将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら

文字の大きさ
83 / 140
陰謀

しおりを挟む
「え? そんな」

 てっきり、リリアを案内するための軍資金かと思っていた。

 驚いてルーカスを見返すと、気まずそうに目を落とす。

 しかし、オリヴィエは見逃さなかった。

 俯く頬は隠せても、赤くなった耳は丸見えだ。

(私に、服を……贈ろうとしてくれているの? どうして……?)

 嬉しいけれど、何故なのかオリヴィエにはわからない。

「いちいち寮へ帰るのも手間だろう。週末から慌ただしくて、お互い休む間もないし」

「ま、あ……助かりますが」

 どういう訳か、急にルーカスは挙動不審になった。

 だが、リリアを待たせないためだと言うなら、合点がいく。

 喜んでしまった、自分が恨めしい。

「いや、そのつまり、日を見て一度、お前を食事に誘いたいんだが……良かったらその時に着る服でも……と」

 ルーカスは、最後のほうは聞き取れないような尻つぼみな声で囁いた。

「食事……に?」

 オリヴィエは問い返した。

 一瞬遅れて言葉の意味を理解すると、かあっと全身が火照るのを感じた。

 リリアのためだった、とがっかりした気分が、一気に浮上する。

(食事って……それは、デートの誘いってこと……?)

「はい! 行きたい、です。ぜひ……!」

 オリヴィエはロクに、解釈の真偽もせずに返事をしていた。

 食事に誘われたのだと理解したが、間違っていたらとても恥ずかしい。

 けれど、躊躇う余裕もないくらいに舞い上がった。

 行かない、選択肢はない。

「私、都合の悪い日はありません。いつでも、お声がけ頂ければ……」

 ドキドキして、声が上ずった。

 ルーカスは、オリヴィエの勢いに一瞬たじろいだが、直ぐにくしゃりと笑って「そうか」と答えた。

「じゃあ、今日のことは頼んだぞ」

 はにかんだルーカスと目が合う。

 それだけで、オリヴィエの胸は小さく跳ねた。

 オリヴィエが頷くと、ルーカスはそれ以上を口にせず、踵を返して去って行く。

(嬉しい。ルーカス……でも、どうして?)

 去り行く背中を、うっとりと目で追ってしまうのは、恋する乙女の性なのか。

 服や食事に関しての理由や、何故誘われたのかは全く不明だ。

 だが、2人で食事ができるのだから、やっぱり素直に喜んでおきたい。

(……ん? 2人、よね? 確かめれば良かった。けど、そんな間もなかったし)

 ルーカスが完全に見えなくなった。

 そこでようやくオリヴィエは、急に冷静になり、一連の流れを思い返す。

 どんな順番で、何と言って誘われたっけ。

 途中で舞い上がったため、詳細な言葉やニュアンスまでは思い出せない。

 それでもなんとか、勘違いではないと確証が欲しくて頭を捻る。

 しかし、不意に風が吹いたと思ったら、上着の裾を引かれた。

「オリヴィエさん? レヴァンシェル様もう行っちゃったよ」

 リリアの声で我に返った。

「あ、ああ。ごめんなさい。ちょっと考え事を」

 オリヴィエは、上着のポケットに手を入れると、受け取ったばかりの皮袋を仕舞った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

一年だけの夫婦でも私は幸せでした。

クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。 フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。 フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。 更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

処理中です...