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王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
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(……お腹が膨れたら、ギルフォード様を探してみよう。式典にはいらしていたし)
ギルフォードは王城を奪還後も、雑事の目途が付くまで、身動きの取れないアルダシールを随分と手伝ってくれた。
それでも、長く領地を空けていられないので、一月ほどでベラミに戻っていた。
侍従のリックにも世話になった。
今日も一緒に来ていればいいのだが……。
アシュレイは壁の花よろしく、グラスを傾けながら、辺りを見回す。
と、その時。
「アシュレイ様!」
声がして振り返ると、まさにその、リックが軽く手を振って駆け寄ってくるところだった。
「リック! 来ていたのね」
「つい、軽々しい振る舞いを……、失礼致しました。ギルフォード様のお供として、ついて参りました。この度は実におめでとうございます」
リックは手を振る仕草を気にしたらしい。律義に謝ってから一礼する。
「ありがとう……って、相手を間違えていない?」
「間違えておりません。陛下のご即位は、伴侶であるアシュレイ様にとって、ご自身のものと同意です」
アシュレイは堂々としたリックの言に、頬を搔きながら微笑した。
「それなのにこのような会場の隅にいらっしゃるとは。陛下の元へ参りましょう。アシュレイ様は陛下の隣で祝辞をお受けになるお立場でしょう?」
「だって……まだ、発表されていないもの。説明するにも微妙な立ち位置だし……マクシムの勧めも断ったの。まあ、こうして気楽にしていられるのも最後かと思えば感慨深いものよ」
自分で口にすると改めて実感が湧くが、アシュレイは実に微妙な立ち位置にいる。
アシュレイは立場を公にすると、前国王の側妃である。
後宮は終戦後、真っ先に解体された。
アルタクセル前国王の妻たち17名はそれぞれ帰郷か新たな縁組みをするかで、城を出て行ってしまっている。
城内にいる者は、アシュレイをアルダシールの命の恩人兼、花嫁候補だと認識している。
アルダシールかギルフォードの助力での人選なのか、アシュレイの出自が外部に漏れている様子はない。
皆知っていながら、沈黙を貫いてくれている。
「……私とこのようにお話しいただけるのも、今だけという訳ですね。確かに、そのような貴重な機会を逃せば後悔するでしょう」
「いやだ、リックとはいつまでもこうやって話すわよ」
アシュレイが断言すると、リックは嬉しそうに破顔した。
「光栄にございます。陛下はアシュレイ様のこうした気取らないお人柄を、愛しんでいらっしゃるのでしょうね」
褒められると嬉しいが、気恥ずかしくもある。
アシュレイは照れ隠しに、持っていたグラスを煽った。
「リック、ありがとう。……ところで、ギルフォード様は?」
「ああ、ギルフォード様でしたら……」
リックが言いかけた時。
「まさか……そこにいるのは、アシュレイでは?」
聞き慣れぬ――いや、忘れようとしていたが、未だその声は鮮明に記憶に残っていた。
耳に障るくらいの、高慢で、自信に溢れた声音。
アシュレイは、嫌な予感に身を包まれつつも、その声を目で追った。
探すまでもなく、アシュレイを呼んだ声の主があちらから近づいてくる。
「アシュレイよね? 何故このような場にいるのです?」
アシュレイはその人物を見とめて、苦々しく呟いた。
「お継母様……」
ギルフォードは王城を奪還後も、雑事の目途が付くまで、身動きの取れないアルダシールを随分と手伝ってくれた。
それでも、長く領地を空けていられないので、一月ほどでベラミに戻っていた。
侍従のリックにも世話になった。
今日も一緒に来ていればいいのだが……。
アシュレイは壁の花よろしく、グラスを傾けながら、辺りを見回す。
と、その時。
「アシュレイ様!」
声がして振り返ると、まさにその、リックが軽く手を振って駆け寄ってくるところだった。
「リック! 来ていたのね」
「つい、軽々しい振る舞いを……、失礼致しました。ギルフォード様のお供として、ついて参りました。この度は実におめでとうございます」
リックは手を振る仕草を気にしたらしい。律義に謝ってから一礼する。
「ありがとう……って、相手を間違えていない?」
「間違えておりません。陛下のご即位は、伴侶であるアシュレイ様にとって、ご自身のものと同意です」
アシュレイは堂々としたリックの言に、頬を搔きながら微笑した。
「それなのにこのような会場の隅にいらっしゃるとは。陛下の元へ参りましょう。アシュレイ様は陛下の隣で祝辞をお受けになるお立場でしょう?」
「だって……まだ、発表されていないもの。説明するにも微妙な立ち位置だし……マクシムの勧めも断ったの。まあ、こうして気楽にしていられるのも最後かと思えば感慨深いものよ」
自分で口にすると改めて実感が湧くが、アシュレイは実に微妙な立ち位置にいる。
アシュレイは立場を公にすると、前国王の側妃である。
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城内にいる者は、アシュレイをアルダシールの命の恩人兼、花嫁候補だと認識している。
アルダシールかギルフォードの助力での人選なのか、アシュレイの出自が外部に漏れている様子はない。
皆知っていながら、沈黙を貫いてくれている。
「……私とこのようにお話しいただけるのも、今だけという訳ですね。確かに、そのような貴重な機会を逃せば後悔するでしょう」
「いやだ、リックとはいつまでもこうやって話すわよ」
アシュレイが断言すると、リックは嬉しそうに破顔した。
「光栄にございます。陛下はアシュレイ様のこうした気取らないお人柄を、愛しんでいらっしゃるのでしょうね」
褒められると嬉しいが、気恥ずかしくもある。
アシュレイは照れ隠しに、持っていたグラスを煽った。
「リック、ありがとう。……ところで、ギルフォード様は?」
「ああ、ギルフォード様でしたら……」
リックが言いかけた時。
「まさか……そこにいるのは、アシュレイでは?」
聞き慣れぬ――いや、忘れようとしていたが、未だその声は鮮明に記憶に残っていた。
耳に障るくらいの、高慢で、自信に溢れた声音。
アシュレイは、嫌な予感に身を包まれつつも、その声を目で追った。
探すまでもなく、アシュレイを呼んだ声の主があちらから近づいてくる。
「アシュレイよね? 何故このような場にいるのです?」
アシュレイはその人物を見とめて、苦々しく呟いた。
「お継母様……」
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