王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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火蓋

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「それはその通り、なのですが……」

 アシュレイの強い物言いに、マクシムは一度は同意した。

「しかし、アシュレイ様が傷付けば、きっと殿下はご自分を許せなくなります。貴女を想う故、行動が制限されれば本末転倒……策の破綻を招けば、殿下の命もありません。厳しい言い方になりますが、足手纏いです」

 しかし、流石は生真面目の塊だ。

 簡単には折れない。

 そう厳しく諭されれば、アシュレイは頷くしかない、と踏んだのだろう。

 アシュレイは王室生まれの箱入り娘だ。過酷な状況には耐えられない、と誰もが予想するだろう。

 しかし、それは先入観に過ぎない。

「問題ありません。私は戦えます。それに、おこがましいかもしれないけど、あの人は私を必要としている気がするの」

 アルダシールは他人に本心を見せない。

 でもきっと、見せられる相手を必要としている。

(それだけは疑いようがない。だって、私も同じだから……!)

「そんな可憐なお姿で何を仰いますか。もう、この話題はお終いにしましょう。私は正直に総て申し上げました。どうか素直に従ってください」

 アシュレイの主張は多少、マクシムを揺さぶったが、結局は説得に至らぬまま着地した。

「でなければ私も殿下と同様、強硬手段を取らざるを得ません。それは相互にとって不利益です」

 話しは振り出しに戻ってしまった。

 見つめ合ったまま、さあ、どうしたものかとアシュレイは頭を捻る。

 マクシムの目を盗んで逃げ出し、盗賊や王宮騎士団の探索を掻い潜るだけでも至難の業だ。

(その上コトが起きる前にアルダの元へ駆けつけるなんて、無理ゲー過ぎる……)

 そもそもアルダが何処へ向かうのかすらわかっていないのだから、どうあってもマクシムの協力を得なければならない。

 どうしたらマクシムは首を縦に振る?

 良いアイディアはそうそう浮かばない。だが、負けられないので、目は逸らさない。

 マクシムは石のような頑なさで、じっと黙ってアシュレイが諦めるまで待つ姿勢だ。

 またしばらく、ゴトゴトと荷馬車の揺れる音だけが響く――

 はずだったところに、異質な地響きが加わった。

 複数の馬蹄が土を叩く足音が、どこからともなく迫った。

「何かしら? 追手?」

「この時分です、夜盗の類かも知れません。追い払うまで、荷に隠れてください。行けますか」

 手伝うと宣言した矢先に身を隠すなど、不甲斐ない。

 だが、相手が警備兵なら隠れてやり過ごす方が賢明だ。

 アシュレイは大きく頷くと、御者台から荷台へ飛び移った。

 幌に弾かれて転げ落ちないように、慎重に手で探って隙間から荷台に滑り込む。

 襲撃者はカンテラの灯りを目指して、集結した。

 馬は3頭、微かな灯りでロクに見渡せない。
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