将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら

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魔物

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「リリアには俺から話す。呼んできてくれ」

 ルーカスは深く息を吐いた。

 クリストファーの指摘通りだ。

 リリアは聖女だからこそ、この視察への同行を許された。

 更に各地で領主の歓迎も受けている。

 それなのに、有事に真っ先に逃げたとあっては資質を疑われる。

「大丈夫ですよ。団長の優しさは、聖女様にも充分伝わりますから」

 退出際に、オリヴィエが優しく微笑んだ。

(そんな風に、微笑わないでくれ……)

 些細な感傷に浸っている状況でないのに、ルーカスはつい、オリヴィエ美貌を目で追ってしまう。

 オリヴィエは自分をどう見ているのだろう。

 成り行きに流されるまま、リリアを娶ろうとしているルーカスに何を想うのか。

 その妃候補の心情を気にしすぎて采配を誤る上司は、あの清廉な瞳にどのように映るだろう。

 一刻も早く誤解を解きたいのに。焦燥のみが募る。

 クリストファーは、自分とオリヴィエを逃がしたいと明言した。

 すると、オリヴィエはルーカスを追って騎士団へ入団し、今でも想いを寄せていると考えることもできる。

 奇怪な蟲の出現は得体のしれない危機ではある。

 だが、聖女の加護が発現していない今、治められさえすればひょっとして、ルーカスにとってのチャンスと変わるかもしれない。

「そういえば、時間がないとは、どういう意味だ?」

 オリヴィエの去り際に、背へ向かって問いかけると「えっ」と身体をこわばらせる。

「さっきクリストファーが言っていただろう。時間がない、と」

「そ、それは……」

 言い淀むオリヴィエの反応に、ルーカスは首を傾げた。

「言えないことなのか? 俺にも関係があるような話し方だった気がするが」

「兄は私の、騎士団への在籍を良く思っていませんから……恐らくそういった意味だと」

 納得のいく返事ではなかったが、オリヴィエは追及を避けるように部屋を出て行った。

 やや、気にはなるが、直ぐに頭を切り替えた。

 リリアへ何と言って聞かせよう。

(命じれば聞き分けるとは思うが……そもそも、どうしてリリアはあんなに怯えているんだ?)

 リリアが、魔物の危険性を熟知しているとは思えない。

 ルーカスが見る限りでは、リリアはどちらかと言えば無鉄砲な性質を兼ね備えているようだったのに。

 どうして魔物には怖気づくのだ?

 どちらにしてもリリアへの指示は、決まった。

 一つを片付けたら、次は各騎士の様子を見て、夜の警備をどう配置するか決めよう。

 頭の中で整理して、ルーカスはリリアとオリヴィエを待った。

 しかし、待てど暮らせど戻らない。

「団長、不甲斐ない姿をお見せしました。意識ははっきりしていますし、安静にするほど体に不調もないので、復帰させてください……」

 それどころか、第3隊副隊長のグレンが復帰を願い出ていた。
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