲイは団員達に解散を告げた。
ぞろぞろと6人が部屋を出ると、しん、と部屋は静まり返った。
「あの、打ち合わせとは、何でしょうか」
オリヴィエは、おずおずとルーカスに問いかけた。
「どうした、随分緊張しているな」
改めて目が合い、どきんと胸が跳ねる。
朝見ても、夜見ても、まだ、慣れない。
この世にこんなに完璧な姿形の男性がいるだろうか。
オリヴィエは、ルーカスの端正な顔に圧倒された。
整った眉に、切れ長の眼は少し意地悪そうに、目尻に向かい上がっている。
すっと通った鼻筋に、意思の強そうな口元。
どこを取っても美しくて、ため息が出そうだ。
というか、どこまで行ってもオリヴィエの好み過ぎて、どんなに忘れようとしてもときめいてしまう。
王子様らしくない、と感じたクールな態度も、時と共にオリヴィエの〝好み”に書き換えられた。
こんなに疲れていても、どきどきと胸が高鳴るのだから重症だ。
「緊張しているつもりは……ないのですが」
オリヴィエはルーカスから目を外して、俯いた。
「具合でも悪いのか?」
心配そうな声が降ってくる。
(本当に、どうしてしまったのだろう)
「そうか……2人きりだからと心配するな。何もしない」
「!」
オリヴィエは、弾かれたように顔を上げた。
(まさか、これは何かの罠?)
どこか、いつもの棘がない。
心を見透かされて、揶揄われているような気がする。
「な……何もってなんですか? 私そんなに子供じゃありませんから。お気遣いなく」
(あれ? 気を遣わないでって、何かして良いって意味に取られる?)
オリヴィエは自分で言って、自分に疑問を投げかけた。
「いえ、違うんです! そう言う意味ではなくて……」
「そういう意味、とはどういう意味だ?」
言葉尻を捕まえられ、オリヴィエはしまったと口を手で塞いだ。
ルーカスは、意地悪をしている風でもない。
本当に分からないようで、キョトンとした表情でこちらを見ている。
162
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる