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魔物
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台所にいた使用人たちは、大地の震動の対応に慣れているようで、火を始末すると隅に設置された台の下で丸くなっていた。
水を汲んでダイニングに戻ると、リリアが気遣わし気にルーカスに構っている。
「……ルーカス様も、お部屋で休んでいたほうが良いのではないですか?」
オリヴィエは水の入ったグラスを差し出しながら、尋ねる。
「いいや、今は気がしっかりしているし、いつ、次が起きるかも知れない。対策を練らなければ」
「ではせめて、お医者様を手配してもよろしいですか? いや、魔物への知識もとなると、お医者様では難しいですか」
「そうだな。街医者くらいではとてもわからないだろう。うっかり物見遊山で来てしまったが、もっと慎重になるべきだった」
「では、早馬を飛ばして王都から優秀な医師や専門家を呼び寄せるのですね」
ルーカスは頷きかけて、頭を振った。
「いや、早馬も必要だが、お前はリリアたちを連れて先に王都へ帰れ」
「えっ」と思いもかけない指令に、一瞬理解が追い付かない。
「この先何が起きるかわからん。判断によってはデュランド全領民に避難命令を下さなければならないかもしれない。それが少し早まるだけだ」
「そんな! 嫌です。私だけ……」
「嫌だと? これは命令だ。拒否権などない」
咄嗟に反発するが、打ち消される。
ルーカスの台詞は正論だし、上官命令だ。オリヴィエは否とは言えない。
「団長の命令に反対する気はないのですが、聖女様を王都にお連れするのですか? 魔の脅威が近い時こそ、聖女様のご加護が必要なのでは? それなのに連れ帰っては……」
クリストファーが割って入る。
オリヴィエを援護してくれるのかと思いきや、当てが外れた。
「いや、リリアはまだ聖女となって日が浅い。心の備えもできていない。だから」
「デュランドへの同行を望んだのは聖女様だと聞き及んでいます。何も前線で戦闘をさせよと望んでいる訳ではありません。魔物が出るかもしれない土地から聖女様が逃げ出せば、国教会や王家への信用が揺らぐのではありませんか」
「しかしな……」
ルーカスは嘆息と共に下を向いた。
俯く直前、リリアの様子を窺ったのを、オリヴィエは見逃さない。
リリアはすっかり顔色を失っていた。
リリアを思いやるルーカスの対応に、オリヴィエの感情は複雑に揺れたが、動揺を顔に出さないよう気を引き締める。
経過がどうであれ、リリアは魔物に怯えている。
それはそうだ。
水を汲んでダイニングに戻ると、リリアが気遣わし気にルーカスに構っている。
「……ルーカス様も、お部屋で休んでいたほうが良いのではないですか?」
オリヴィエは水の入ったグラスを差し出しながら、尋ねる。
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「ではせめて、お医者様を手配してもよろしいですか? いや、魔物への知識もとなると、お医者様では難しいですか」
「そうだな。街医者くらいではとてもわからないだろう。うっかり物見遊山で来てしまったが、もっと慎重になるべきだった」
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ルーカスは頷きかけて、頭を振った。
「いや、早馬も必要だが、お前はリリアたちを連れて先に王都へ帰れ」
「えっ」と思いもかけない指令に、一瞬理解が追い付かない。
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「そんな! 嫌です。私だけ……」
「嫌だと? これは命令だ。拒否権などない」
咄嗟に反発するが、打ち消される。
ルーカスの台詞は正論だし、上官命令だ。オリヴィエは否とは言えない。
「団長の命令に反対する気はないのですが、聖女様を王都にお連れするのですか? 魔の脅威が近い時こそ、聖女様のご加護が必要なのでは? それなのに連れ帰っては……」
クリストファーが割って入る。
オリヴィエを援護してくれるのかと思いきや、当てが外れた。
「いや、リリアはまだ聖女となって日が浅い。心の備えもできていない。だから」
「デュランドへの同行を望んだのは聖女様だと聞き及んでいます。何も前線で戦闘をさせよと望んでいる訳ではありません。魔物が出るかもしれない土地から聖女様が逃げ出せば、国教会や王家への信用が揺らぐのではありませんか」
「しかしな……」
ルーカスは嘆息と共に下を向いた。
俯く直前、リリアの様子を窺ったのを、オリヴィエは見逃さない。
リリアはすっかり顔色を失っていた。
リリアを思いやるルーカスの対応に、オリヴィエの感情は複雑に揺れたが、動揺を顔に出さないよう気を引き締める。
経過がどうであれ、リリアは魔物に怯えている。
それはそうだ。
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