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新しい国
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「……アシュレイの容態はどうだ?」
だが、アルダシールは軽く聞き流す。
「外傷は軽度の火傷だけなので、膏薬を塗っておきました。ですが内部の損傷は、意識が戻らないことには何とも……」
医師は申し訳なさそうに肩を竦めた。
「くそ……、どうして意識が戻らない……!」
「長く火災の中にいたようですから、その影響かと」
医師の返答に項垂れるアルダシールの肩に、ギルフォードがそっと手を乗せる。
「すぐに目覚められるでしょう。何しろ殿下を助けるために、あの火災の中に飛び込んだ女性です。先ずは安静になさってください。殿下がご無事でなければ、アシュレイ様の奮闘が報われません」
はぁ、と嘆息すると、了承と取ったギルフォードが医師に、アルタクセルの死体検分を依頼した。
「殿下、少しでも気分が良くなるよう、お嬢様のお身体を清めて差し上げてもよろしいでしょうか」
助手として付き添っていた女性は告解室に残りたいと志願し、アルダシールに許可を求めた。
医師と女性の2人に、アシュレイの正体を知らせるような機会はなかったはずだ。
アルダシールの執心から、察するところがあったらしい。
その心遣いに、やや面映いものを感じた。
が、申し出を有難く受けることにする。
「ああ、頼む」
「では、殿下もしばらくお休みください」
「いいや。まだ、事後の指揮が残っている」
「わかりました。ご命令通り代行いたします。後程ご報告に上がりますから、それまでの間お休みください」
「伯爵には敵いませんね」
やむなく承諾すると、ギルフォードは苦笑と共に、一礼して退室した。
去り行くギルフォードの後ろ姿を見送り、アルダシールは脱力感に息を吐いた。
(確かに……少し、疲れたな)
アシュレイを無事に助けられた安堵感、決戦で勝利を治めた昂揚感。
それらが一気に解け、アルダシールの心身は弛緩しつつある。
傷付いた身体は、思い出したように熱と痛みを訴え始めた。
(アシュレイ……)
休む前に、もう一度アシュレイの顔を見たい。
アルダシールは膝を突いたまま衝立の位置まで移動して、アシュレイの様子を窺った。
煤だらけの顔は先ほどと変わりなかったが、表情は穏やかだ。
呼吸も規則的に行われているようだ。
身体を覆うシーツは一定の間隔で上下に揺れている。
早く……目を醒まして欲しい。
横顔を見ながら、そろそろと近づく。
改めて、礼を言いたい。
その声で、名を呼んで欲しい。
アルダシールは、アシュレイの手を取り、両手で包み込んだ。
「アシュレイ……」
祈るように額に当てて、目を閉じた。
「まあ、殿下! 何をなさってるのですか」
するとその時、手に湯を溜めた桶を抱えて、先ほどの女性が部屋に戻ってきた。
「お嬢様はまだお召し物を替えていないのですよ。いくら殿下でも」
「ああ、いや……。すまない。そこまで気が回らなかった」
女性はアルダシール行動を見咎めて、さっと桶を下ろした。
アシュレイを庇うように立ち塞がる。
アルダシールは戸惑いつつも、慌てて身を引いた。
「ふふ……ハハッ」
「何が可笑しいのですか」
衝立の陰まで退散すると、不意に笑いが込み上げた。
だが、アルダシールは軽く聞き流す。
「外傷は軽度の火傷だけなので、膏薬を塗っておきました。ですが内部の損傷は、意識が戻らないことには何とも……」
医師は申し訳なさそうに肩を竦めた。
「くそ……、どうして意識が戻らない……!」
「長く火災の中にいたようですから、その影響かと」
医師の返答に項垂れるアルダシールの肩に、ギルフォードがそっと手を乗せる。
「すぐに目覚められるでしょう。何しろ殿下を助けるために、あの火災の中に飛び込んだ女性です。先ずは安静になさってください。殿下がご無事でなければ、アシュレイ様の奮闘が報われません」
はぁ、と嘆息すると、了承と取ったギルフォードが医師に、アルタクセルの死体検分を依頼した。
「殿下、少しでも気分が良くなるよう、お嬢様のお身体を清めて差し上げてもよろしいでしょうか」
助手として付き添っていた女性は告解室に残りたいと志願し、アルダシールに許可を求めた。
医師と女性の2人に、アシュレイの正体を知らせるような機会はなかったはずだ。
アルダシールの執心から、察するところがあったらしい。
その心遣いに、やや面映いものを感じた。
が、申し出を有難く受けることにする。
「ああ、頼む」
「では、殿下もしばらくお休みください」
「いいや。まだ、事後の指揮が残っている」
「わかりました。ご命令通り代行いたします。後程ご報告に上がりますから、それまでの間お休みください」
「伯爵には敵いませんね」
やむなく承諾すると、ギルフォードは苦笑と共に、一礼して退室した。
去り行くギルフォードの後ろ姿を見送り、アルダシールは脱力感に息を吐いた。
(確かに……少し、疲れたな)
アシュレイを無事に助けられた安堵感、決戦で勝利を治めた昂揚感。
それらが一気に解け、アルダシールの心身は弛緩しつつある。
傷付いた身体は、思い出したように熱と痛みを訴え始めた。
(アシュレイ……)
休む前に、もう一度アシュレイの顔を見たい。
アルダシールは膝を突いたまま衝立の位置まで移動して、アシュレイの様子を窺った。
煤だらけの顔は先ほどと変わりなかったが、表情は穏やかだ。
呼吸も規則的に行われているようだ。
身体を覆うシーツは一定の間隔で上下に揺れている。
早く……目を醒まして欲しい。
横顔を見ながら、そろそろと近づく。
改めて、礼を言いたい。
その声で、名を呼んで欲しい。
アルダシールは、アシュレイの手を取り、両手で包み込んだ。
「アシュレイ……」
祈るように額に当てて、目を閉じた。
「まあ、殿下! 何をなさってるのですか」
するとその時、手に湯を溜めた桶を抱えて、先ほどの女性が部屋に戻ってきた。
「お嬢様はまだお召し物を替えていないのですよ。いくら殿下でも」
「ああ、いや……。すまない。そこまで気が回らなかった」
女性はアルダシール行動を見咎めて、さっと桶を下ろした。
アシュレイを庇うように立ち塞がる。
アルダシールは戸惑いつつも、慌てて身を引いた。
「ふふ……ハハッ」
「何が可笑しいのですか」
衝立の陰まで退散すると、不意に笑いが込み上げた。
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