王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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 ザイードはバタバタと、要領を得ない動きで抵抗するが、押しも引かせもするものか。

「ぅおおおおおおっ!!」

 怨嗟のような雄叫びを上げて、アシュレイは首を絞め続けた。

 やがて、波が引くように抵抗が止み、ザイードはすーっと脱力する。

 またもや、失神した。

「くっ……」

 振りではなく、本当に気を失ったのか、完全に拘束は解かずに耳をそばだてて確かめる。

 膝で左右に揺すってもピクリともしない様子を見て取って、そろそろと力を緩めた。

 怒りと、恐怖もあったのか、上手に力が抜けない。

「はあっ、クソ……このっ」

 悪態をつきながら、ザイードの下から這い出した。

 さっと頭を巡らせ、転がっていた短刀を拾い上げる。

 足首に違和感があるが、歩行に支障はない。

 短刀を手に、ザイードを一瞥したが、そのまま背嚢を背負って上階を目指す。

 腹立たしいし、気色の悪い男ではあった。

 だが、止めを刺すまでの心境には至らなかった。

 それに、火の手を発見してから、大分時間を食っている。

 格闘中も特段の変化はなかったようだった。

 物音も、大きな騒ぎも起きていない。

 だからこそ余計に、何が起きているのか把握したい。

 セイカーが示したように、アルダシールは、そこにいるのか。

 3階に出ても階段は続いていたが、その場で異変を察知した。

 廊下の最奥にあるひと部屋から漏れ出でる黒い筋。

 それが、細く漂い、階段にまで迫っている。

(やはり、火事だわ! あの部屋に、アルダはいるの!?)

 アシュレイは、引き寄せられるままに、煙の出所へ駆け出した。

 把手を引くと、大量の黒煙が噴き出す。

 今まで押し込められていたものが一気に解放され、唸り声をたてるようにもうもうと襲い掛かった。

 勢いに煽られて思わず尻餅をつきながら、咳き込んだ。

 廊下の天井にも、這うようにして煙は見る間に広がった。

 取って返して、風窓から身を乗り出す。

 部屋の方角を見やれば、割れたと思わしき窓からは、絶えず黒煙が吐き出されていた。

 廊下の天井にも、這うようにして煙は広がりつつあった。

 あの部屋の中にアルダシールがいるのだろうか?

 廊下の風窓から一度、顔を出してセイカーの姿を探した。

 豆粒のような物体が、やはり上空を旋回している。

 地上には、火の手に気付いたらしい騎士が集まりつつあった。

 騎士はいずれも、ギルフォード配下の者達だ。

 物音一つしない点は気にかかった。

 それに、あの用心深いアルダシールだ。

 いつまでも火災の現場に留まるとは考えにくい。

 だが、セイカーがこの場を離れない以上、アルダシールが室内にいる可能性は濃厚だ。

 そうでなければ良いと願いながらも、万一身動きの取れない状況ならば、早急に救出せねば。

 バッと身を翻し、改めて廊下を見返せば、装飾用の花瓶に活けられた花が目に付く。

 救護用の背嚢を放り投げると、花瓶を持ち上げ、頭上でひっくり返す。

 頭から水を被り、袖で口元を覆って部屋に飛踏み込んだ。
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