32 / 223
アルダシール
4
しおりを挟む
アミールはアルダシールを宥めようと懸命に弁明を重ねたが、逆効果だった。
ざわり、と総毛立つほどの不快に包まれる。
「シャルは、男だ」
「えっ、あっ、でも、……シャルなら、大丈夫でしょう」
アルダシールは怒りのあまり、こめかみに青筋を立てた。
言葉の途中でアミールの胸元を掴んで押し飛ばす。
と、その勢いで後ろに倒れこむ。
尻もちをついたまま怯えた様子を見せたが、アルダシールが薄く口角を上げると、アミールもまた釣られるように愛想笑いを浮かべた。
「シャルなら大丈夫?」
「シャルはアルダ様も知っての通り、あの性格ですから」
「そうか。お前がそう言うならそうなんだろうな」
当然ながら、アルダシールの目は笑っていない。
浮かべているのはアミールが必死に言い募る様を嘲笑う笑みだけだった。
急激に心が冷える。
アルダシールは冷笑を浮かべたまま、脅すように顔を覗き込んだ。
「服を脱げ」
「えっ、何で、そんな、急に」
アミールは僅かに、抵抗の意思を見せた。
少し脅せば命令に従っただろう。
だが、待つのも面倒で、ワンピースの縫い目を掴んで、左右に引き裂いた。
「きゃぁああっ! アルダ様……っ、何を」
「全部だ。むしり取られたくなければ脱げ」
裂いたワンピースを放り投げる。
アミールは信じられないと表情で訴えながらも、這うように逃げ惑った。
「やめてください、こんな……酷い!」
「酷い? 服を失うだけだろう。お前のしたことと同じだ。”大丈夫”だ」
「やっ! ごめんなさい。アシュレイにしたこを怒ってるんでしょう? それなら謝りますから……やめて!!」
今度は自ら脱ぐ意思はないと確信して、残った下着も無理矢理に剥ぎ取った。
身ぐるみはがされて身を縮めるアミールを横目に、アルダシールは剥がした服を拾い集める。
「……こんなの、いくらなんでも、あんまりです! 夫人に、訴えるから……っ、アルダ様に乱暴されたって」
アミールは屈辱と恐怖に全身を戦慄かせながら、涙を零す。
「その姿で邸に駆け込めるなら、やってみろ」
アルダシールはアミールの訴えを鼻で嗤った。
「解雇されて困るのは母親とお前ら家族だろう。だが、丁度いい。お前の顔はもう見たくない。2度と敷地に足を踏み入れるな」
「うっ……そんな」
アミールは俯いたまま、土を掻きむしった。
ぼたぼたと土に涙が零れ落ちたようだが、同情心は一切湧かない。
アルダシールは踵を返し、アシュレイのいるだろう泉へ足を向ける。
アミールが服を奪ってから、どれくらい時が経っているのだろう。
着るものがなく、途方に暮れているに違いない。
それとももう、シャルに助けを求めているだろうか……?
ざわり、と総毛立つほどの不快に包まれる。
「シャルは、男だ」
「えっ、あっ、でも、……シャルなら、大丈夫でしょう」
アルダシールは怒りのあまり、こめかみに青筋を立てた。
言葉の途中でアミールの胸元を掴んで押し飛ばす。
と、その勢いで後ろに倒れこむ。
尻もちをついたまま怯えた様子を見せたが、アルダシールが薄く口角を上げると、アミールもまた釣られるように愛想笑いを浮かべた。
「シャルなら大丈夫?」
「シャルはアルダ様も知っての通り、あの性格ですから」
「そうか。お前がそう言うならそうなんだろうな」
当然ながら、アルダシールの目は笑っていない。
浮かべているのはアミールが必死に言い募る様を嘲笑う笑みだけだった。
急激に心が冷える。
アルダシールは冷笑を浮かべたまま、脅すように顔を覗き込んだ。
「服を脱げ」
「えっ、何で、そんな、急に」
アミールは僅かに、抵抗の意思を見せた。
少し脅せば命令に従っただろう。
だが、待つのも面倒で、ワンピースの縫い目を掴んで、左右に引き裂いた。
「きゃぁああっ! アルダ様……っ、何を」
「全部だ。むしり取られたくなければ脱げ」
裂いたワンピースを放り投げる。
アミールは信じられないと表情で訴えながらも、這うように逃げ惑った。
「やめてください、こんな……酷い!」
「酷い? 服を失うだけだろう。お前のしたことと同じだ。”大丈夫”だ」
「やっ! ごめんなさい。アシュレイにしたこを怒ってるんでしょう? それなら謝りますから……やめて!!」
今度は自ら脱ぐ意思はないと確信して、残った下着も無理矢理に剥ぎ取った。
身ぐるみはがされて身を縮めるアミールを横目に、アルダシールは剥がした服を拾い集める。
「……こんなの、いくらなんでも、あんまりです! 夫人に、訴えるから……っ、アルダ様に乱暴されたって」
アミールは屈辱と恐怖に全身を戦慄かせながら、涙を零す。
「その姿で邸に駆け込めるなら、やってみろ」
アルダシールはアミールの訴えを鼻で嗤った。
「解雇されて困るのは母親とお前ら家族だろう。だが、丁度いい。お前の顔はもう見たくない。2度と敷地に足を踏み入れるな」
「うっ……そんな」
アミールは俯いたまま、土を掻きむしった。
ぼたぼたと土に涙が零れ落ちたようだが、同情心は一切湧かない。
アルダシールは踵を返し、アシュレイのいるだろう泉へ足を向ける。
アミールが服を奪ってから、どれくらい時が経っているのだろう。
着るものがなく、途方に暮れているに違いない。
それとももう、シャルに助けを求めているだろうか……?
472
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる