王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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アルダシール

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 住処を与え、処世術を学ばせ、いずれ一人で生きていけると確信できたら解放してやる。

 それまでの付き合いだ。

 自身に言い聞かせるように瞑目してから、アルダシールは一歩踏み出した。

 だが、扉に手をかけた瞬間に、形容し難い違和感を覚える。

(何だ?)

 どこに原因があるのかと周囲を見回したが、静寂が広がるのみだ。

 気配もなく、物音一つしない。

 やや、拍子抜けして中に入ると、やはりアシュレイの姿はなかった。

 それどころか、あらゆる物が消え失せていた。正にもぬけの殻だ。

 元から必要最低限の物しか置いていなかったが、並んでいた調味料の瓶まで消え失せている。

 テーブル一つだけがぽつんと残る部屋を前に、立ちすくむ。

(いったい何があった? まさかここに隠れているとカシタに知れたのか? そんな筈はない。それに……抵抗の跡もない)

 アルダシールは、いくつかの潜伏先を持っているが、選定の際には細心の注意を払っている。

 ルドレール子爵家は今でこそ落ちぶれているが3代前の当主の時代には王家に仕えるほどの威勢を誇る軍門だった。

 前当主が若くして亡くなり、長男は戦線での負傷が元でこの世を去った。

 女児2人が残った子爵家は親類から養子を貰い、危機を凌ごうと努めた。

 だが、それが大変な穀潰しで娘の持参金さえままならない窮地に陥った。

 アルダシールは子爵夫人へ援助を申し入れ、代わりに敷地内を自由に使用する権利を得た。

 持参金を用意してやり、使用人は最低限。

 街から無学で勤勉な者を選んだ。

(ならば……逃げたのか)

 アルダシールは無意識のうちに拳を握り締めていた。

 アシュレイに告げた話は嘘ばかりではない。

 ”アルダ”は汚れた仕事もする。

 王子のアルダシールが個人で使える私費はないに等しい。

 王宮内の情勢不安に対応するため、得た情報を元に商売を広げ、資金を作るようになった。

 場合によっては非合法の商売にも手を染めている。

 ……人間を攫ったのはアシュレイが初めてだったが。

「アシュレイ?」

 一縷の望みを託して、呼びかける。

 すると、望みに応えて、駆け寄る足音が接近した。背後の扉が開く。

「アルダ様! お帰りなさーい! お早いお戻りですね」

 しかし、現れたのはアミールだった。

 アミールはアルダの姿を認めるなり、猫なで声で駆け寄った。

「アシュレイはどこだ?」

 問いには答えず質問で返すと、ぎくりと表情を強張らせる。

「えっ、いないってことは……出て行ったんじゃないでしょうか」

 この娘は母親とは違い、小狡い性質を隠し持っている。
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