18 / 223
籠の外はどこ?
9
しおりを挟む
更に3男ともなれば、家督の相続順位も低いから、権威に対する魅力は乏しい。
「お前の目から見ても、俺は綺麗か?」
答えの見えている、棘のある質問だったのに、何故かアルダは嬉々としてアシュレイの瞳を覗き込む。
「綺麗だと、思うわ。ねえ、私の言葉は伝わってる? 私は遠まわしに嫌味を言っているのよ。どうして嬉しそうなの」
「俺は褒められ慣れているが、褒められながら嫌味な口を利かれたことはない。案外、悪くない」
最初は寡黙な印象だったのに、ひょっとしてただの、ヤバい奴ではなかろうか。
手を離してもらえないので、アシュレイは手を伸ばして目一杯後退った。
偉そうな男ほど虐げられたい願望を抱えていると、いつだか聞いた記憶がある。
「離してよ。気持ち悪い!」
「あまりつれなくするな。優しくできなくなる」
「要らない! 余計に気味が悪いわ」
手を引っ込めようと暴れていると、ふいにアルダが手を離した。
勢い余って尻餅をつく。
その隙にアルダは更に接近した。
板間に足を投げ出したアシュレイに圧し掛かるようにして、上から覗き込む。
「止めて! 退きなさい」
「命じられて、退くと思うか? ここはお前の国じゃない」
アルダはアシュレイの顎に指をかけると、強引に上を向かせた。
吐息を感じる距離に男の顔がある。
「今、お前の主は俺だ。俺はお前を好きにする権利がある。優しく言って分からないなら、身体に教え込んでやろうか」
「私の主は、私よ! 貴方じゃない。私の上から退きなさい」
豹変したアルダの態度に、アシュレイは怯みかけるも、強く言い放った。
アルダの瞳に獰猛な光が宿るが、アシュレイも負けずに睨み返す。
懐柔されれば痛い目に遭わないかもしれない。
けれど、嘘でも従いたくない。
そのために、婚礼から逃れたのだから。
「いいや。俺だ。この汚れない身体を開いてやれば、俺のものだとわかるだろう」
圧し掛けた身体の重心をずらして、アルダは片方の足をアシュレイの足の間に割入れた。
アシュレイの心拍は跳ね上がるが、動揺を意地で抑える。
「結局それ? そんなことで女が服従すると、信じてるのね! 家畜以下だわ。そんなみっともない思想は早々に捨てたほうが身のためよ」
結局あんたも、無理矢理に女性の尊厳を卑しめることが征服だと信じている愚か者なのか。
そんなの、人間以下の畜生の思想だ。アシュレイは嘲笑した。
「家畜だと? 侮辱するにもほどがある。じゃあ、証明して見るか?」
唸るような声が、一層低くなった。
アルダは大きな掌を、アシュレイの鳩尾に置く。
夜着の薄布の上から肌をなぞるように、下腹部まで滑らせる。
「お前の目から見ても、俺は綺麗か?」
答えの見えている、棘のある質問だったのに、何故かアルダは嬉々としてアシュレイの瞳を覗き込む。
「綺麗だと、思うわ。ねえ、私の言葉は伝わってる? 私は遠まわしに嫌味を言っているのよ。どうして嬉しそうなの」
「俺は褒められ慣れているが、褒められながら嫌味な口を利かれたことはない。案外、悪くない」
最初は寡黙な印象だったのに、ひょっとしてただの、ヤバい奴ではなかろうか。
手を離してもらえないので、アシュレイは手を伸ばして目一杯後退った。
偉そうな男ほど虐げられたい願望を抱えていると、いつだか聞いた記憶がある。
「離してよ。気持ち悪い!」
「あまりつれなくするな。優しくできなくなる」
「要らない! 余計に気味が悪いわ」
手を引っ込めようと暴れていると、ふいにアルダが手を離した。
勢い余って尻餅をつく。
その隙にアルダは更に接近した。
板間に足を投げ出したアシュレイに圧し掛かるようにして、上から覗き込む。
「止めて! 退きなさい」
「命じられて、退くと思うか? ここはお前の国じゃない」
アルダはアシュレイの顎に指をかけると、強引に上を向かせた。
吐息を感じる距離に男の顔がある。
「今、お前の主は俺だ。俺はお前を好きにする権利がある。優しく言って分からないなら、身体に教え込んでやろうか」
「私の主は、私よ! 貴方じゃない。私の上から退きなさい」
豹変したアルダの態度に、アシュレイは怯みかけるも、強く言い放った。
アルダの瞳に獰猛な光が宿るが、アシュレイも負けずに睨み返す。
懐柔されれば痛い目に遭わないかもしれない。
けれど、嘘でも従いたくない。
そのために、婚礼から逃れたのだから。
「いいや。俺だ。この汚れない身体を開いてやれば、俺のものだとわかるだろう」
圧し掛けた身体の重心をずらして、アルダは片方の足をアシュレイの足の間に割入れた。
アシュレイの心拍は跳ね上がるが、動揺を意地で抑える。
「結局それ? そんなことで女が服従すると、信じてるのね! 家畜以下だわ。そんなみっともない思想は早々に捨てたほうが身のためよ」
結局あんたも、無理矢理に女性の尊厳を卑しめることが征服だと信じている愚か者なのか。
そんなの、人間以下の畜生の思想だ。アシュレイは嘲笑した。
「家畜だと? 侮辱するにもほどがある。じゃあ、証明して見るか?」
唸るような声が、一層低くなった。
アルダは大きな掌を、アシュレイの鳩尾に置く。
夜着の薄布の上から肌をなぞるように、下腹部まで滑らせる。
499
あなたにおすすめの小説
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる