王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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予感

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 あまりに一瞬で通り過ぎたので、何に対してなのかまで自覚できない。

 とにかく、アルダの意見も一理ある。

 家屋を燃やして、家人に危害を加えんとする犯人がまだ近くにいる以上、不用意に茂みを出られない。

 草原には身を隠すところがない。

 しかし、この林の中のどのルートを使って犯人が逃亡を図るかなど、見当もつかない。

 夜まで潜んでいれば、やり過ごすだけは可能だろうが……

「やっぱりもう少しだけ移動しましょう。見通しの利く場所まで。犯人を突き止めたいでしょう」

「見通しが利けばこちらの姿も……」

「気付かれなきゃいいんでしょ」

 アルダが何か言いたげに一瞥したが、アシュレイは構わず馬まで取って返すと、括ってあった荷を取った。

 草原との境界が見渡せる辺りが良い。

「小刀をちょうだい。早く」

「……考えがあるんだな」

 懐から出した小刀を受け取って、アシュレイは不敵に笑ってみせた。

 今まで逃亡ばかりを優先して、気持ちが及び腰になっていた。

 こちらから仕掛けようと思えば、不思議と怖気づかないものだ。

「伏蔵するのよ。上手く行けば、奇襲もできるわ」

 アシュレイは、アルダの懸念を払拭するように力強く頷いた。

 いつまでもお荷物ではいられない。

 それに早々に安全を確保をして、先ほどの行為について、動機を追及してやる。





 ***





 アシュレイは通り過ぎざまに草を刈りながら林と草原の境界へ進んだ。

 荷駄の水筒で泥を湿らせ、脱いだローブに草を張り付けて、簡易の偽装カモフラージュを作る。

「貴方は大きいからじっとしていたほうがいいわね。偽装も泥だからすぐ落ちちゃうし。私が動くわ」

 言いつつ、茂みに身を屈め、這いつくばるように藪を搔き分けながら移動し、周囲の状況を探る。

「セレンティアでは女子供にこんな護身術を授けるのか?」

 アルダの疑問に、アシュレイは答えに困る。

「護身術……まあ、そんなところよ」

 セレンティアにも日本にも、こんな護身術は存在しないが、説明できないので言葉を濁した。

「これだけ徹底すれば、敵方の発見は困難だな。遊撃の手法のようだ」

 妙に感心をされて、アシュレイは居心地が悪い。

「しかし、人間相手なら有効だが、獣の多い地域では使えないか……」

「ちょっと。静かにしないと、意味がないわよ」

「ん」

 アシュレイの静止に、アルダは素直に黙り込む。

 ルドレール邸のある丘陵から街へ移動するには、南西と南東、2通りのルートがある。

 今いる位置からなら、どちらへ向かっても、視認が可能だ。

 2人の潜伏地点からよほど離れた場所に敵が出現すれば、その正体まで付き止めるのは困難だが……。

 それでも接触が避けられれば、ミッションは及第だ。
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