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開戦
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間もなく国王の命を偽り、第一王子を廃嫡せんと企む王妃との対決が始まる。
だがその一大事を前にして抱いていた漠然とした不安は、マクシムの中からいつしか消え去っていた。
***
アシュレイたちがべリングバリ邸を経由したのは、翌日の夜明け頃だった。
マクシムの容態を報告し、先にべリングバリを通過したベラミ軍は総勢500人。
後発隊として1000人ほどが合流する予定だと聞かされた。
しかし、予想外だったのは、アルダシールを含む先発隊がそろそろアルファンソ平原に差し掛かる頃だと知らされたことだ。
平原を越えると障害はサンリット川だが、全長があるものの、浅瀬が広がっており馬でも渡れる。
「城に詰めている騎士は50ほど、すぐに動かせる騎士団は200人ちょっと。あとは国王側がどれくらい秘密裏に兵力を集めていたかによるわね」
援軍を要請しても、それらが王都へ到着するまでには数日を要する。
移動の経過を見る限りでは、アルダシールはスピード重視で行軍している。
「殿下は速攻をかけるつもりか」
「多分ね。決着が早ければ早いほど、被害は抑えられる。けど、王都を戦場にするつもりかしら」
3人は馬で平原を疾走している。
初めはたどたどしかった乗馬の技術は、見る間に向上した。
アシュレイは苦々しく呟く。
アルダシールは、アラウァリアの王子だ。
王都を戦火に晒すのは、本意ではないはず……。
「つっても、それを何とかしようと急いでんだろ、アシュレイは」
「だったら考えるだけ無駄だ。一気に追い上げようぜ」
ソノラは厳つい見た目に似合わず、片目を瞑ってウインクしてみせる。
2人はアシュレイが身の上を語っても、顔色一つ変えずに受け入れてくれた。
数日とはいえ、騙していたにもかかわらず「そんなもんじゃね?」と、笑い飛ばしてくれた。
今も、馬で並走しながら、アシュレイに笑いかけてくれる。
気の良い仲間が笑顔を向けてくれる度、アシュレイはホッとする。
「ええ! 間に合ってくれれば良いけれど!」
3人は土煙を巻き上げ、平原を駆け抜けて行った。
***
「この馬、もう限界だ。これ以上は無理させられねえ」
次の街までは、馬の足でもまだ数時間かかる。
あれから2度の休憩を挟んだが、3頭の馬は疲労困憊し、これ以上は走れない。
何とか今日中にアルダシールたちと合流を果たしたかったが、やむを得ない。
ジェニスは馬から降りて手綱を放し、鞍に括りつけていた水筒を外すと、水を口に含んだ。
「もう日も暮れるし、この先に川があったろ。そこで今日は野宿だな」
「そうね……」
アシュレイも馬を降りると、ジェニスから水筒を受け取った。
だがその一大事を前にして抱いていた漠然とした不安は、マクシムの中からいつしか消え去っていた。
***
アシュレイたちがべリングバリ邸を経由したのは、翌日の夜明け頃だった。
マクシムの容態を報告し、先にべリングバリを通過したベラミ軍は総勢500人。
後発隊として1000人ほどが合流する予定だと聞かされた。
しかし、予想外だったのは、アルダシールを含む先発隊がそろそろアルファンソ平原に差し掛かる頃だと知らされたことだ。
平原を越えると障害はサンリット川だが、全長があるものの、浅瀬が広がっており馬でも渡れる。
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援軍を要請しても、それらが王都へ到着するまでには数日を要する。
移動の経過を見る限りでは、アルダシールはスピード重視で行軍している。
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3人は馬で平原を疾走している。
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アシュレイは苦々しく呟く。
アルダシールは、アラウァリアの王子だ。
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「つっても、それを何とかしようと急いでんだろ、アシュレイは」
「だったら考えるだけ無駄だ。一気に追い上げようぜ」
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2人はアシュレイが身の上を語っても、顔色一つ変えずに受け入れてくれた。
数日とはいえ、騙していたにもかかわらず「そんなもんじゃね?」と、笑い飛ばしてくれた。
今も、馬で並走しながら、アシュレイに笑いかけてくれる。
気の良い仲間が笑顔を向けてくれる度、アシュレイはホッとする。
「ええ! 間に合ってくれれば良いけれど!」
3人は土煙を巻き上げ、平原を駆け抜けて行った。
***
「この馬、もう限界だ。これ以上は無理させられねえ」
次の街までは、馬の足でもまだ数時間かかる。
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何とか今日中にアルダシールたちと合流を果たしたかったが、やむを得ない。
ジェニスは馬から降りて手綱を放し、鞍に括りつけていた水筒を外すと、水を口に含んだ。
「もう日も暮れるし、この先に川があったろ。そこで今日は野宿だな」
「そうね……」
アシュレイも馬を降りると、ジェニスから水筒を受け取った。
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